女性の体と悩み

更年期になると毛が濃くなるって本当?女性ホルモンと体毛の関係

VIO部分も含め、脱毛施術への関心が高まっている中、「最近、ヒゲが生えてきた気がする」「20代の頃に比べると産毛が濃くなってきた」と体毛の変化を感じているという声が聞かれるようになってきました。

体毛の状態は年齢などによって変化するのでしょうか?婦人科と美容を融合させた考え方でフェムキュア施術を提案している、産婦人科医の山村菜実先生に教えていただきました。

エストロゲンが十分だと体毛は薄くなる

脱毛した女性

「女性ホルモンに限らず、男性ホルモンも含めて、ホルモンバランスは体毛の状態と関係があります。

性別に関わらず、幼少期は体毛が気になることはないと思いますが、思春期に男性ホルモンが分泌し始めることで体毛の成長が促進され、徐々に濃くなってきます。女性の場合、女性ホルモンのひとつ、エストロゲンの分泌量が増えることで男性ホルモンの働きが抑えられるため、男性に比べると体毛は薄いです。

ただし、加齢や病気などの影響でエストロゲンの分泌量が不足している場合は、「体毛が濃くなったかも?」と変化を感じることがあると思います」(山村先生・以下同)

ホルモンバランスが崩れるとヒゲのような毛が生える

●性ホルモンの影響を受けにくい部位

眉毛、まつ毛、手足の毛、髪の毛の一部(側頭部と後頭部)

●女性・男性ホルモンの影響を受けやすい部位

ワキ、VIO

●男性ホルモンの影響を受けやすい部位

ヒゲ、胸毛、背中、お腹、耳、髪の毛の一部(前頭部と頭頂部)

「体毛には、性ホルモン(女性ホルモンと男性ホルモン)の影響を受けやすい毛と受けにくい毛に分かれています。

例えば、更年期になって口まわりの産毛が濃くなった、中にはヒゲのように濃い毛が生えてくる場合は、加齢によってエストロゲンの分泌量が減ったことでホルモンバランスが崩れたことで男性ホルモンの影響を受けやすくなっている可能性が考えられます」

睡眠の質を高めてホルモンバランスを整える

不眠症な女性

「体毛の変化にはホルモンバランスが崩れていることが考えられますので、生活習慣の見直しをしてみてください。

ホルモンの分泌指令を出している脳は、交感神経と副交感神経の自律神経の働きの司令塔になっています。そのためは、偏った食生活や過度なストレスは自律神経の乱れを引き起こし、さらにはホルモンバランスを崩すことにつながります。栄養バランスの食事を心掛け、ストレスは定期的に解消するなど、日頃から意識してみてください。

そして、特に重要なのが睡眠です。長時間眠れればいいというわけではなく、質のいい睡眠を心掛けましょう」

●可能なかぎり24時までに就寝

「身体の体温は眠りの質に影響があります。24時以降は徐々に体温が上昇し、深い眠りが得にくくなるため、それまでに就寝しましょう」

●スムーズに入眠できるように工夫する

「入眠してから3時間のうちに成長ホルモンが分泌されると言われています。寝る2時間前から携帯やパソコンは使用しない、部屋を暗くする、リラックスできる香りを焚くなど、入眠しやすい環境を意識してみてください」

●睡眠の妨げになることが起こらないようにする

「成長ホルモンは深い睡眠と言われる、ノンレム睡眠時に分泌されています。そして、レム睡眠とノンレム睡眠は90分間隔で繰り返されていますが、そのうちの1回目と2回目のノンレム睡眠時がもっとも成長ホルモンが分泌されるタイミングとされています。

そのため入眠から3時間は、物音など、睡眠の妨げになることがないよう環境を整えることも睡眠の質を確保することにつながります」

妊娠中の体毛の変化は例外

妊娠している女性

妊娠中に「毛が濃くなった気がする……」と感じる人もいるかもしれませんが、その場合はホルモンバランスの影響で濃くなったというわけではないそうです。

「妊娠中は、エストロゲンとプロゲステロンの両方の分泌量が増加します。女性ホルモンの全体量が増えるためメラニン色素が沈着しやすくなり、産毛が目立ちやすくなっている状態です。産後にホルモンバランスが戻ることでその症状は落ち着きます。

この場合、ホルモンバランスの影響による毛深さとは異なります。妊娠中は肌の状態が敏感になっていることも踏まえると、セルフ処理はおすすめしません。どうしても気になる場合は担当医に相談してみましょう」

執筆/木川誠子

No.00064

産婦人科専門医・産業医 山村菜実先生

産婦人科専門医、アンチエイジング専門医、美容産婦人科医、美容皮膚科医として、東京美容クリニックに勤務。婦人科と美容を融合させた考え方で、“フェムキュア施術”を行っている。