緊急避妊薬(アフターピル)は、医療機関を受診し、医師からの処方によって購入が可能でしたが、2023年11月28日に全国の145の薬局(薬剤師が常駐している)で試験販売が開始。2025年に市販化が承認され、医師の処方なしに2026年2月2日から薬局・ドラッグストアでの販売が始まりました。
そこで、緊急避妊薬についての基本的な知識を、アメリカ在住の乳腺放射線科医・医学博士のフォックス岡本聡子先生に教えていただきます。そして、日本とアメリカの文化の違いを知るフォックス岡本先生ならではの情報もお届けします。
緊急避妊薬の目的と役割

「緊急避妊薬は、避妊に失敗した、避妊しなかった性行為の後、72時間以内に妊娠を防ぐ目的で服用する薬です。“Plan B”とも呼ばれます。また、性被害にあった場合などの緊急手段として用いられます。
避妊の代替えではなく、非常事態のバックアップ的な役割です。そして、すでに成立した妊娠を中断する働きはありません」(フォックス岡本聡子先生・以下同)
緊急避妊薬の主な作用
○性行為後、72時間以内に服用する
○正しく服用した場合、約85%確率で妊娠を避けることができる
○排卵を送らせて、受精を防ぐ
○排卵間近に服用した場合でも、受精の確立を低下させる効果がある
×受精卵が着床した後、妊娠を止める役割はない
×時間が経つほど妊娠の予防確率は低下する
×ピルやコンドームなどの避妊法の代替えではない
×性感染症は防げない
「今後、日本の薬局では、医師の処方なし、年齢制限なしで購入が可能になります。緊急時の選択肢であることは確かですが、同時に服用による副作用についても知っていてください。具体的には、吐き気や頭痛、不正出血、生理周期の乱れなどが挙げられます。一時的な症状ではありますが、重たい、続く場合は、婦人科を受診しましょう」
アクセスしやすい医薬品へ

「WHO(世界保健機構)では、緊急避妊薬へのアクセスをより容易で安全なものとすることを推奨しています。
私が暮らすアメリカでは、1990年代から普及しており、その後制度改革が進みました。具体的には、当初あった年齢制限が撤廃されるなどしています。価格は約11~50ドル(※)と比較的入手しやすい設定のため、現在においては、“必要な時にすぐに入手できる選択肢”として定着しています。近年では、大学のヘルスセンターに置いてあったり、学内の自動販売機で購入できたりと、アクセスがさらによくなってきているようです。
日本では2025年末から順次展開されるとのことですが、年齢制限なし、親の同意不要となる予定とのことで、よりアクセスしやすくなるのではないでしょうか。ただ費用は1万円近くになると聞いているので、まだ課題はあると感じています」
※1ドル=160円とした場合、約¥1,760~8,000
避妊の責任はふたりにある

緊急避妊薬の話をすると、「アフターピルがあるから大丈夫」と避妊を怠るケースが想定されますが、フォックス岡本先生は「性行為は本来ふたりの責任です」と話します。
「日本は、低用量ピルやミレーナなどの子宮内避妊具といった【女性主体の避妊法】が、アメリカに比べると浸透していないように思います。その背景には文化や教育の違い、性の話をタブー視する風潮もまだ残っているからだと考えています。
ですが、性行為は本来ふたりの責任で行うものです。もちろん、避妊もそうです。緊急避妊薬はあくまでも緊急時に取り入れるためであり、安易な性行為を後押しするものではありません。性感染症を防ぐためのコンドームも毎回必要です。
そして、もし避妊に失敗した場合は、ふたりで向き合ってください。アメリアではカップルで薬を買いに行く文化がありますが、日本ではどうでしょうか?ふたりの責任として、どちらかに負担が集中することがないように意識していきたいですね」
【親子で知りたい避妊と性感染症予防】
緊急避妊薬は備えである
「緊急避妊薬が薬局で購入可能になるということは、多様なライフスタイルや事情に対応しやすくなっていくということです。まだまだ緊急避妊薬の種類も限定的で、全国の薬局すべてに整備されるまでは時間を要するとは思いますが、緊急時の対応がこれまでよりも迅速になり、望まない妊娠リスクについても大きく改善していきます。
まずは、妊娠を望まない場合はきちんと避妊をし、性感染症のリスクを下げる行動を取ることは必要不可欠です。そのうえで、備えとして緊急避妊薬という選択肢があることを知っておいてください。そして、自分の身体をしっかり守りながら、ふたりで責任を持つことが大切です」
執筆/木川誠子
No.00203
202年2月6日リリース