日本では、1948年から梅毒(性感染症のひとつ)の発生についての報告制度が始まっています。厚生労働省が発表しているデータ(※1)によると、1967年以降減少していた梅毒感染者が2011年頃から増加傾向になっており、2023年にはもっとも多い15000人を超える報告があります。
なぜ梅毒感染者は増加傾向なのでしょうか?その理由について、感染症専門医である『KARADA内科クリニック』五反田院長 佐藤昭裕先生にお話を伺いました。
感染経路は異性間の性的接触
「東京都感染症情報センターが公表しているデータ(※2)によると、梅毒感染報告は2022年以降に急増していることがわかります。年齢別で見てみると、男性は20~50代、女性は20代の感染報告が多いです。
そして、主な感染の要因は、異性間の性的接触です。男性のデータを見ると、2009年以降は50%以上でしたが、2015年以降は異性間性的接触の割合が増加しています。一方、女性は常に異性間性的接触が50%以上を占めていますが、2015年以降は80%以上になっています」(佐藤先生・以下同)
※東京都感染症情報センター「梅毒の流行状況(東京都2006年~2024年のまとめ)」
※グラフ内の数字は患者報告数です。
(2025年2月20日現在)
コンドームの未使用でリスクを高めている
「梅毒感染者が増加傾向になっている要因はさまざまありますが、そのひとつにはコンドームの未使用が挙げられます。
KARADA内科クリニック渋谷院では、梅毒の検査結果が陽性となった一部の方に、研究目的でのデータ利用にご協力いただいていますが、そのデータ(※3)によると性行為の際にコンドームを使用しなかったという回答が66.9%と半数を超えています。コンドームは性感染症の予防の役割がありますので、未使用の場合は感染のリスクを高めてしまいます」
【コンドームの役割は知っている?コンドームメーカに聞いてみた】
出会いの多様化も要因に
さらに、「マッチングアプリの登場による出会いの多様化など、現代の恋愛スタイルも感染増加の要因に関係していると考えられます」と、佐藤先生は話します。ちなみに、マッチングアプリは2010年以降に順次誕生しており、現代版のお見合いの役割があるとされています。
「KARADA内科クリニック渋谷院の同データによると、直近6ヶ月以内にマッチングアプリを利用した性行為の有無の設問に対して36.3%はありと答えています。さらに、不特定多数との性行為に関しては、75.8%と高いと判断できる数字が出ています」
主な性感染症の感染ルート
●梅毒
梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされます。主に、性行為などの性的接触により、口や性器などの粘膜、皮膚から感染が確認されています。
●クラミジア
日本でもっとも多い性感染症がクラミジアです。妊婦健診においても、正常妊婦の3~5%の割合で、クラミジア菌を保有しています。こちらも、主に性行為などの性的接触により感染します。
●淋病
淋菌への感染によって引き起こされる淋病は、世界中で増加しています。梅毒、クラミジア同様に、性行為などの性的接触により感染します。
「実は、梅毒をはじめとした性感染症の感染ハードルは低いです。性的接触での感染が増加傾向にあることをお伝えしましたが、この性的接触は性行為に限りません。例えば、のどに菌がいる場合はキスでも感染します。そのため、誰もが感染する可能性があります」
予防できることを知っておこう
「性病は目に見えないこともあって、無症状の場合が多いです。さらに、性感染症は恥ずかしいといった心理的ハードルや、どの科を受診すればいいのかわからない、検査は保険適用外となるため費用が高いなどの、受診までのハードルが高いことも感染拡大につながっていると考えています。
これまでと同様の対策ではこのまま増加し続けてしまう可能性もあるため、性感染症を薬で予防するという新たな概念の必要性を感じています」
【性感染症予防に重要な3つのこと】
①正しい知識、必要な知識を身につける
②性行為の際はコンドームを使用する
③予防薬について知っておく
佐藤先生が運営する、性感染症予防のためのオンライン処方診療サービス『JUST IN CASE』では、国内で唯一の性感染症事後予防薬『DOXY-PEP(ドキシペップ)』やHIV未感染者が内服する予防薬『HIV PrEP(HIVプレップ)』の2種類の処方が可能です。
処方前には自分自身で検体と取り、検査を行うことが強く推奨されていますが、性感染症の予防として、コンドーム以外にも予防薬という選択肢が加わったことは大きなこと。
より安心で安全な環境を確保するためにも、【性感染症予防に重要な3つのこと】を意識してくださいね。
※1 厚生労働省『いま、梅毒が急拡大していることをご存知ですか?』
※2 東京都感染症情報センター 梅毒の流行状況(東京都 2006年~2024年まとめ)
※3 n=157(KARADA内科クリニック渋⾕院にて、梅毒の検査結果が陽性となった⽅のうち、研究⽬的でのデータ利⽤に協⼒した⽅)、集計期間は2024/7~2025/2の8か月間
執筆/木川誠子
No.00175
2025年7月4日リリース