ウェルネス・疾患ケア

思春期・妊娠期・更年期……ライフステージで見る、女性ホルモンと口の中の関係

「生理前になると、なんか歯が痛くなる」「生理前になると口内炎ができる」と思ったことありませんか?生理管理アプリ『ルナルナ』が実施した【女性ホルモンと口腔内トラブルに関する意識・実態調査】によると、生理前後・生理中、妊娠中にそれぞれ約5人に1人が口腔内トラブルを経験していることがわかります。

女性ホルモンと口腔内トラブルに関する意識・実態調査妊娠初期には歯科検診が推奨されていることも踏まえると、口の中も女性ホルモンの影響を受けていそうです。そこで、歯科医師であり、口元美容スペシャリストでもある石井さとこ先生に、女性ホルモンと口の中の関係についてお伺いしました。ライフステージの中でも、女性ホルモンの変動が大きい思春期・妊娠期・更年期をメインに気をつけたいこと、意識したいケアなどを教えていただきます。

女性の口腔トラブルは男性より多い

女性の口腔トラブルは男性より多い

「虫歯や歯周病などの口腔トラブルは男性よりも女性のほうが多いです。その理由は、唾液の分泌量の違いが大きいですが、過度なダイエットなどの生活習慣も影響しています。特に、飲むだけダイエットで噛む習慣がない場合は口腔トラブルが起きやすくなります。

トラブルのないいい状態の口腔にはいくつかの条件があります。まずは、唾液がしっかりと分泌されていること。唾液には口腔のうるおいキープ、食べかすや細菌を洗い流すなどの役割があります。その他、歯ぐきはピンク色で引き締まっていて、歯磨きの際に出血しない、痛みがないこと、白っぽい舌苔が厚くなく、口内炎やただれがないことなども挙げられます。もちろん、しっかり噛める、冷たいものや熱いものでしみたりしない歯も重要です。

口は身体の入口なので、口腔の状態は身体全体につながっていきます。毎朝、口腔をチェックしてみてください」(石井さとこ先生・以下同)

セルフチェック項目
□朝起きた時に口が乾いていないか
□歯ぐきに出血がないか
□舌がキレイなピンク色をしているか
□しっかり噛めるか
□味を感じられているか

ライフステージと口腔環境の関係

「女性は口腔トラブルが起きやすいとお伝えしましたが、女性ホルモンの影響を受けていることも要因のひとつです。

思春期は、女性ホルモンの分泌が活発になることで歯ぐきが腫れやすく、歯周病や歯肉炎のリスクがあります。性成熟期も引き続き歯周病のリスクは高く、妊娠・出産を経験する場合は、母親の口腔状態が胎児に影響していることもわかっています。女性ホルモンのエストロゲン量が減少する更年期になると、歯周病をはじめ、ドライマウスも起こりやすくなります。

このようにさまざまな口腔トラブルのリスクはありますが、中でも歯周病・ドライマウス・顎関節症には要注意です」

【思春期・妊娠期・更年期】歯周病のリスクが高まる

「エストロゲンやプロゲステロンが増える時期は、歯ぐきの毛細血管が拡張しやすく、炎症や腫れ、出血が起こりやすくなります。女性ホルモンの分泌量が増える思春期や妊娠期をはじめ、生理前(排卵期)も注意が必要な時期です。

エストロゲンが低下する更年期は、歯ぐきが弱くなるため、歯周病のリスクが上がります」

【更年期】ドライマウスになりやすい

「エストロゲンは唾液の分泌量と質に関係しています。そのため、更年期、特に閉経後は唾液の分泌が減少するため、口腔内が乾燥状態であるドライマウスになりやすいです。同時に口臭、虫歯などの口腔トラブルも起こりやすくなります」

【更年期】顎関節症に要注意

「エストロゲンは骨密度にも関係しているため、更年期を迎えると骨粗しょう症のリスクが高まります。アゴの骨密度にも同じことが言えるため、顎関節症を発症する可能性があります」

日常的なケアでリスクを下げていく

日常的なケアでリスクを下げていく

「口腔ケアには特効薬はなく、デイリーケアの積み重ねがリスクを下げることになります。まずは、女性ホルモンの変動が口腔環境に影響していることを知ったうえで、コツコツとケアを行いましょう」

●定期的な歯科検診
「歯が痛いからなど、自覚症状がある時だけではなく、自覚症状がなくても定期的に歯科検診を行いましょう。歯石をキレイに除去をすることも大事です」

●多様なツールでケアする
「歯ブラシだけではなく、フロス、歯間ブラシも毎日取り入れてください。歯ブラシは歯の面を、フロスは歯と歯の間を、歯間ブラシは付け根部分を……と、それぞれ役割が異なります。

ヘッドが小さく、毛束がひとつにまとまっているタフトブラシは、歯ブラシでは磨きにくい、歯ぐきのキワの部分を磨くのに適しています。歯周病予防として有効です。

口腔内の菌を除去する役割のマウスウォッシュは、いい菌も含めて流してしまう可能性があるため、使いすぎには注意してください。水ですすぐだけでも問題はありません。その場合は左右・上下と壁に打ち付けるイメージですすぎましょう」

●唾液を増やすことを意識する
「唾液はいい口腔状態を作るために欠かせません。こまめに水分補給をすること、食事をする際はしっかり噛むことを意識してください」

<女性ホルモンと口腔内トラブルに関する意識・実態調査>
調査実施時期:2025年5月22日(木)~5月26日(月)
調査方法:『ルナルナ』、『ルナルナ 体温ノート』、『ルナルナ ベビー』にて調査  有効回答数:女性3,791名

執筆/木川誠子

No.00189
2025年10月24日リリース

石井さとこ先生

石井さとこ先生歯科医師・口元美容スペシャリスト/ホワイトホワイト院長

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審美・矯正治療を行う「ホワイトホワイト」の院長であり、日本で歯のホワイトニングを広めた第一人者。歯と身体を美しく保つための食事や、歯が美しく見える口元メイクについてのアドバイスに定評がある。2005~2012年までミス・ユニバース・ジャパンの歯をプロデュースするオフィシャルサプライヤーを務めるなど、ビューティセレブからの信頼も厚い。『マスク老け追撃顔トレ』(集英社)、『美しい口元』(ワニブックス)など、著書多数。
https://www.whitewhite.jp/