身体が冷えるのはよくないということは周知の事実ですが、子宮が冷えることで生理痛や生理不順、PMS……といった女性特有の症状につながっていると思っている人も多いのではないでしょうか。
「子宮が冷えるという認識は事実とは異なります。それは、子宮という臓器が冷えているのではなく、身体が冷えているということです」と教えてくれたのは、漢方医学、自然医学に基づいた診療を行う『イシハラクリニック』副院長の石原新菜先生。どうして子宮が冷えているという感覚になるのでしょうか。
子宮ではなく、身体全体が冷えている
「身体が冷えると全身の血流が悪くなり、肩こりや頭痛、むくみといった不調が起こります。同時に子宮周辺の血流も悪化しているため、生理痛や更年期症状、PMS、便秘……といった女性特有の症状が現れてきます。
もし子宮周辺が冷えていると感じているなら、それは身体全体が冷えている証拠。身体のどこか一部分だけが冷えるということはないため、全体を温めることで血流が促され、さまざまな症状が改善していきます」(石原先生・以下同)
冷えと女性の健康課題は関係している
●全身の冷えが生理痛を重たくする
「生理が始まるとプロスタグランジンというホルモンが分泌されます。このホルモンは子宮を収縮させて、子宮内膜を体外に排出する働きがあります。ただ、身体が冷えて血流が悪くなると過剰に分泌されてしまい、それによって子宮の収縮が強まり、生理痛の原因になります」
●足元が冷えると更年期症状が出やすくなる
「漢方医学には、身体は【気・血・水】の3つの要素で構成されているという考えがあります。足元が冷えると【血】の巡りが滞り、血液の流れが上半身に集中することで、のぼせやほてり、ホットフラッシュといった更年期症状につながっています」
●免疫力が低下するとHPVの長期感染につながる
「HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が長期間続くと細胞が異形成となり、子宮頸がんに進行します。ただし、感染したとしても正常に戻る場合がほとんどです。
ですが、体温が1度下がると免疫力は約30%低下すると言われています。冷えなどによって免疫力が低下してしまうとウイルスが排除されず、長期間の感染につながります」
●冷えは腸の動きを鈍らせ便秘になる
「身体の冷えは腸の動きにも影響を及ぼします。冷えによって血流が悪化することで、腸の内容物を移動させるぜん動運動が鈍くなることで、便秘に陥りやすくなります」
●免疫低下によって膀胱炎にもなりやすい
「女性は尿道が短いので膀胱炎になりやすいです。膀胱炎は尿道口から大腸菌などの腸内細菌が侵入し、膀胱の中で増殖することによって発症します。身体が冷えて免疫力が落ちている場合は細菌に感染しやすくなり、膀胱炎になるリスクも高まります」
【セルフチェックで冷えタイプを知ろう!身体の冷えと女性の健康課題の関係】
温活を環境に合わせて取り入れる
「基本の温活は、①適度な運動をする ②温かい飲み物を飲む ③シャワーだけで済ませず湯船に浸かる ④腹巻きするの4つです。身体を温めることは常に意識してほしいですが、環境や状況に合わせて取り入れる温活を変えるのもおすすめです。
気温が高い日の屋外では、身体に熱がこもり、熱中症や脱水症状になる危険があります。そのため、適度に冷たい飲み物を飲んだり、薄着で過ごしたりすることは問題ありません。
しかし、室内ではエアコンの影響もあり、身体が冷えやすくなります。そのため室内では、身体を冷えないよう温かい飲み物を選ぶ、腹巻きや靴下を身につけるといった対策を心掛けましょう」
不調の改善と予防のために身体を温める
「生理痛や更年期の症状をはじめ、肩こりや頭痛、むくみなど、なにかしら身体に不調がある場合は、冷えが原因になっていることがほとんどです。病気ではないかもしれませんが、病気の一歩手前の未病と呼ばれる状態です。そのままにしていると、次第に悪化し、深刻な病気を招く可能性があります。
不調の改善はもちろん、予防の視点からも普段の生活に温活を取り入れてみてください」
【予防の視点で取り入れたい!日常をより健康的に過ごすための4つの温活習慣】
執筆/平野絵梨香
No.00136