フェムテックの動きが広がり、活発化する中で、これまで隠れていた悩みの声が表面化しやすくなっています。そのひとつが、セックスの時に生じる痛み、性交痛です。では、なぜ性交痛が起るのでしょうか? 多岐に渡るその理由と対処の仕方について、産婦人科医であり、婦人科と美容を融合させた施術、“フェムキュア”を提案している東京美容クリニックの山村菜実先生に教えていただきました。
性交痛は我慢しないで対処する
性交痛とは、腟への挿入を試みた時、完全に挿入された時に生じる痛みのことです。うるおい不足によるものだと認識されることが多いですが、それは理由のひとつであり、そのほかにもさまざまな原因が考えられます。また、腟口付近なのか、もっと奥の子宮口あたりなのか、痛みが生じる場所もひとりひとり違ってきます。
いずれにしても、痛みがある場合、我慢したまま行為を続けることはおすすめしません。膣口や腟内、デリケートゾーンに傷ができる可能性がありますし、感染症のリスクも高まります。また、心理的にも恐怖心や不安感が生まれてしまいますので、専門機関を受診することをはじめ、きちんと対処をしていきましょう。
性交痛が起こる6つの理由とその対処法
理由1 受け入れる準備ができていないと膣口付近で痛みが生じる
身体が受け入れる準備ができていない状態で挿入してしまうと痛みが生じやすくなります。この場合は年齢に関係がなく、挿入に必要なうるおいが足りていないので、腟口付近で痛みが生じやすいと思います。
<アドバイス>
身体的にも、心理的にも興奮を高めるために、いわゆる前戯を行ってください。そうすることで受け入れるために必要な分泌液が体内から出てきますので、挿入の準備をするという意味でも前戯を大切にしてください。
理由2 コンドームが合っていないと腟口やデリケートゾーンに違和感が起きる
避妊や感染症対策としても、安心した気持ちで性行為をするためにも、コンドームは必要です。ただ、自分に合わないものを使っていると性交痛の原因になります。
例えば、天然ゴムラテックス製はアレルギー症状が起こる場合があります。性行為をしているその時は気が付かなくても、後日に症状が現れて、かゆくなることも。
<アドバイス>
思い当たる場合は一度アレルギー検査をしてみてください。そして、コンドームには、天然ゴムラテックス製、ポリウレタン製、イソプレンラバー製と素材に違いがあります。自分の身体と相性がいい素材を知ることも性交痛の対策になりますので、必要な知識や情報にアクセスしてください。
理由3 加齢によるうるおい不足で腟口付近、腟内に痛みが生じる
年齢を重ねると、肌は乾燥しやすくなってしまいます。それは、デリケートゾーンや腟内も同じです。
そして、乾燥が進むと外陰部が委縮する可能性もあります。主に、閉経後の更年期世代に見られる症状です。
<アドバイス>
日々のスキンケアの中で、顔や身体を保湿するように、デリケートゾーンもケアしてください。ただし、デリケートゾーンは顔や身体とは皮膚の状態が異なりますので、専用アイテムを用いることをおすすめします。また、性行為の際は潤滑ゼリーを取り入れることで、痛みの軽減につながります。
そして、更年期世代でデリケートゾーンや腟の乾燥が気になる場合は、自己判断は避けて、専門機関に相談してみてください。
理由4 パートナーのサイズが合わないことで、こすれやつっぱるような痛みが起こる
男性器のサイズが合わない場合にも性交痛が起こることがあります。力任せに挿入してしまうと、こすれによる痛み、皮膚が引っ張られるような痛み、奥まで挿入した際の突き当たる痛み、また傷ができてしまう可能性もありますので、無理して受け入れるのはおすすめできません。
<アドバイス>
なかなか話題にしにくいことではありますが、身体的な特徴によるものなのでパートナーと話し合ってみましょう。そのうえで痛みを軽減するためのソリューションアイテムを活用するのもいいと思います。
理由5 小陰唇が内側に入ってしまうことで違和感を覚える
小陰唇の形やサイズはひとりひとり異なりますが、大きい場合は挿入時に巻き込まれるように内側に入ってしまうことがあります。
<アドバイス>
違和感として自覚しやすいので、挿入時に巻き込まれないように気をつけてください。どうしても気になるという場合は、小陰唇を小さくする手術があります。対応している病院やクリニックに相談してみましょう。
理由6 処女膜による影響で腟口付近に痛みがある
処女膜は腟の入り口から1~2cmのところにあり、形やサイズには個人差がありますが、厚さ約1mmでヒダのような形をしています。薄い膜なので初めての性行為の際に破れるものではありますが、はしっこ部分は残っていることがほとんどです。そのため、残っている部分が伸縮しにくい、しっかりしていてきついという場合は、性行為のたびに痛みを感じることがあります。
<アドバイス>
処女膜が影響しているケースは少ないですが、先天的な特徴になるため手術での対処になります。婦人科やクリニックに相談してください。
相談しやすい先生を見つける
性交痛は我慢しないほうがいいと分かっていても、パートナーにもなかなか言いにくいと思いますし、とてもプライベートなことだけに仲が良い友達にも相談しにくい話題ですよね。また、痛みを感じた時は婦人科やクリニックへの受診をおすすめしますが、行きにくいところはあると思います。
ただし、必ずしも先ほどの6つのケースに当てはまるわけではありません。痛みが起きる原因として病気の可能性もありますので、しかるべき対処が必要です。
SNSなどで痛みの原因を探ることもあると思いますので、その時に性交痛を含めたフェムテックやフェムケアについて発信している産婦人科医もチェックしてみてください。自分の考えに似た先生、発信している内容に共感できる先生を見つけておくことで、いざという時に相談しやすくなると思います。
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