キャリアと女性の健康

女性ホルモンの変化と骨の関係は?骨粗しょう症の対策は健康的な生活習慣

「更年期を迎えると骨粗しょう症に注意!」と言われたりしますが、それは女性ホルモンのひとつ、エストロゲンの分泌量が減少することと関係しているからなのでしょうか?女性ホルモンと骨の関係性をはじめ、骨粗しょう症ついて、『白金高輪海老根ウィメンズクリニック』院長の海老根真由美先生に教えていただきます。

骨密度は20歳前後にピークを迎える

健康な骨と脆い骨のキャラクター

骨粗しょう症の話をするうえで重要になるのは骨密度です。骨密度とは、骨を構成するミネラルが骨にどれくらい詰まっているのかを、骨の単位面積当たりの骨量として算出したもの。骨の強さを表す指標のひとつです。

その骨密度が獲得できるのは、20歳前後までと言われており、それまでの食生活をはじめとする健康習慣が鍵を握っています。偏りのない食事をし、カルシウムやビタミンDを摂取。日光にあたりながら、ウォーキングなどの荷重がかかる運動をし、きちんと睡眠をとることが骨密度の獲得につながります。

20歳前後にピークを迎えると、それ以上にはならないと言われているため、個人差はありますが、骨密度は加齢ともに減少していきます。

現代人は、昔ながらの和食ではなく、欧米スタイルの食事が当たり前になっていることをはじめ、日焼けを避け、太陽にあたらないように過ごす人もいるため、骨密度の基準値を下回る人が増えています。

女性ホルモンと骨の関係性

女性の健康サイクル

「更年期を迎えると骨粗しょう症に注意!」と言われるのは、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが、骨を作る細胞と壊す細胞の働きのバランスを調整する役割を担っているからです。そのため、閉経後にエストロゲンの分泌が減少したことによってそのバランスが崩れ、骨を壊す細胞のほうが強まることで骨粗しょう症になりやすくなります。

日常生活に支障をきたすほど、更年期の症状が強い場合、更年期障害と呼ばれますが、その治療法のひとつとして、エストロゲンを補充するホルモン補充療法があります。その治療法は、骨粗しょう症を予防することにもつながります。

健康的な生活習慣が骨密度に影響する

スポーツ:ウォーキング

20歳前後までは骨密度を増やし、大人になってからは骨密度をキープすることが大切になります。いずれにしても意識したいのは、食事と運動、睡眠の健康習慣です。

【食事】骨の原料となるカルシウムとビタミンDを摂取する
サプリメントで補うことも悪くはありませんし、お菓子を食べても、パンやパスタなどの単品メニュー食べてもお腹を満たすことはできます。ただし、お腹を満たすことと健康になることは別問題です。また、牛乳やヨーグルトだけでは十分なカルシウムを摂取することはできません。

だからこそ、青野菜を筆頭に、さまざまな種類の食材を取り入れることが重要です。30品目を食べるというのは難しくても、例えば、味噌汁に5種類以上の食材を入れて具沢山にするなど、できることから始めてみてください。

バランスよく食べていると思っていても、偏っていることもあります。客観的に判断するためにも、自分が食べた内容を3日間~1週間分書き出してみるのもおすすめです。

【運動】ウォーキングや階段をのぼるなど、骨に荷重がかかる運動をする
以前は、畳に布団を敷いて寝る習慣があったため、布団の上げ下ろしをすることで、しゃがんだり立ったりする動作がありました。最近はベッドで寝ている人も多いので、日常生活の中で荷重がかかる運動が少なくなっています。

そのため、意識的に行う必要があります。ひと駅分歩いてみたり、エスカレーターではなく階段を利用したり、縄跳びをしたり、日常生活の中で取り入れやすい方法で行ってください。

また、太陽にあたることでビタミンDが体内で生成されます。日焼けが気になるかもしれませんが、太陽にあたることも心掛けましょう。

【睡眠】しっかり寝ることで骨の成長と修復が行われる
寝ている間に分泌される成長ホルモンは、骨の成長と修復に影響しています。睡眠時間を確保すること。そして、起きた時にすっきりしているなど、睡眠の質も意識してください。

骨は少しずつ強くなるので地道に向き合う

強い骨のキャラクター

骨の内側は塊になっているのではなく、網目状に形成されていることもあり、一気に強くすることは難しいです。少しずつ強くなっていきますので、先ほどお伝えした健康習慣はコツコツと地道に続けていくことが大切です。

また、骨折はしていなくても、骨密度が低くなり骨が薄くなってくると、痛みとして現れることがあります。「なんか背中が痛い」など、思い当たることがないのに痛みがある場合は、注意してください。骨密度を調べることもできますので、医師に相談してみましょう。

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産婦人科医 海老根真由美先生

白金高輪海老根ウィメンズクリニック 院長。産婦人科医として、埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターで講師及び病棟医長を務める。自身の出産を機に順天堂大学で非常勤准教授となり、その後、白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。日本産科婦人科学会、日本母性衛生学会、日本周産期・新生児学会、周産期メンタルヘルス学会理事。