ウェルネス・疾患ケア

経口中絶薬が選択肢のひとつに!身体と心を守るために知っておこう

経口中絶薬『メフィーグパック』が2023年4月21日に認可され、1年以上が経過しました。ですが、経口中絶薬がどんな薬で、どのくらいの費用がかかるのかなど、具体的なことを知らないという人も多いのではないでしょうか。使用する、しないにかかわらず、女性の身体と心を守るというリプロダクティブヘルス・ライツの視点から、より多くの人が知っておいたほうがいい事柄です。

そこで、リプロダクティブヘルス・ライツの発信も積極的に行う、乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生に基本情報を教えていただきました。

 

日本では中絶が認められている

日本では中絶が認められている

「日本では、身体的、または経済的な理由から妊娠が母体の健康に大きな支障きたす恐れがある場合、性被害にあった場合、母体保護法という法律によって、妊娠22週未満までの中絶は認められています。そして、指定された医師がいる医療機関で、本人と配偶者の同意を得て行うことができます。その際、妊娠週数によって薬か手術かを選択することになります。

私が暮らすアメリカでは法律で禁止されている州もあるため、中絶が女性の当たり前の権利とは言えない状況となってしまっています」(フォックス岡本聡子先生・以下同)

経口中絶薬が選択肢のひとつに

経口中絶薬が選択肢のひとつに

経口中絶薬での中絶
対象:妊娠9週0日以下

方法:1剤目(ミフェプリストン)を指定医師の前で服用してから帰宅。その36~48時間後に再度受診し、指定医師の前で2剤目(ミソプロストール)を服用。子宮から胎児を包む袋である胎嚢(たいのう)が出てくるまで院内で待機します。

費用:診察料、消費税などを含めて10万円(保険適用外)

メリット:麻酔を使わず行え、専用の器具を使用しないため、心身の負担の軽減につながります。

デメリット:服用後に腹痛や子宮からの出血が起こります。まれですが、感染することもあり得ます。また、胎嚢が確認できない場合は手術になる可能性があります。

「経口中絶薬は、1988年にフランスで認可されてから、65以上の国と地域で承認されています。実は、G7(主要国首脳会議)のなかでは日本だけが未認可だったんです。使用割合も、フィンランドやスウェーデンは100%近いですし、アメリカでも約60%と普及しています。

日本でもこれから普及していくと思いますが、手術による中絶費用が10万円ということもあり、経口中絶薬の場合も同額となっています。そして、配偶者の同意も必要と手続き上などの課題もあると感じていますが、手術以外の選択肢があることは知っていてほしいと思います」

手術による方法も知っておこう

手術での中絶【掻爬法(そうはほう)・吸引法】
対象:妊娠12週未満

方法【掻爬法(そうはほう)】:専用の器具を用いて、子宮の内容物をかきだします。

方法【吸引法】:手動、または電動式の吸引機を使って、子宮の内容物を吸いだします。

費用:診察料、消費税などを含めて10万円(保険適用外)

メリット:短い時間で手術が終わり、術後、特に問題がない場合は当日帰宅も可能です。

デメリット:子宮に穴があいてしまう、傷がついてしまうなどが考えられるため、次回の妊娠への影響や感染症などのリスクを考慮する必要があります。

避妊についても主体的に考える

避妊についても主体的に考える

「中絶という選択肢があること、薬なのか、手術なのか、妊娠週数によって選択できることを知っておくことは重要です。ですが、そもそも予期しない、望まない妊娠をしないために、避妊についても考える必要があると思います。

日本では、日本家族計画協会が調査・発表を行っている『ジャパン・セックスサーベイ2024(※1)』によると、主な避妊方法として約6割の人がコンドームと答えています。同調査のなかには、避妊方法として腟外射精と答えている人が約2割もいますが、それは避妊ではありません。

コンドームは性感染症予防のためにも必ず取り入れてほしいですが、男性主体の避妊方法になります。リプロダクティブヘルス・ライツの視点から考えると、女性主体の避妊方法についても理解を深めてほしいと思います。女性主体の避妊方法としては、ピルやミレーナ(IUS:子宮内避妊システム)など、いくつか選択肢がありますので、きちんと理解をして自分にあった方法を選べるようにしておきましょう。ピルは正しく服用すれば、ほぼ100%の確立で避妊効果が期待できるんですよ。

身体や心が傷つかないように、避妊や中絶について自ら知識を得ていくことを心掛けてください。そして、パートナーとのコミュニケーションのなかで、自分の考えをシェアしながら話し合うことも重要です」

 

※1 ジャパン・セックスサーベイ2024

執筆/木川誠子

No.00160
2025年2月14日リリース

フォックス岡本聡子先生

フォックス岡本聡子先生乳腺放射線科医・医学博士

記事一覧

日本で臨床・研究を経験した後、スタンフォード大学での研究留学を経験。現在は”病院では行き届かないサポートを新しいカタチで”をモットーに、画像診断のほか、専門の乳がんや自身が悩んだ流産や妊孕性の情報発信を行なっている。カリフォルニアで暮らす。
https://satokofox.com/