ウェルネス・疾患ケア

産婦人科専門医に聞く!女性の健康課題に対して、保険診療と自由診療でできることとは?

フェムテック・フェムケアが拡大するなかで、セルフケア領域で行える製品やサービス、クリニックで行える自由診療の施術内容が充実してきています。婦人科検診など、保険診療で行える事柄と組み合わせることで、治療や製術の選択肢が広がり、自分に適したスタイルで女性の健康課題を解決へと導いていくことが可能になります。

そこで、自由診療の領域にあたるフェムキュア施術を行う、医療法人財団小畑会 浜田病院理事長であり、産婦人科専門医の山村菜実先生に、保険診療と自由診療の違いやメリット・デメリットを伺いました。

公的な医療保険制度への加入は義務

公的な医療保険制度への加入は義務

「日本では、民間企業の会社員やその家族が加入する健康保険、フリーランスや自営業者が加入する国民健康保険など、国民全員がいずれかの保険に加入することが義務付けられています。

そのため、病院や診療所を自由に選択でき、居住エリアや職業に関係なく、一定の保険料(通常自己負担は30%)と標準的な治療・サービスが保証されています。また、健康診断やがん検診、予防接種などの予防医療領域も保険が適用されています」(山村菜実先生・以下同)

婦人科で適用されている主な保険診療

婦人科で適用されている主な保険診療

保険適用範囲で行える主な治療
●婦人科疾患の診断と治療
月経不順や月経困難症(生理痛など)、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫など

●性感染症の検査・治療
クラミジア感染症、淋菌感染症、梅毒など

●妊娠関連の一部診療
切迫流産、切迫早産、妊娠高血圧症候群などの合併症など

●不妊症の一部治療
ホルモンバランスの検査や治療など

●がん検診と治療
子宮頸がん検診、子宮体がん、卵巣がん、乳がんの検査や治療など

「例えば、ピル処方の場合、医師によって月経困難症や子宮内膜症と診断されたケースは保険適用となりますが、避妊目的となると適用外となります。また、不妊治療の領域や更年期障害の治療などにおいても、適用と適用外があります。望む治療が保険適用範囲に該当するかは、事前に確認しておくと安心できると思います」

自由診療で根本解決を目指す

「フェムケアは、生理用品やデリケートゾーンのケア、尿モレパッド、卵巣年齢が調べられるAMHのチェックキットなど、さまざまなアイテムやサービスが存在しますが、すべてセルフケアで行う領域を指します。その一方、自由診療は医療の力を用いて治療を行うことです。保険診療では対応が難しい美容を目的とした施術、最新の医療技術を用いた治療が中心になります。私は、フェムキュア施術と呼んでいます。

当クリニック(東京美容クリニック)では、美容婦人科として展開をしていますが、クリニックによって、婦人科、美容外科など、名称や取り入れているメニューはさまざまなので、気になる場合はチェックしてみてください」

自由診療で行える主な施術・治療
●腟の引き締め治療
出産後の腟のゆるみ、尿モレ改善、腟の乾燥改善を目的としたレーザー治療、高周波治療(モナリザタッチ、腟ハイフ)などがある。

●外陰部の美容整形
機能や見た目の改善のためには、小陰唇縮小術、腟縮小手術、陰核包茎手術などの施術が選択可能。

●エイジング目的の治療
ヒアルロン酸、PRP(多血小板血漿)注入など、腟や外陰部の弾力改善、保湿効果を目的としている施術。

●ホルモン補充療法(HRT)
更年期障害や閉経後の不調を緩和するために行われる治療で、保険適用外の薬剤を使用する場合は自由診療となる。

●不妊治療など生殖医療
一部助成される場合を除く、体外受精や顕微授精、卵子凍結保存、遺伝的な異常を持つ胚を選別するための検査である着床前診断は、自由診療である。

どちらにもメリット・デメリットがある

どちらにもメリット・デメリットがある

「保険適用で行える治療の場合、どの病院でも同じ料金で治療を受けることができますが、医師が診断できる領域に限定されます。

一方、自由診療は美容目的や最新の施術を選べますが、費用は全額自己負担となります。治療内容や料金設定はクリニックによって異なりますので、費用やリスク、副作用など、気になる事柄は医師、担当スタッフに相談したうえで選択することを心掛けてください。

また、自由診療を受ける場合は、基本的な婦人科検診をきちんと受けていることが前提となります。気軽に相談できる婦人科の医師や自由診療のクリニックは、心強い存在になりますので、かかりつけ医やかかりつけクリニックを持っていないという場合は、病院やクリニックのオフィシャルサイトやSNS、口コミをリサーチするところから始めてみてください。

定期的に婦人科検診を行いながら、自由診療メニューを選択肢として持っておくことで、より自分に適したスタイルで悩みや不調を改善することが可能になります」

(インフォメーション)
子宮を愛してあげよう

子宮を愛してあげよう(現代書林)
著:山村菜実/定価:¥1,540

子宮ケアとオキシトシンをテーマに、産婦人科専門医の山村菜実先生が知ってほしい情報や知識が収録されています。

 

執筆/木川誠子

No.00161
2025年2月21日リリース

山村菜実先生

山村菜実先生産婦人科専門医・産業医/東京美容クリニック理事長

記事一覧

東京女子医科大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医・日本抗加齢医学会専門医・日本医師会認定産業医・日本美容皮膚科学会正会員・医療法人財団小畑会理事長。2019年に東京美容クリニックを開設し、2022年から東京美容クリニック表参道本院理事長を務める。婦人科と美容を融合させた”フェムキュア施術“を行い、女性の悩み全てに寄り添う丁寧なカウンセリングにファンが多い。2024年11月上旬に書籍『子宮を愛してあげよう』(現代書林)を上梓予定。
https://tbc.clinic/