フェムテックは、女性の健康課題に対してテクノロジーを用いて解決へと導いていく製品やサービスのこと。そして、テクノロジーを用いていない製品やサービスがフェムケアと定義されています。女性の健康課題を解決するためにフェムテックやフェムケアはありますが、実は、今気になることがなかったとしても、今ある健康を維持するためにも心強い存在です。
予防の視点でフェムケアを取り入れる大切について、女性ホルモン専門薬剤師である岡下真弓さんにお話しいただきました。
健康維持は日々の積み重ね
「近年は、薬剤師が常駐している薬局やドラッグストアが増え、チャット相談を導入している機関もあり、女性の健康課題をはじめ、日常で感じた不調を相談しやすい環境になっています。私自身もさまざまな相談に向き合い続けていますが、自分の体調や健康状態を把握していない人が多いように感じています。なかには、薬さえ服用すればさくっと不調が治せると思っている人も少なくありません。
体調不良や健康課題はある日突然起こるのではなく、日頃の行いの積み重ねによって引き起こされます。それは、健康維持にも同じことが言えます。調子がいい状態が保たれるのは、毎日の健康習慣の積み重ねがあるから。だからこそ、予防の意識を持って実践することが大切です」(岡下真弓さん・以下同)
病気やケガを未然に防ぐための行動
「今起きている健康問題に対処することは、対症療法、事後対応となる一方で、予防の意識を持つことは、将来起こる可能性がある健康問題を未然に防ぐために、積極的に行動すること、考える姿勢や心構えを指します。健康維持の向上を目的として、病気やケガを未然に防ぐために行動することが予防につながります。
具体的には、定期的な健康診断、規則正しい生活習慣になります。そして、身体的な事柄に加えて、精神面のフォローアップも重要。ストレスや精神的な疲労を溜めないために、休息をとること、相談できる環境を作ることも予防につながります。“備えあれば憂いなし”というように、予防の意識は日常生活や仕事をするうえでも必要な事柄です」
健康リテラシー向上も予防につながる
「予防の意識は健康リテラシーと言われることがありますが、この健康リテラシーは幼少期から養われ続けていると考えています。実家での食生活を思い出してみてください。ごはん、お味噌汁、野菜、お肉……と、いろいろな食材を使ったメニューが並んでいませんでしたか?ですが、ひとり暮らしを始めたり、友達と食事に行く機会が増えたりするなかで、食生活が偏っていることがあると思います。
生活環境や生活リズムが変わることで、自分の健康状態は変化していきます。また、加齢の影響も受けますので、今の自分に必要な健康を意識して、今ある不調にはきちんと対処しながら、日々の生活の中で予防の意識を養っていきましょう」
予防の意識を支える4つのこと
1.違和感にはしっかり対処する
「予防の意識を持つための第一歩は、気になることへの対処からです。例えば、風邪をひきそうだと感じているとします。このタイミングで対処するか、そのままにしておくかのふたつの選択肢がありますよね。そういう時は、なにかしらの対処を選んでください。
まずは、目の前にある違和感に対処していく。すると、徐々に『これは寝たら回復する程度だ』『病院に行ったほうがいいパターンだ』というように、自分の中で判断ができるようになっていきます。その積み重ねが、風邪をひかないための行動=予防の意識につながっていきます」
2.規則正しい生活習慣をできる範囲で実践
「しっかり睡眠をとる、栄養バランスの整った食事を意識する、適度に運動する、といった規則正し生活習慣は、やはり健康維持に必要不可欠です。
実践が難しい場合は、例えば、仕事の関係で外食が続いた時の週末は家で野菜を中心とした食事にする、運動する時間が確保できない時はひと駅分歩く、階段を利用するなど、できる範囲で調整する意識を持つことが大事。ベーシックなことをコツコツと積み重ねていくことは健康への近道です」
3.薬の説明書や注意事項を読む
「チャット相談には、『この薬はいつ飲めばいいですか?』という質問がよく届きます。処方薬にしても、薬局やドラッグストアで購入した医薬品にしても、同封されている説明書に必要なことはすべて書かれています。読んで理解することも予防の意識を養うことにつながります。
新しい家電を買った時に使い方を確認するように、同封されている説明書や注意書きを読む習慣を身につけていきましょう」
4.SNS上の情報は正しいか確認する
「現代はインターネットやSNSを使うことが一般化していることもあり、そのなかにある情報がすべてだと思っている人も多い印象があります。もし、SNS上で目にした情報を健康習慣として取り入れる場合は、その内容が正しいかどうかを確認してください。
また、SNSにはアルゴリズムが存在します。SNSの種類によってそのルールはさまざまですが、基本的には、投稿内容やいいね・リプライのアクションなど、複合的に判断して興味関心がある事柄に最適化されています。そのため、普段、フェムケアや健康情報に触れる機会が少ない場合は、タイムラインに流れてこないと思います。SNS上の情報がすべてだとは思わず、必要な情報には自らアクセスしに行くことも意識しましょう」
執筆/木川誠子
No.00158
2025年1月31日リリース