更年期を迎えると、骨粗しょう症のリスクが高まると言われていますが、そもそも骨密度のピークは20歳前後であることはご存知ですか?つまり、20歳を過ぎると、それまでに獲得した骨密度を維持していくことが重要になります。
医療法人財団小畑会 浜田病院理事長であり、産婦人科専門医の山村菜実先生は、「更年期を迎えると骨粗しょう症のリスクが高まることが広く知られるようになったことで、女性ホルモンの影響が話題になりがちですが、骨密度にはビタミンDの存在も重要です」と話します。
【女性ホルモンの変化と骨の関係は?骨粗しょう症の対策は健康的な生活習慣】
ビタミンDと骨の関係
「美白・美肌の意識が高まるとともに、日焼けをしたくない、シミを作りたくないと、1年中紫外線対策をしている人が増えています。そのため、ビタミンD不足が問題視されています。
ビタミンと聞くと肌のためという印象がありますが、ビタミンDは骨の健康に欠かせない栄養素です」(山村菜実先生・以下同)
ビタミンDの主な役割
●カルシウムの吸収を促す
「体内のカルシウムの約99%が骨に存在しているくらい、骨の主成分はカルシウムです。ビタミンDが小腸でカルシウムの吸収をサポートしていることで、骨の形成と強化につながっています。そのため、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収率が下がり、骨密度が減少していきます」
●骨の代謝調整をしている
「血中のカルシウム濃度が低下するとビタミンDが活性化されて、骨からカルシウムを動員。そのおかげで、骨の形成と吸収のバランスが保たれています」
●筋肉、免疫機能などにも影響している
「ビタミンDは、骨のほかに筋肉や免疫などにも影響を与えています。
具体的には、筋肉細胞にも作用していることから、筋力の維持にも貢献しています。ビタミンDの不足は、筋力低下につながり、転倒や骨折のリスクを高めてしまいます。そして、健康維持に欠かせない免疫機能においては、過剰な炎症の抑制、病原体への防御力の強化などにビタミンDが影響しているとされています」
ビタミンDの摂取+骨を意識した健康習慣
「骨の健康には、栄養素のバランスが重要です。例えば、骨の主成分であるカルシウムを摂取しても、ビタミンDが不足していると吸収されないため、ほとんど意味がありません。そのようなことにならないように、骨の健康に必要なビタミンDを日常的に摂取することを心掛けましょう」
●ビタミンDが摂取できる食品
「鮭やサバなどの魚、きのこ類、卵黄にはビタミンDが含まれています。特に、魚はカルシウムの摂取も可能なので、積極的に取り入れたい食品です。
そして、ビタミンD強化食品として、マルチビタミンやビタミンD単体のサプリメントも有効。食事での摂取をメインにしつつ、サプリメントで補うイメージです」
●日光浴でビタミンDを生成
「1日15~30分間、日光を浴びるだけでもビタミンDは生成されます。どうしても日焼けが気になるという場合は、メラニン組織が少ない手のひらに日光を当ててください」
●ウォーキングなどで骨を刺激する
「健康維持において適度な運動は欠かせませんが、骨の健康を重視する場合は、骨に刺激が伝わる運動、具体的にはウォーキングや縄跳びなどがおすすめです。同じ運動でも、水泳や自転車などは心拍機能向上向きになりますので、骨密度の維持には効果が弱いとされています。
運動習慣がない場合は日常生活の中でも行える方法として、意識的に階段を利用してください」
更年期を迎えたら骨密度検査を
「今ある骨密度を維持するためには、いわゆる規則正しい生活習慣がベースになります。例えば、喫煙習慣、過度な飲酒は骨密度を下げることにつながりますし、睡眠不足やストレス過多も骨の健康には悪影響です。さらに、適正体重も必要になります。痩せすぎている場合は、骨への刺激が少なくなるうえ、ホルモンバランスも崩れやすくなることから骨密度が低下しやすくなります。
規則正しい生活習慣を心掛けながら、更年期を迎えた女性は健康診断の一環として骨密度検査を加えることをおすすめします。特に閉経後は骨粗しょう症のリスクがぐっと高まるため、1~2年ごとの定期的な骨密度検査が推奨されています。
浜田病院では専用の器機に仰向けになり、腰の背骨と付け根部分を測定する『DXA法』での検査を行っています。痛みはなく、約10分で終了する内容です。このほかにも、超音波を用いてかかとの骨で調べる方法や、手のひらをX腺撮影して人差し指の骨とアルミニウムの濃度を比較し、骨密度を測定するタイプなどがあります。
定期的に検査を行うことで、異常があれば、栄養療法や薬物治療などの早期対応が可能になります。骨の健康を意識した生活習慣と定期的な骨密度検査を組み合わせながら、今ある骨密度を維持していきましょう」
執筆/木川誠子
No.00171
2025年6月6日リリース