ウェルネス・疾患ケア

今とこれからの健康のために知っておきたい、女性性機能障害(FDS)のこと

セクシャルウェルネス(性の健康)の視点から、女性性機能障害が注目されています。英語表記では、Female Sexual Dysfunction(フィメール・セクシャル・ディスファンクション)となるため、その頭文字をとってFDSと呼ばれることもあります。

医療法人財団小畑会 浜田病院理事長であり、フェムキュア施術を行う産婦人科専門医の山村菜実先生は、「FDSの悩みを抱えている女性は多いです。治療できる事柄なので、諦めずに向き合ってほしいです」と話します。そこで、FDSの基本的な知識やその治療法について教えていただきました。

顕在化してきた女性性機能障害

顕在化してきた女性性機能障害

「FDSとは、性的関心が薄れてきた、性交痛がある、気持ちよさや心地よさを感じにくくなったなど、性行為にまつわる悩みがある状態のことを指します。近年、フェムテックが知られていくなかで顕在化してきましたが、以前から悩みとして抱えていた女性は多かったと考えられています。

その背景には、相談しにくい悩みということもありますが、クリニックで相談しても、個人差だから、気のせいなどと判断されて、治療の対象であると考えられていなかったからです。現在は、FDS専門外来を展開するクリニックも登場し、治療法の選択肢も広がってきています」(山村菜実先生・以下同)

代表的な症状は性交痛と腟のゆるみ

代表的な症状は性交痛と腟のゆるみ

「FDSの代表的な悩みは性交痛と腟のゆるみです」と山村先生。なかでも、性交痛に関しては、『ジェクス ジャパン・セックスサーベイ2020(※1)』によると、女性の6割以上が悩んでいることがわかっています。さらには、性交痛がある場合、4割以上は性行為に満足できていないという結果も出ています。

「性交痛が起こる理由は、腟の形状問題、腟の痙攣、男性の形状の問題、相性などが考えられますが、なかでも腟の乾燥がもっとも多い要因です。性行為の際、十分な潤滑液が分泌されていないことによって起こります。

また、腟のゆるみもFDSの症状です。加齢や出産経験の影響によってゆるんでしまうのですが、性行為の満足度低下につながりますし、骨盤臓器脱のリスクも高まります。骨盤臓器脱は、子宮や膀胱、直腸などの骨盤内にある臓器が外に出てきてしまうという、女性特有の病気のひとつです。

性交痛や骨盤臓器脱といったFDSの症状は、生活の質にもかかわってきますので、セルフケアと美容治療があることを知ってください」

 

今から始められる2つのセルフケア

●腟口マッサージ

「デリケートゾーン用の保湿アイテムを用いて、腟の入口をマッサージする方法です。血流改善、組織の柔軟性アップ、腟の萎縮予防などの効果が期待でき、性交痛の改善につながります。

デリケートゾーン用のオイルやジェルを親指と人差し指の第一関節部分に塗布し、腟口部分を軽く挟みます。指を滑らせるように動かしながら、腟口全体をマッサージしてください」

●骨盤底筋群のトレーニング

「骨盤底筋群は、骨盤の底部分にあるハンモック上の筋肉です。子宮や膀胱などを支えている筋肉なので、骨盤底筋群を鍛えることで骨盤臓器脱の対策になり、尿モレなどへの改善にもつながっていきます」

 

根本解決が期待できる3つの美容医療

●PRP注入治療(腟内注入:¥300,000など)

「再生医療の技術を応用した方法です。ご自身の血液を一定量抜き、遠心分離器にかけて血小板を取り出します。高濃度の血小板を腟内に注入することで、組織のエイジング効果が見込めます。

とても細い針を用いているため、個人差はありますが痛みはごくわずかなので、麻酔なしで行うことが可能です」

●腟HIFU(スタンダード:¥160,000など)

「顔のリフトアップ施術として知られている、高密度焦点式超音波施術のHIFUを腟に応用したのが腟HIFUです。腟のゆるみへの対策として有効です。

専用のマシーンにて腟内に照射し、熱エネルギーで粘膜の下にある筋膜層を引き締めていきます。コラーゲンや、エラスチンの生成を促すこともできるため、腟内の弾力性アップにつながります」

●レーザー治療(ジュリエットレーザー 腟内:¥160,000など)

「腟やデリケートゾーンへのレーザー治療は、腟の引き締め、尿モレ改善など、さまざまな悩みの解消につながります。

レーザー治療にはいくつかありますが、例えば、ジュリエットレーザーの場合は、コラーゲンやエラスチンの生成を促し、腟の引き締め効果が期待できます。また、デリケートゾーンに照射する場合は、黒ずみ対策になります」

女性性機能障害は治療ができる

「FDSと向き合うことは、心地いい性行為のためでもありますが、婦人科系の病気を見逃さないためでもあります。最近になって痛みを感じるようになった、痛みが強くなったという場合は、婦人科を受診してください。

そして、セルフケア行いながら、根本解決を目指したい時には、医療領域での治療が行えることも選択肢として持っていることで、気持ちが軽くなると思います」

※1 【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2020 調査結果報告書
※価格は『東京美容クリニック』を参考にしています。

(インフォメーション)

子宮を愛してあげよう(現代書林)

子宮を愛してあげよう(現代書林)
著:山村菜実/定価:¥1,540

子宮ケアとオキシトシンをテーマに、産婦人科専門医の山村菜実先生が知ってほしい情報や知識が収録されています。

執筆/木川誠子

No.00157
2025年1月24日リリース

山村菜実先生

山村菜実先生産婦人科専門医・産業医/東京美容クリニック理事長

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東京女子医科大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医・日本抗加齢医学会専門医・日本医師会認定産業医・日本美容皮膚科学会正会員・医療法人財団小畑会理事長。2019年に東京美容クリニックを開設し、2022年から東京美容クリニック表参道本院理事長を務める。婦人科と美容を融合させた”フェムキュア施術“を行い、女性の悩み全てに寄り添う丁寧なカウンセリングにファンが多い。2024年11月上旬に書籍『子宮を愛してあげよう』(現代書林)を上梓予定。
https://tbc.clinic/