閉経の前後5年間、合計10年間が更年期と定義されていますが、そもそも閉経の判断方法を知っていますか?
「2~3ヶ月生理がこなかったら閉経したと思いがちですが、実は違います」と教えてくれたのは、婦人科と美容を融合させた“フェムキュア”を提案する産婦人科専門医である山村菜実先生。では、閉経はどのように判断すればいいのでしょうか?あわせて、閉経にともなう心身の変化についても伺います。
最後の生理があった年齢が“閉経年齢”

「2~3ヶ月生理がこなかったら閉経したと思いがちですが、12ヶ月連続してこなかったら閉経と判断します。つまり1年間です。そして、最後に生理があった年齢が閉経年齢となります。
個人差があることを前提に、閉経の平均年齢は50.5歳とされていますので、45~55歳の10年間が平均的な更年期期間となります」(山村菜実先生・以下同)
知ることも閉経の準備

「閉経を迎える時期はひとりひとり異なりますが、準備をしておくことは大切です。
まずは、自分の生理周期を把握しておきましょう。閉経が近づいてくると生理周期が乱れてきます。短くなって長くなることが一般的ですが、自分の生理周期を知らないと短くなっている、長くなっていることが判断できません。生理管理アプリなどを活用して、記録しておくと安心です。
そして、40代を迎えたら、骨密度検査やホルモン検査などの検査を通して、今の状態を知ることもいいと思います。骨密度は、エストロゲンの減少の影響を受けます。必要に応じて、婦人科や更年期外来を受診する選択肢を持っていてください」
閉経にともなう心身の変化
「加齢とともに卵巣機能が徐々に低下していき、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減ることで閉経を迎えます。更年期に見られるさまざまな症状は、ホルモン分泌の指令を出している視床下部や脳下垂体が一生懸命働くことで、自律神経や精神面などに影響が出てくることで起きています」
●自律神経の変化で見られる症状
のぼせ/発汗/足元の冷え/動悸/めまいなど
●精神面に見られる症状
不安感/イライラ/落ち込み/集中力の低下など
●身体に見られる症状
関節痛/肩こり/体重増加/腟や外陰部の乾燥/尿もれ/性交痛など
●髪や肌に見られる変化
乾燥/たるみ/抜け毛など
●更年期に気をつけたい疾患
骨粗しょう症/血管硬化/萎縮性腟炎など
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閉経は次のライフステージを迎えること

「閉経を迎えて、生理から解放されると思うこともあれば、女性としての終わりだと感じる場合もあると思います。閉経は生理の終わりではありますが、更年期を経て、新たなライフステージへと向かっていく過程になります。
妊娠のリスクがなくなり、ホルモンバランスも落ち着きますので、よりフラットに自分自身の心身と向き合えるようにもなるライフステージでもあります。そして、新たなライフステージを健やかに過ごすためには、今から生活習慣を整えることも大切です」
●食生活
「エストロゲンに似た働きが期待できる大豆イソフラボンが摂取できる、納豆や豆腐、味噌などを積極的に食べることや、骨と筋肉を守るカルシウム、ビタミンD、タンパク質なども意識してください」
●運動習慣
「生涯の骨密度は10代で決まってしまいます。そのため、今ある骨密度を維持していくことが大事です。ウォーキングなどの有酸素運動と適度な筋トレで骨密度を守りましょう。
そして、尿もれなどの対策になる骨盤底筋トレーニングもおすすめです」
●リラックス習慣
「ホルモンの変動は自律神経にも影響するため、睡眠やストレスにも関係しています。そのため、休息も大事です。自然を感じる場所で過ごすことや、推し活をすると幸せホルモンであるオキシトシンが分泌されて、心が満たされていきます。
リラックス習慣は睡眠の質にもつながっていきますので、自分なりの方法を実践してください」
閉経後も婦人科検診は必要
「閉経を迎えると女性特有の不調とは関係がなくなると思われがちですが、婦人科系がん、腟萎縮、骨粗しょう症など、閉経後に進行しやすい疾患もあります。
子宮頸がんや子宮体がん、乳がんなどのがん検診は、引き続き必要になります。加えて、エストロゲンの減少によって骨の新陳代謝が低下するため、骨粗しょう症の予防として骨密度の検査も行いましょう。
また、外陰部の乾燥やかゆみ、性交痛、尿漏れや頻尿など、腟と外陰部のトラブルは閉経後に増える傾向があります。必要に応じて婦人科で相談しながら、デリケートゾーンのケアや骨盤底筋のトレーニングなどセルフケアも実践してください」
執筆/木川誠子
No.00196
2025年12月12日リリース