女性ホルモンのエストロゲンが減少する更年期は、口の中が乾燥しやすく、口臭が強くなってしまいます。さらに、閉経を迎えるとその症状は悪化傾向に!「口臭は男性のほうが強いイメージがあるかもしれませんが、実は、もともと女性のほうが男性よりも2倍強いようです」と話すのは、歯科医師であり、口元美容スペシャリストでもある石井さとこ先生。
なぜ女性の口臭が強いのか、その理由や更年期に意識したい口腔環境の対策について石井先生に教えていただきます。手軽にできる口腔環境をよりよくするための体操は要チェックです。
唾液の分泌量が口臭を左右する

「男性よりも女性の口臭が強くなる理由はいくつかありますが、代表的なのは唾液の分泌量の違いです。一概には言えませんが、男性よりも女性のほうが唾液の分泌量が少ない傾向にあります。
唾液には口腔を洗い流し、細菌の繁殖やニオイの発生を防ぐ役割を持っています。そのため分泌量が少ないと口臭が強くなりやすいです。
また、女性は口臭があるかもしれないと自覚しやすいこともあり、この敏感さ、気づきやすさも強いと感じることと関係していると考えられます」(石井さとこ先生・以下同)
女性ホルモンも唾液に関係している

「女性の口臭が強くなる理由には、女性ホルモンも大きく関係しています。
女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンは、生理周期やライフステージに合わせて変動しています。その影響を受けて唾液の分泌量が変わることで、口腔環境がゆらいでいます。特に閉経を迎えると、エストロゲンが急激に低下するため、ますます唾液の分泌量が減少しやすく、ドライマウスにつながります。ドライマウスも更年期症状のひとつです。
ドライマウスとは、医学的には口腔乾燥症と呼ばれ、唾液の分泌量の減少、唾液の質が変化することで、口の中が乾燥してしまう症状です。例えば、よく話した後やのどが渇いたと感じる時は口の中は乾燥しています。その乾燥状態が続くと、口臭が強くなるだけではなく、口の中がねばつくと感じることもありますし、虫歯や歯周病も増えてしまいます」
ドライマウスのデイリーケア

「口腔のケアは、週1回のスペシャルケアではなく、毎日コツコツと積み重ねていくことが大切です。日常生活の中で意識していくだけでも口腔の状態は変わってきます」
1.歯磨き、フロス、歯間ブラシはセット
「毎日の歯磨きだけではなく、フロスと歯間ブラシでのケアも重要です。フロスは歯と歯の間を掃除する役割、歯間ブラシは付け根部分をキレイにする役割と、それぞれに役割が異なりますので、朝と夜、もしくは夜だけでもセットで取り入れましょう」
2.噛むことを意識
「噛むことで唾液が分泌されますので、食事の際はよく嚙むこと。ガムで噛む習慣を身につけることもおすすめです」
3.鼻呼吸をする
「特に就寝時は、口呼吸になっていることが多いです。口呼吸は口腔の乾燥につながります。どうしても口呼吸になってしまう場合は、口にテープを貼って鼻呼吸のトレーニングをしてみてください」
4.水で水分補給
「こまめに水分補給をすることは大事です。ポイントは、お茶やコーヒーではなく、水を飲むこと。水には口腔を中和してくれる力があるため、口腔を整えてくれます」
口腔環境をよりよくするための体操
●口臭のもとになる下の汚れをオフする【舌そうじ】
「舌の先は、上あごの前歯の裏にあるのが正しい位置です。その位置にあると自然と上あごの粘膜と舌がこすれあうため、舌の表面の汚れは落ちます。ですが、マスクをする習慣や筋肉の衰えなどで舌の位置が下がってしまいます。さらにドライマウスになってしまうと舌に汚れがつきやすくなりますので、定期的にお掃除しましょう」
舌そうじのやり方
上あごに舌を押し付けて、優しく10回こすります。
>>>動画リンク
●分泌を促す【唾液のツボ押し】
「唾液の分泌させることもドライマウスの対策になります。両耳の上部手前にある、骨の出っ張りがある近くにあるツボを押すと、耳下腺(じかせん)が刺激されて唾液の量が増えます。さらに、成長ホルモンのバロチンも含んでいるので、美肌効果も期待できます。私は、成長ホルモンを含んだ唾液を“美唾液”と呼んでいます」
唾液のツボ押しのやり方
両耳の上部手前にある、骨の出っ張りがある近くにある小さなくぼみ部分に、人差し指の腹を当てます。10秒押して離すを繰り返すことで、唾液の分泌につながります。
>>>動画リンク
「どちらの体操も気軽できると思います。例えば、夜の歯磨きタイムの仕上げに取り入れるなど、ぜひルーティンにしてください。そして、定期的に歯科検診を行いながら口腔環境を整えていきましょう」
執筆/木川誠子
No.00192
2025年11月14日リリース