特集

『Women’s Health Innovation Summit USA』で実感!日本のフェムテック領域に必要なこととは

女性の健康に関するイノベーションや課題について議論する国際的な会議である『Women's Health Innovation Summit USA』(※1)。

このサミットに参加した、株式会社ジョコネ。代表取締役 北奈央子さんにお話を伺いました。アメリカでの動きを知ることで感じた、日本との違いや日本のフェムテックに必要だと感じたことを伺いました。

性別や業種などを超えてみんなで考えること

性別や業種などを超えてみんなで考えること

「『Women's Health Innovation Summit USA』は、女性の健康の向上に向けたイノベーションを推進し、今ある課題に取り組むことで、より包括的で個別化されたケアを提供できる社会を実現するために行われています。製薬、バイオテクノロジー、ヘルスケア技術、医療機器など、さまざまな分野の専門家や企業が集まり、女性の健康に関する新しい製品や治療法、技術的な解決策を共有し、今後のヘルスケアの発展に寄与するためのさまざまなアイデアを交換する場となっています。

まず、フェムテックではなく、ウィメンズヘルスという言葉が用いられていたことが印象的でした。女性の健康は人口の半分に該当することであり、とても大事なこと。性別に関係なく、全員で取り組むべきことだという前提で議論されていました。そして、医療保険でカバーできるように、国として体制を作っていくということも重要視されています。

2024年4月にスイスのバーゼルで開催された『Women's Health Innovation Summit EUROPE』にも参加したのですが、すでにヨーロッパでは医療の仕組みとして広げていく動きがありました。アメリカでもそのような動きが起きているのだと。

医療保険のカバーを得るためには効果を証明しなければならないので、企業はそれに向けて努力が必要です。それは、より持続可能な形での仕組み、整備するための動きでもあるので、社会や国を変えていくエネルギー、勢いを感じました」(北奈央子さん・以下同)

医療との連携や、医療制度の違いも影響

医療との連携や、医療制度の違いも影響

「スタートアップと医療機関が連携する仕組みがあるのも、日本ではあまり見られないことなので印象に残っています。さらには、スタートアップの成長を加速させるために提供されている短期間の支援プログラムである『アクセラレータープログラム』が充実しています。これは、ヨーロッパでも見られた流れでした。

さらにアメリカは、ウィメンズヘルスに直接関係のないビジネスを展開しているIT系の企業などがスタートアップ向けのプログラムを持っており、資金提供を実施しているケースもありました。そのことから、産業としての期待値を反映しているようにも見えました。

また、国によって医療保険制度は異なります。日本やヨーロッパは公的な保険制度が中心で、民間保険が補完的な役割。そのため、医療へのアクセスがしやすいとされていますが、アメリカはその逆です。ゆえに、カンファレンスの内容からは外れますが、薬局での選択肢の充実度が印象に残っています」

●日本の医療保険制度

すべての国民が公的医療保険に加入することが義務付けられています。大きく分けて、企業に勤める人向けの『健康保険』と、自営業など向けの『国民健康保険』があります。すべての国民が公的医療保険に加入し、必要な医療サービスを誰もが受けられる仕組みですが、実は諸外国ではあまり見られない、日本ならではの仕組み。そのため、どの病院でも同じ料金で治療を受けられ、医療費の一部を自己負担(通常30%)し、残りは保険でカバー。高額医療費に対する補助制度などを受けることができます。

●アメリカの医療保険制度

アメリカは民間保険が中心の医療システム。雇用者を通じて提供される保険が一般的で、保険未加入者も少なくないと言われています。公的な保険制度もありますが、基本的には民間保険の補完的な役割のため、医療費が高額。保険でカバーできる範囲が狭い場合は全額負担もありえます。また、保険プランによっては、保険が適用される医療機関や医師が制限される場合も。

アメリカの医療保険制度

「アメリカは医療や健康に関してだけではなく、自己責任の国という背景もあると思います。そのため、セルフメディケーションや予防的な役割のものも多く、薬局でも取り扱われていました。

一方、日本は医療へのアクセスがしやすい分、美容アイテムとしての展開が多い印象があります。個人の行動傾向としても、自分で積極的に情報や製品などにアクセスするというよりは、専門家に頼る、ある意味依存する傾向が強く、保険適応外である予防医療に対する意識はまだまだ低いように思います」

日本のフェムテックに必要なこと

「女性の健康課題は、国の制度や社会の風潮、個人の健康習慣など、さまざまな事柄が影響しています。だからこそ、その国独自の発展があります。そういった意味では、日本ではまだまだできることがあると感じています。

私自身、理工学部で勉強をして、医療機器の会社でずっと働いていました。もともと技術と医療への関心が高いこともあって、フェムテックの領域でももっと活用していきたい、もっと活用できると考えています。そのためには、エビデンスを得るという意味でも技術を使って解明していくことが必要だと思っているのですが、今回の『Women's Health Innovation Summit USA』に参加して、改めてそのことを実感しています。

海外との取り組みを参考にしながら、日本でも技術の融合、企業と医療の連携に取り組みながら、女性の健康課題を解決へと導いていきたいです」

(※1)
『Women's Health Innovation Summit USA』
マサチューセッツ州ボストンの『シェラトンホテル』で2024年9月23日~25日で開催された。2024年4月16日~17日は『Women's Health Innovation Summit EUROPE』がスイス・バーゼルでも開催され、女性の健康とフェムテック分野における革新、投資、研究、パートナーシップを促進する主要なプラットフォームとなっている。2025年にも開催予定。

No.00147

北奈央子さん

北奈央子さん女性の健康総合アドバイザー・工学修士/株式会社ジョコネ。代表取締役

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聖路加国際大学 大学院 看護学研究科で女性のヘルスリテラシーの研究をしていた際に気づいた「言いづらい」「行動しづらい」女性の健康の悩みを解決に結びつけるために日々奮闘。NPO法人女性医療ネットワーク』理事・メノポーズカウンセラー・女性の健康推進員・女性の健康総合アドバイザー・工学修士。