セクシャルウェルネス

セックスと幸せホルモンの関係。2種類のセックスとは?

性行為の際に女性が感じる気持ちよさは、単に性感帯への刺激だけでなく、分泌される幸せホルモンの影響も受けています。

女性のセクシュアルウェルネスの充実を目指して多方面で活躍している産婦人科医 宮本亜希子先生は、「どの幸せホルモンが多く分泌されるかによって、セックスの種類を分けて考えることができます」と話します。

セックスと幸せホルモンの相関性

セックスと幸せホルモンの相関性

「女性が心から気持ちいいと感じる性行為には、幸せホルモンの存在が欠かせません。なかでも、二大幸せホルモンと言えるのが、オキシトシンとドーパミンです。

人間は誕生した際、母親に抱っこされた時にオキシトシンが分泌されており、その気持ちよさは生涯を通して残り続けると考えられています。それが、愛情ホルモンと呼ばれて理由でもあります。私たちは大人になっても、その触れ合いの気持ちよさ、心地よさを求めています。主に、恋人や家族など信頼関係がある人とのスキンシップ、ペットとの触れ合いなどによって分泌されます。また、エステやマッサージなどのリラクゼーション施術によっても分泌されることもわかっています。

そして、ドーパミンは、快感ホルモンや報酬系ホルモンとも呼ばれ、脳が快感や満足感を覚えた時に分泌されています。ギャンブルで勝つ、おいしいものを食べる、性行為でオーガズムを得るなど、強く気持ちよさを感じた時、または、それが期待できそうな時に分泌されています。やる気を高める、気持ちを満たすなど、感情や思考、心の動きにも大きく関わっています」(宮本亜希子先生・以下同)

1.心も身体も溶け合うオキシトシン系

1.心も身体も溶け合うオキシトシン系

「オキシトシンは、心を許している相手、愛情を感じられる相手との触れ合いで分泌される幸せホルモン。性行為の際にオキシトシンを活性化するためには、相手との関係性が何よりも重要になります。

きちんと関係性がある相手との性行為は、オーガズムを得ることがそこまで重要ではなく、お互いの肌を合わせる、優しく抱き合うだけでも満足感が高いです。そう感じるのは、オキシトシンがたくさん分泌されているから。自分と相手との境がわからなくなる心も身体も溶け合うような感覚、快感の海に深く潜るような感覚になることもあると思います。私は、ダイブ系、フュージョン系の性行為と呼ぶこともあります。

さらに嬉しいことに、オキシトシンの影響もあって多幸感ある状況では、幸せホルモンの一種であるセロトニンも分泌されます。セロトニンはいい睡眠へと導くメラトニンとも関係していますので、気持ちいい性行為の後によく眠れるのはそのため。実は、しっかりと科学的な理由があります!

反対に、関係性が築けていない相手に触られた場合、快感どころか不快になり、大きなストレスにつながります」

2.強い刺激と快感に溺れるドーパミン系

2.強い刺激と快感に溺れるドーパミン系

「もう1種類のドーパミン系と呼ばれる性行為は、簡潔に言うと、脳が興奮状態になっています。相手との関係性はあまり重要ではなく、行為そのものに興奮することでドーパミンが分泌されている状態。ある意味、コントロール系の性行為であり、オキシトシン系とは真逆のタイプになります。

いわゆるフェチと呼ばれる、好みのシチュエーション、好みのパーツを持っている相手との行為、行為そのものを重視するタイプになります。性行為をスポーツだと捉えている場合は、まさにドーパミン系に当たります。性行為が性欲に紐づいている、相手への支配欲を満たすためにあることも考えられるため、男性ホルモンであるテストステロンとも関係していると考えます。

自分の性欲やフェチに基づいて性行為を楽しむことは、悪いことではありません。大切なのは、両者がしっかりと同意していること。同意のもと行われる性行為は、いいも悪いもないというのが私の考えです。

ただし、ドーパミンは快楽物質のため中毒性があります。そのため分泌バランスが重要です。もし、過剰分泌されてしまうと飽きてしまい、物足りないと感じやすくなります。同じ刺激だとよりその傾向が強くなりますので、多少の変化を加えながら楽しんでください」

お互いの同意のもとで楽しむ

オキシトシン系、ドーパミン系、どちらの快感にも幸せホルモンが大きく関わっています。

宮本先生は、「どちらがいい悪いではなく、自分はどちらが好きなのか知っておくことが大切です。いつもはオキシトシン系だけど、たまにはドーパミン系を楽しみたいとミックススタイルもありです。誰とどのような性行為をしようとも、自分も相手も心から同意をして楽しめるということが一番大切!」と、繰り返しお話されていたのが印象的でした。

その時の自分の欲求や気持ちに耳を傾けながら、性行為を楽しんでいきたいですね。

執筆/瀬戸ゆずき

No.00178
2025年7月24日リリース

宮本亜希子先生

一般婦人科、性のお悩み、婦人科美容など女性の美や健康に関わるさまざまな分野に専門知識を持つ。婦人科保険診療のみならず、性教育や子宮頚がんに関する知識の普及、女性の生活の質向上にも力を注ぎ、また腟ヒアルロン酸や婦人科形成手術を行い、美容婦人科指導医としても活躍。“産婦人科医が行うフェムテック医療”として、フェムゾーン美容外来も行っている。AVプロダクション『Mine's』顧問医師・『Medytox』社腟ヒアルロン酸注入認定指導医(世界初)・日本女性医学会更年期指導士・女性医療クリニック『LUNA』『BIANCA CLINIC』『スワンクリニック銀座』勤務。3児の母でもある。