生理・PMS

そのアゴニキビ、女性ホルモンの影響かも? 産婦人科専門医が教える原因と対策

「生理前になるとアゴにニキビができる」「ストレス続きでフェイスラインがざらついてきた」……そんな肌の不調を感じたことはありませんか?実はアゴ周りの肌トラブルは、女性ホルモンと深い関係があると言われています。

今回は、婦人科と美容を融合させた“フェムキュア施術”を提案している産婦人科専門医 山村菜実先生に、ニキビと吹き出物の違いから、アゴに出やすい理由、適切なケアまで伺いました。

ニキビと吹き出物の違いとは?

ニキビと吹き出物の違いとは?

「吹き出物とニキビは呼び方が異なりますが、医学的にはどちらも尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)という皮膚疾患です。思春期はニキビ、大人になってからは吹き出物や大人ニキビと呼ばれることが多いですが、医学的な違いはありません。ただし、できる時期や背景には違いがあります。

思春期にできるニキビは、皮脂分泌が活発になるのが主な原因です。毛穴が詰まりやすく、特におでこや鼻などのTゾーンにできやすい傾向があります。

一方、大人になると皮脂は減る一方で、肌のターンオーバー(生まれ変わりの周期)が遅くなります。特にアゴやフェイスラインはその影響を受けやすく、古い角質や汚れが毛穴に残りやすいため、吹き出物につながります」(山村菜実先生・以下同)

女性ホルモンとアゴニキビの関係性

女性ホルモンとアゴニキビの関係性

「生理前にアゴやフェイスラインに吹き出物が出やすくなるのは、女性ホルモンのバランス変化が影響しています。生理前は、皮脂の分泌を促すプロゲステロン(黄体ホルモン)が優位になり、反対にうるおいやバリア機能を保つエストロゲン(卵胞ホルモン)が減少。これによりターンオーバーが乱れ、毛穴に古い角質や皮脂が溜まりやすいです。

アゴまわりは、もともとターンオーバーが遅い部位ということもあって、ホルモンの変化に反応しやすく、吹き出物ができやすいというのもあります。さらに、加齢によって代謝が落ちると、肌の生まれ変わる周期もながくなるため、吹き出物が慢性化しやすいので注意が必要です」

アゴニキビを防ぐための予防ケア

「皮脂分泌が増える生理前は、普段より丁寧な洗顔を心がけましょう。ピーリングで古い角質や余分な皮脂を取り除くのも有効です。特に皮脂が溜まりやすいフェイスラインやアゴは、この時期だけ念入りにケアする意識を。

ホルモンの乱れで繰り返すアゴニキビには、ピルの服用が治療選択肢になることもあります。ピルはプロゲステロンの分泌を抑え、皮脂のコントロールにも役立ちます。副作用の有無や体質との相性もあるため、医師と相談しながら判断しましょう。

また、美容皮膚科では、ハイドラフェイシャルなどの毛穴洗浄の施術も有効です。自分に適したケア方法を見つけるためには、専門医に相談してみてください」

できてしまったアゴニキビの対処法

できてしまったアゴニキビの対処法

●白ニキビはつぶさない

「白くポツッと膨らんでいる吹き出物である白ニキビは、肌表面に膿が溜まっている状態です。自分でつぶすのはさけてください。手指や爪には雑菌が多く、炎症を悪化させたり色素沈着の原因になったりすることもあります。

気になる場合は皮膚科を受診して、専用の器具を使って膿を出す面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)という処置を行いましょう。リスクを最小限に抑えることができます」

●炎症が強い時は薬でケア

「赤みや炎症が強い場合は、抗炎症薬や必要に応じて抗菌薬を処方してもらいましょう。目立つから何とかしたいと市販薬を試す場合があると思いますが、状態に合った適切な薬を皮膚科で処方してもらうのが安心です」

●繰り返す場合は予防の視点で

「生理周期に合わせて繰り返しアゴニキビができてしまう場合は、炎症が慢性化してニキビ跡になりやすです。“できたら治す”ではなく“できにくくする”という視点でケアを考えることが大切です。

保険適用の外用薬や内服薬で予防的に治療することも可能なので、皮膚科で相談してみてください」

●治療は“タイミング”も大事

「生理前にできたニキビは、生理後に肌の状態が落ち着いてから治療を始めるほうが、効果を得やすい傾向があります。ホルモンのリズムに合わせてタイミングを見極めることは、悪化を防ぐポイントです」

繰り返す場合は生活習慣も見直す

「同じ場所にニキビが繰り返しできる場合、生活習慣の乱れがホルモンバランスに影響している可能性があります。過度なストレスや睡眠不足、糖質・脂質に偏った食事、便秘などは、自律神経や腸内環境を通じてホルモンの分泌に影響を与えます。

特に睡眠は、肌とホルモンのリズムを整えるうえで重要です。夜10時〜深夜2時の肌のゴールデンタイムを含めて、7〜8時間の良質な睡眠をとることで、修復力やターンオーバーのサイクルが整います。

また、皮脂の分泌や代謝に関わるビタミンB2・B6、ビタミンD、亜鉛、鉄分、たんぱく質などを意識して摂ることも、ホルモンバランスを安定させる助けになります。難しい場合は、サプリメントでの補完も選択肢のひとつです。

なお、直接的なホルモン要因ではないものの、枕カバーやタオルなど、肌に触れるアイテムの衛生状態にも注意を。長く洗っていない寝具などは、ニキビを悪化させる原因になることもあるので、定期的な洗濯と清潔な環境づくりを心がけましょう。

ニキビは単なる肌トラブルではなく、ホルモンバランスや生活習慣など、体内の状態を映すサインでもあります。特に、いつもと違う場所にできる、同じ場所に繰り返しできる場合は、内側で何かしらの変化が起きている可能性があります。そういう時は、肌からのメッセージとして受け止め、生活や心身の状態を見直すきっかけにしてみてください」

執筆/坂本アヤノ

No.00186
2025年9月26日リリース

山村菜実先生

山村菜実先生産婦人科専門医・産業医/東京美容クリニック理事長

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東京女子医科大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医・日本抗加齢医学会専門医・日本医師会認定産業医・日本美容皮膚科学会正会員・医療法人財団小畑会理事長。2019年に東京美容クリニックを開設し、2022年から東京美容クリニック表参道本院理事長を務める。婦人科と美容を融合させた”フェムキュア施術“を行い、女性の悩み全てに寄り添う丁寧なカウンセリングにファンが多い。著書に『子宮を愛してあげよう』(現代書林)がある。
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