子宮や膀胱などを支えている、ハンモック状の筋肉である骨盤底筋群を鍛える習慣が広まっています。尿モレ対策や子宮脱の予防などにつながるため、一生懸命鍛えることに意識が向きがちですが、実は筋肉が硬くなってしまうと性交痛が起こる可能性があることをご存知ですか?
「骨盤底筋群は、意識的に鍛えることが大切ではありますが、一方で緩めることも必要になります」と教えてくれたのは、国家資格を保有する鍼灸師である栗本夏帆さん。骨盤底筋群のトレーニングには鍛えると緩めるのバランスが鍵だと言います。その理由を教えていただきます。
鍛えると緩めるはセットで考える
「骨盤底筋群は意識しないと鍛えにくい部位でもありますし、筋力は20代をピークに、加齢と比例して弱くなっていきます。加えて、過度なダイエットや運動不足による衰えや出産経験による影響も考えられますので、骨盤底筋群のトレーニングは年齢にかかわらず、全世代が取り入れたほうがいいことです。
ただし、鍛えることに意識が向きすぎると、締める感覚は身についても、緩める感覚がわからなくなる……という場合も。それは必要以上に筋肉を硬くしてしまうことにつながり、痛みを引き起こす可能性があります。
骨盤底筋群を鍛える際は、締めるだけではなく、緩めることも意識してください」(栗本夏帆先生・以下同)
鍛えすぎは、こりがある状態と同じ
「筋肉が硬くなるというのは、肩や首のこりと同じです。例えば、肩こりは、姿勢の悪さ、運動不足、冷え、ストレス、緊張など、複合的な要因で血流が滞り、筋肉が硬くなったことで重みや痛みを招くようになります。
それは、骨盤底筋群にも同じことが言えます。鍛えることだけをしていると筋肉が硬くなり、骨盤まわりや下腹部あたりが引っ張られている違和感や性交痛、排尿痛などにつながる可能性があります。鍛えたら、緩めることも忘れずに行ってください。
緩めるとは、肩こりで例えると、ストレッチやマッサージをして、血流をよくすることです。すると、筋肉に酸素や血液が巡っていき、痛みをやわらげることにつながります。鍼灸の施術では専用の鍼をツボに刺していきます。こりがある部位に位置するツボに鍼を刺すことで筋肉を緩めることが可能になり、巡りを促しています。
骨盤底筋群の場合は、腟口を3秒かけて締めたら、3秒かけて緩めていくなど、締めると緩めるのバランスが取れたアプローチをしていきましょう。もし、骨盤底筋群を鍛えるデバイスを使用している場合は、使用用途を確認したうえで取り入れてください。なかには、クールダウン(緩める)プログラムが搭載されているタイプもあります。その場合はトレーニングの後に、仕上げとしてそのプログラムも実践しましょう」
【2ステップでできる鍛え方!ライフステージで見る、骨盤底筋群の必要性】
トレーニングの経過を観察
栗本さんは、「鍛えすぎを予防するために、トレーニングの経過観察を行ってください」と話します。手軽にできるふたつの方法を教えてもらいました。
1. 足を揃えた状態でお尻をつけずにしゃがみ、立ち上がる
「この方法は、骨盤底筋群の衰えをチェックする場合に活用できるのですが、トレーニング結果を確かめる目的としても有効です。
立ち上がれない場合は骨盤底筋具が衰えているので、立ち上がれる場合は鍛えられていると言えます。立ち上がれるようになってきたら、トレーニングの頻度を調整することで鍛えすぎ防止につながります」
2.タオルを挟んで、力を入れた状態で抜く
「立った状態でまたにタオルを挟み、落ちないように力を入れます。その状態でタオルを抜いてみてください。すぐに抜ける場合は要トレーニング。抜けない場合はトレーニングの成果が出ていますので、頻度を調整しながら続けていきましょう」
会陰の状態も意識しよう
「腟口と肛門の間にある会陰は、骨盤底筋群の一部です。そのため、骨盤底筋群を過度に鍛えている場合は、会陰に痛みや違和感が生じることがあります。実は、性行為の際、腟口ではなく、会陰が引っ張られて痛みとして感じている場合も考えられます。
会陰を直接触って状態を確かめてみるのもいいですが、お風呂上りにケアする習慣を身につけるのも効果的です。
お風呂上り、デリケートゾーン用の保湿アイテムを中指の腹部分に出し、会陰を塗布し、ツボ押しの要領で軽く押してみてください。硬い場合は筋肉が緊張状態にある可能性があり、痛みや違和感につながります。保湿ケアの流れで軽く押して、マッサージをすることで徐々にやわらいでいきます。
直接触れるのに抵抗があるという場合は、フェイス用のコットンを用いて行ってみてください。そのまま張り付けてしばらく置いておくと、フェイスパックと同様に保湿効果が期待でき、より状態のいい会陰につながっていきます」
執筆/木川誠子
No.00159
2025年2月10日リリース