セクシャルウェルネスという言葉をご存知でしょうか? 女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテックの普及とともに広まった“性の健康”という考え方です。
今回は、“性の健康”であるセクシャルウェルネスについての基本的な知識から大切にしてほしい理由をお届けします。
性の健康には、楽しく安全な性的経験も含まれる
セクシャルという言葉を聞くと、セックスが連想されやすく、どこか後ろめたさや恥じらい、躊躇いを感じることがあるかもしれません。けれど、セックスとは本来人間が持っているスキンシップ、コミュニケーション方法のひとつ。英語では、“MAKE LOVE”と表現され、愛を育む行為という位置づけです。
そして、セクシャルウェルネスは、”身体的、感情的、精神的、社会的に健康である状態“を指し、”性の健康“とWHO(世界保健機関)によって定義づけられています。それは単に身体の機能障害や虚弱などがないということではなく、性的関係に対する前向きで敬意のあるアプローチを必要とし、強制や差別、暴力のない、楽しく安全な性的経験も含まれます。それは、すべての人の性的権利が尊重、保護され、満たされているということ。
これまでは女性の“セクシャル(性)”について、例えば、女性が性的快楽を得ることなどは、タブー視されてきた歴史、風潮があります。それが男女平等の社会を目指してきた過程で、セクシャルなこともまた、女性の権利であると。女性のセクシャルに対する偏見やステレオタイプを払拭するため、世界の基準としてセクシャルウェルネスを掲げることは、自然な流れと言えるのかもしれません。
女性にだって性欲はある
人間には、食欲・睡眠欲・性欲という三大欲求があります。つまり、性別に関係なく、身体的に欲望を感じることは自然な反応。そして、気持ちいい、心地いい、リラックスする、または興奮するというプレジャー(快感)は、心と脳、身体全身で感じています。
また、自分自身で身体を愛でること。そのセルフプレジャーを通して、気持ちがいい、心地がいい、と感じることも自然なことなのです。
これまでは、自分自身の身体について学ぶ、知る機会は限られていたかもしれません。けれど、生理から妊娠、出産、更年期と、女性はライフステージに合わせてさまざまな経験します。だからこそ、もっと身体の構造や機能などを知って、受け止めて、愛でて、悦び、味わう。そうすることで、身体と心とマインドが一体となって巡り、ポジティブに物事を考えたり、自分自身を労わったりすることにつながるのではないでしょうか。
プレジャーは自分を知ることから
セクシャルウェルネスの視点では、プレジャーについて考えることは必要です。そして、心地よい、気持ちいいと感じるプレジャーには、自分を知ることが何よりも大切!
なぜならば、自分がどうしたら気持ちいいか、不快に感じるかを知らなければ、相手に伝えることができません。言葉だけではなく、身体や心の反応で伝えること、示すこともコミュニケーションのひとつ。
では、プレジャーの代表的な言葉であるオーガズムについてどんなことを知っていますか?
オーガズムとは、“性的な緊張が最高潮に達した後に訪れる、強い快感による身体の反応”です。具体的には、骨盤周りの筋肉がけいれんしている状態。
女性がこのオーガズムを得るためには、身体的な刺激だけではなく、気持ちの快感、解放感、安心感、精神的要素が伴うと言われています。つまり、ハグやキス、全身をなでたり、耳元で囁いたりすることで、身体と気持ちでプレジャーを得ていきます。一方男性は、身体的な刺激だけでオーガズムを得ることができるそうです。
このように、オーガズムひとつとっても性別による違いがありますし、同じ女性であっても、どのようにプレジャーを得ていくかはひとりひとり異なります。ということは、男性に身体も心もまるっとゆだねるのはあまりにもリスキー。だからこそ、まずは自分自身が気持ちいいと感じる場所や逆に触られたくない場所などを知ることが大切です。
自分のプレジャーをセルフで探るのもあり
自分のプレジャーについて、セルフプレジャーで確かめてみるのも方法のひとつです。恥ずかしさや罪悪感がある場合は、『自分の身体は何をしたらどう感じるのかを研究する』という少しの意識変化をすることで、その気持ちが薄れるかもしれません。
つまり、性欲もセルフケアしていい分野。三大欲求である食欲や睡眠欲の質を高めると同様に、性欲も良質を求めてケアしてもいいことを知っていてください。
リスクも含めて正しい性の知識を身に付ける
セクシャルウェルネスを考える時、一世を風靡したテレビドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。かくゆう筆者もそのひとりです。
当時は、20代に差し掛かる頃で好奇心旺盛だったこともあり、セックスには興味津々でした。ドラマの中では、恋愛やセックスについてカジュアルに描かれていて、登場する女性たちのたくましくも、セクシャルに貪欲な姿も、自由でかっこよく、スタイリッシュに映りました。
その一方、性病や避妊の知識についての関心も高まったことを覚えています。セクシャルに対して前向きになるためには、起こりうるかもしれない危険について知ることも必要です。現代は特に、フェムテックを筆頭に、セクシャルウェルネスについて語られる機会が増えてきています。だからこそ、正しい性の知識を身に付け、自分自身のセクシャルウェルネスについて理解を深めることを意識してくださいね。
執筆/岩田香菜子
No.00033