女性の体と悩み

腟の健康状態を左右する? 腟内の菌、腟内フローラとは

腸内には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌と分類されるさまざまな菌が存在しています。その菌のバランスが腸内環境を左右するため、食事や生活習慣を通して整えていくこと、いわゆる腸活が大切です。

実は、腟内も腸内と同じように菌が存在し、腟内の環境を作っています。腟の健康状態にも影響を与えているという腟内の菌について、産婦人科医、東京大学産婦人科 准教授である原田美由紀先生に教えていただきました。

腟内は善玉菌が優勢な状態にする

ヘルスケアと健康的な栄養

腟内には、腸内と同じようなたくさんの菌が存在しており、群がっている状態から膣内細菌叢(ちつないさいきんそう)と呼ばれています。それがお花畑のように見えることから、腟内フローラとも表現されます。

腸内には多種多様な菌が存在しているとしたら、腟内はそのほとんどが、デーデルライン桿菌(かんきん)をはじめとした乳酸菌が占めていきます。この乳酸菌を筆頭にした善玉菌と呼ばれる菌の働きによって、悪玉菌の侵入を防ぎ、腟内は弱酸性に保たれます。まさに、腟内フローラが整っている状態。

一方、大腸菌やカンジダ菌などの悪玉菌が繁殖している場合は、腟内フローラが乱れています。そうなると、おりものが変化し、嫌なニオイやかゆみなどの症状が起きてきます。このように菌は腟の健康状態に影響しているため、腟内は善玉菌が優勢な状態を保っておくことが大切です。

腟内フローラが乱れると細菌性腟症になりやすい

腟内フローラが乱れることでもっともよく見られる症状は、細菌性腟症です。腟内に存在する菌のバランスが崩れ、悪玉菌が優勢な状態になったことによって引き起こります。

細菌性腟症の自覚症状
□おりものが魚臭い
□おりものの色が灰色になる
□おりものに粘度がなく、サラサラしている
□おりものの量が急に増えた

このような自覚症状が現れることがあります。細菌性腟症が生殖機能に与える影響はまだまだ研究途中ではありますが、早産や着床障害などの関連が疑われていますので、自覚症状がある場合は速やかに婦人科を受診しましょう。

ただし、細菌性腟症は自覚症状がないこともあります。自覚症状ないからといって必ずしも大丈夫というわけではありませんので、婦人科検診や日々のセルフケアを通して自分の健康状態に意識を向けていきましょう。

自分の健康に意識を向ける

ヨガをしているスポーツウェアの健康的な女性

婦人科検診やセルフケアを行うことは、自分の健康に意識を向けることにつながります。そうすることで、「最近、経血の量が増えたかも」「生理痛が重たくなった」「おりものの状態がおかしい」と、変化に気がつきやすくなり、「いつもと様子が違うから病院へ行こう」と、初期の段階で対処できる可能性が高まります。

もしかしたら、「なんか違和感があるけど、生活に支障がないから」と、小さな事柄に対しては対処せず、そのままにしてしまうことがあるかもしれません。でも、病気が隠れている可能性がゼロではないため、自分自身で判断するのは避けましょう。ちょっとした違和感が大事にならないためにも、自分の健康状態に意識を向けて、きちんと対処していくことが重要です。

セルフケアでは、デリケートゾーンをケアする

腟内フローラを整えようと思うと、「腟内にアプローチしたほうがいい」と考えがちですが、セルフケアにおいてはデリケートゾーン(外陰部)をケアしていきましょう。デリケートゾーン専用のウォッシュで洗浄し、保湿するというケアを行うことで、大腸菌やカンジダ菌などの悪玉菌の侵入を防ぐことにつながります。どうしても膣内が気になってセルフケアしたいという場合は、まずは医師に相談することをおすすめします。

そして、正しい知識や情報を得ることもセルフケアの一環です。SNSをはじめ、情報が得やすいこともあり、いい情報にもよくない情報にも触れる機会が多いと思います。その情報が正しいのかどうか、しっかりとソースを確認しながら、見極める力を培っていきましょう。

相談しやすい医師を見つける

インターネットクリニックのイラスト

ただし、セルフケアをしているからOKということではありません。腟内フローラをいい状態に保つという意味でも、自分の健康状態を知るという意味でも、定期検診は受けてください。セルフケアと定期検診はセットで行いましょう。

定期的に医師とコミュニケーションをとることは、変化が起きた時に相談しやすくなると思います。また、「セルフケアとして取り入れてみたいけど大丈夫かな……」と、不安を感じることもあると思いますので、そんな時にも気楽に相談できるよう、かかりつけ医を見つけておくと安心です。

執筆/木川誠子

No.00040

産婦人科医 原田美由紀先生

東京大学産婦人科 准教授。東京大学医学部附属病院の体外受精診療実施責任者ならびに生殖医療・良性疾患チームの病棟医長として不妊診療、内視鏡手術に携わる。さらには、『卵巣機能に着目したプレコンセプションケア』をライフワークとし、研究活動も行い、メディアなどでも積極的に発信している。