年齢を重ねると、肌のシミ・シワなど、いわゆる“エイジングサイン”が現れるようになります。実は、乳房も加齢に伴う変化が起こります。ただ、変化すべてを年齢のせいと片づけてしまうのは危険です。
「20〜30代では気にならなかったバストの上部分が削れたような“そげ感”や、バストトップの位置が垂れてくる“下垂”は、40代を過ぎると多くの人に現れます。典型的な加齢による見た目の変化です。
一方で、更年期に入ると、乳房の張り、重苦しい、かゆいといった不快感が出てくる場合があります。それはホルモンバランスの変化が関係していることが多いですが、加齢による自然な変化なのか、あるいは病気のサインなのか、その違いを正しく見極めることが重要です」と話すのは、アメリカ在住の乳腺放射線科医・医学博士のフォックス岡本聡子先生。
加齢と女性ホルモンによる症状の違い
「乳房は、加齢やホルモンバランスの影響を大きく受けるパーツです。特に更年期を迎えるとホルモンバランスの変化によって、これまでとは異なるゆらぎが乳房にも現れやすくなります」(フォックス岡本聡子先生・以下同)
●加齢による代表的な変化
バストの上部分が削れたような、そげた感じによってバストの見た目が変化
バストトップの位置が下がってくる
皮膚のハリがなくなる
●女性ホルモンのバランス変化によるもの
生理前とは違ったバストの張り
バストがなんとなく重だるいと感じる
乳頭や乳輪のかゆみ
「更年期は、女性ホルモンの分泌バランスが急激に変化していく時期です。そして、その変化によって、乳房にもさまざまな症状が見られます。中でもよく見られるのは、バストの重だるさ。生理前に出てくる張りや痛みとは異なり、周期性がなく不定期に現れることがあります。
乾燥もよくある変化のひとつです。乳頭や乳輪には、モントゴメリー線と呼ばれる皮脂腺があり、皮脂を分泌することで皮膚のうるおいを保つ働きをしています。しかし、更年期以降はこの分泌量が減少することで乾燥しやすくなり、かゆみや湿疹などの皮膚トラブルが起こりやすくなります。
まずは日常的な保湿ケアが大切です。ただし、保湿ケアをしても、市販薬を使用しても改善しない場合は注意が必要です」
病気の可能性を見逃さない
「しつこい乳輪のかゆみ・湿疹は、乳がんの一種である乳房パジェット病の可能性があります。乳房パジェット病は、がん細胞が表皮内に広がることで起こりますが、見た目は湿疹とよく似ていることもあり、医師でも判断が難しい場合があります。そのため、ただの湿疹だろうと自己判断するのは危険!ステロイドの塗り薬を使っても2ヶ月以上治らない、かゆみや湿疹を繰り返す場合は、皮膚科や乳腺外来などの医療機関を受診しましょう」
なかには、違和感があっても「病院に行くほどではない」と自己判断をしてしまい、何年もそのまま放置しているケースも少なくないそうです。乳房に現れた変化のすべてが、加齢やホルモンバランスの変化によるものだとは限りません。だからこそ、日々のちょっとした変化に敏感になることは大切ですし、乳頭からの分泌物、片方だけに赤みや腫れが出ている、しこりがあるなどの場合は、専門機関を受診しましょう。
42歳はバストを見直すタイミング
「バストに触る習慣がある人のほうが、いつもと違うことに気づきやすいとされています」と岡本先生。そのおすすめの方法は、“ながらバストケア”です。
「例えば、お気に入りのバストクリームを使って保湿する。ブラをつけるときにハリや形を確認する。それだけで立派なセルフチェックになります。触れる習慣がある人ほど、しこりや違和感に早く気づく傾向があります。まずは、バストに関心を持ちましょう!
特に42歳はバストを見直す年齢です。東洋医学の考えでは、女性の身体は7の倍数で変化するとされています。42歳はその節目にあたります。ホルモンのゆらぎを感じ始める、老化のサインが出やすくなるタイミング。
乳がんの罹患率が上がる年代でもあることから、日本では40歳を迎えると乳がんの検診クーポンが届くようになります。検診のスタート年齢でもある40歳を過ぎたらぜひ、バストに関心を持ってほしいです」
【乳がんの早期発見につながる!乳房を意識した生活習慣のすすめ】
更年期は見直しのタイミング
更年期を迎えると、「何かを失う感じがする」と思われがちですが、実際には身体と向き合い、見直しをする時期。
岡本先生も、「更年期をポジティブに捉えるには、知ることから始めてみてください。どんな変化が起こるのを知っておくと、怖さは少し和らぐと思います。その変化を自分のペースで受け止めながら、自分に合うケアを探すことが大切です」と話します。
乳房は女性にとって、見た目だけでなく、気持ちの面にも影響する大切なパーツ。加齢も、更年期も、変化を正しく知って向き合っていくことで、これからの人生はもっと軽やかになるのではないでしょうか。自分のバストに関心を持つことから、“乳房の健康”を守っていきましょう。
執筆/今泉まいこ
No.00177
2025年7月18日リリース