不安や悩み、疲労や心配事、イライラ、緊張、自信や集中力の低下など、心の不調を感じている時、いつもよりPMSや生理痛が重かったり、パートナーとの関係性がぎくしゃくしていたり……と、さまざまなところにも影響が出ていることがありませんか?「その不調は、もしかしたら幸せホルモンが不足しているサインかも」と教えてくれたのは、鍼灸師・温活士の栗本夏帆さん。
幸せホルモンは意識的に分泌させられる
私たちの身体には、100種類以上ものホルモンや伝達物質が分泌され、あらゆる生理機能の成長や発達、エネルギー代謝などを調整しながら、心と身体を正常に保っています。その中に、セロトニン・オキシトシン・ドーパミンの“三大幸せホルモン”と呼ばれる脳内物質があります。
「この3つの幸せホルモンがバランスよく幸せホルモン活性化している時は、心と身体の健康に保たれていて、幸せを感じやすいと言われています。ただ、多忙な日々や環境変化によるストレス、加齢などで、幸せホルモンの分泌は減少してしまいます。だからこそ、幸せホルモンについて知り、日々の生活の中で意識しながら過ごすことも大切です」(栗本夏帆さん・以下同)
栗本さんに伺ったお話からセロトニン・オキシトシン・ドーパミン、それぞれの特徴をご紹介します。そして、幸せホルモンの分泌につながる生活習慣を筆者が実践してみました。
「セロトニン」は脳内を調整する指揮者
幸福感を得るためには、心も身体も健康であることが大前提です。セロトニンには不安やストレスを和らげ、精神を安定させて、自律神経を整えてくれる働きがあります。心を平常に保つ役割があると言われていることから安定ホルモンという呼び名がついているくらいです。また、脳内の指揮者とも言われ、脳の調整役という重要なポジションも担っています。
つまり、セロトニンが活性化すると他のホルモンや体内物質も正常に機能し、心身ともに健康な状態を保つことにつながります。
●ライターが実践!セロトニンを分泌させるための習慣
セロトニンは朝の太陽の光を浴びたり、身体を動かしたり、呼吸を意識したリズミカルな心地よい刺激を、体内に取り入れることで分泌されるとのこと。中でも、朝散歩は最も手軽に取り入れやすいセロトニンの分泌を上げる方法!
朝6時台の静寂な空を眺めながらの朝散歩を実践しているのですが、穏やかな気分で満たされます。1日がいい気分で始まると、なんだかいい気分で終わるように感じています。さらに、寝つきも良くなったように思います。
自分を愛する行為で「オキシトシン」が活発化
愛情ホルモンと言われるオキシトシンは、主にスキンシップや人とのコミュニケーションなど、信頼できる人との安定した関係性によって分泌されています。以前は、女性が妊娠や出産、育児の際に分泌されていると言われていたことから、女性ホルモンのエストロゲンと関係しているとされていましたが、性別に関係なく誰もが分泌している物質です。
オキシトシンが分泌されると、脳のストレス中枢に作用し、興奮を抑え、ストレスを緩和。さらには、免疫力や自然治癒力の向上、他者への愛情を感じやすくなるなど、嬉しい作用が期待できます。
栗本さん曰く、「二次元キャラクターや芸能人に対しての推し活に感じる、ドキドキやキュンキュンといった気持ちもオキシトシンの分泌につながっていて、心や感情は満たしてくれます」。
●ライターが実践!オキシトシンを分泌させるための習慣
パートナーとのハグやキス、セックスをはじめ、子どもをだっこすることや、毎日のスキンケアなども有効とされています。そして、気心知れた人たちとのおしゃべりやペットとの触れ合いも、オキシトシンの分泌に貢献しているそうです。
筆者の場合は、3歳の甥っ子と遊ぶ時や興味のある相手との会話は、心が全開になり、表情も柔らかくなっていると思います。身体がリラックスして、オキシトシンが分泌されているのか、エネルギーが一気に入り込むような快感を覚えます。
仕事の活力につながる「ドーパミン」
3つ目の幸せホルモンであるドーパミンは、やる気をサポートしてくれる働きがあります。そして、感情や意欲、思考など心の働きにも大きく関わっています。分かりやすいところでは、褒められる、ご褒美を受け取るなど、承認欲や報酬欲といった欲が満たされると分泌されていますが、例えば、好きな音楽を聞いて気分がよくなることがありますよね。それもドーパミンが分泌されている証拠。
ただし、ドーパミンは快楽ホルモンと呼ばれる側面もあり、過剰に分泌されると興奮しすぎてしまう可能性があることも知っていてください。そのような状況になった際は、同じ幸せホルモンのセロトニンがセーブの役割を担ってくれます。
●ライターが実践!ドーパミンを適度に分泌させるための習慣
毎朝好きなトランスミュージックをかけて、コーヒーを淹れるところから始まります。すると脳が喜んで仕事の作業がはかどっていると感じています。筆者にとってのルーティンではありましたが、ドーパミンの作用を有効活用していたのかもしません。
心のセルフケアとして幸せホルモンが活躍
「膝を抱える」と聞いた時、どんなイメージを抱きますか?孤独感や考え込んでいるといったイメージを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。実は、この膝を抱える行為は、セロトニンを分泌させることにつながっています。つまり、孤独を感じている自分自身を癒すための行為でもあるのです。
また、手で頭をなでる、身体をさする、肌に触れることで気持ちが落ち着くことがありますよね。それは手から体温が伝わり、セロトニンの分泌が促されているから。生理前でイライラした時は頭をポンポンとなでたり、生理痛でお腹が痛い時はお腹をさすったり、頑張った日は労わる気持ちで自分自身を抱きしめたり……。
幸せホルモンは心と身体の健康を保つための重要な存在です。顔や身体のスキンケアを行うように、幸せホルモンを活用して心のセルフケアも取り入れてみてくださいね。
執筆/岩田香菜子
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