ウェルネス・疾患ケア

なぜ予防ができる?HPV感染=子宮頸がんではないことを知る

子宮頸がん検診は、20歳から2年に1回のペースでの定期検診が推奨されています。「子宮頸がんはがんの中でも原因がわかっているので、予防が可能になります」と教えてくれたのは、『クレアージュ東京 レディースドッククリニック』婦人科顧問の大島乃里子先生。

なぜ予防ができるのか、なぜ定期検診が重要なのか、子宮頸がんについての理解を深めていきましょう。

子宮頸がんの原因は性交によるHPV感染

子宮頸がんの原因は性交によるHPV感染

「子宮頸がんは、子宮頸部にできるがんのこと。その原因となるのが、性交によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)です。性交経験がある女性の約8割はHPVに感染しているとされており、そのうちの約9割は感染が持続せず、正常に戻ります。ただ、約1割は持続感染が起こり、子宮頸がんのリスクは高まります。

ただし、HPVに感染した場合、必ず子宮頸がんになるというわけではありません。子宮頸がんは他のがんとは異なり、原因がわかっており、予防することが可能になります。さらに、HPV感染からがん化まで過程があるため、早期発見・治療にもつながりやすいです」

HPV感染から子宮頸がんまでは5~10年を有する

「先ほどもお話ししましたが、HPV感染は性交経験のある女性の約8割が経験します。それを一次的な感染と呼びますが、そのうちの約9割は正常な細胞に戻ります。

残り約1割は持続感染し、細胞の変化が起こります。その場合、異形成(いけいせい)と診断され、そこから約1~2割ががんに進行し子宮頸がんとなります。異形成と診断されても、HPV感染の状態に戻り、さらには正常の細胞に戻る可能性もあります。

HPV感染から異形成を経て、子宮頸がんへと進行するには5~10年とされています。そのため、HPVワクチンや定期検診を受けることで予防ができ、がん化へのリスクを下げることにつながります」

HPVワクチンと定期検診で予防する

HPVワクチンと定期検診で予防する

●HPVワクチンは一次予防

「子宮頸がんの原因となるHPV感染を防ぐ、予防接種として用いられる薬がHPVワクチンです。定められた期間を空けて、同じワクチンを合計で3回接種します。ワクチン接種は、一次予防として有用です。

接種することで、HPVが関わっているとされている腟がんや、性別にかかわらない肛門がんや中咽頭がんなどの予防にもつながると考えられています。なので、男性の接種も推奨されています。

ワクチンと聞くと副反応が気になるかと思います。他のワクチン同様に接種した部位に痛みや張れなどの局所反応が見られる場合がありますが、数日で改善します」

●定期検診は二次予防

「HPV感染後、5~10年かけて子宮頸がんとなるため、定期検診で子宮頸部細胞診とHPV検査を行うことも予防になります。

子宮の入口である子宮頸部をブラシのついた専用器具でこすり、検体をとる検査になります。子宮頸部細胞診では、がんの前段階である細胞やがん細胞の有無がわかり、HPV検査ではウイルス感染の有無を調べています。個人差はありますが、ほとんど痛みを感じることはないと思います。

感染していても定期検診を受ける過程で正常に戻ることがありますし、正常に戻っても再感染する場合もあります。だからこそ、定期検診が必要です」

重要なのは検査時期を守ること

重要なのは検査時期を守ること

「子宮頸がん検診を受けると検査報告が郵送などで伝えられますが、重要なのは次の検査時期を守ることです。

検査報告には、陰性(NILM)、軽度異形成、中度~高度異形成、上皮内腺癌の疑い(AIS)など項目があり、該当箇所に印がつけられていると思います。陰性の場合は、2年に1回の定期的な検診で問題ありませんが、軽度異形成以上は精密検査が必要な場合もありますし、検査間隔も数ヶ月に1回のペースになります。

精密検査でHPV感染の有無や型番をチェックする必要があります。進行が早い型番や持続期間が長い場合は、がん化へのリスクが高まりますので、精密検査や検査時期が重要になります。

中には、『精密検査を受けてください』と書かれていても、次の定期検診まで何もしないという方がいますが、必ず精密検査は必要です。精密検査の指示があった場合はきちんと受け、『次回は●ヶ月後の●月に検診を受けてください』と書かれている場合は、その検査時期を必ず守りましょう」

原因がわかっているから予防ができる

「子宮頸がんはHPV感染が原因だとわかっています。だからこそ、予防ができます。

性交経験がない、HPVに感染していない場合は、HPVワクチンは一次予防の役割を担ってくれますし、感染後も定期検診を受けることで二次予防につながります。

また、HPVはウイルスなので、免疫力も影響しています。規則正しい生活、栄養バランスを意識した食事、適度な運動など、健康習慣を実践することも日常的に行える予防行為と言えます」

 

執筆/木川誠子

No.00135

大島乃里子先生

大島乃里子先生産婦人科医/クレアージュ東京 レディースドッククリニック 婦人科顧問

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日本産科婦人科学会専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医、医学博士。東京医科歯科大学病院 周産・女性診療科 講師。婦人科腫瘍のほか女性医学の専門医でもあり、思春期から老年期までの女性の生涯におけるヘルスケアを担っている。
https://www.creage.or.jp/