ウェルネス・疾患ケア

リンパ節の腫れや副乳、毛包炎……ワキが教えてくれる3つのこと

リンパ節の腫れや副乳、毛包炎(もうほうえん)、多汗など、ワキに現れる症状は意外と多いです。ワキには免疫システムを構成するリンパ節があることを考えると重要な部位のひとつと言えるため、健康習慣としてチェックしておきたいところ。

今回は、乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生に、ワキに現れる代表的な3つの症状をはじめ、知識として得ておきたいことを教えていただきました。

ワキには多くのリンパ節がある

「ワキには、腋窩(えきか)リンパ節があります。リンパ節はリンパ管をつなぐ器官で、リンパ液に入り込んだ細菌、ウイルス、がん細胞などの異物をせきとめて排除する働きがあります。つまり、リンパ節は免疫を検問する役割を担っているため全身に配置されていますが、その中でもワキにはより多くのリンパ節が存在しています。

また、ワキの皮膚は薄いうえ、腕を動かすたびに擦れたり、衣類による摩擦が起きたりなど、ダメージを受けやすい部位でもあります。そのため、摩擦を抑えて皮膚を守る役割として体毛が生えています」(フォックス岡本聡子先生・以下同)

ワキが教えてくれること1:皮膚トラブル

皮膚トラブル

「ワキに生える体毛は、ダメージを受けやすい皮膚を守るために存在していますが、脱毛をしている人が多いと思います。その場合、毛がない分清潔さは保ちやすくなる一方で、皮膚トラブルが起きやすいという側面も。

例えば、セルフ脱毛をした際、カミソリなどの脱毛ツールによって大なり小なり傷ができてしまいます。その傷から毛穴に細菌が入ってしまうと炎症を起こし、毛包炎(もうほうえん)・毛嚢炎(もうのうえん)になることがあります。美容脱毛や医療脱毛を含め、脱毛後は炎症が起こらないように鎮静ケアを意識することと、乾燥しやすい状態でもあるので保湿も忘れずに行いましょう。

さらに、ワキの皮膚トラブルのひとつに粉瘤(ふんりゅう)もあります。具体的な原因はわかっていませんが、なにかしらの理由で皮下に袋状のものができ、そこに垢や皮脂などが溜まったもので、赤く腫れる、痛みが出ることも。予防ができない事柄であり、ワキに膨らみができると心配になると思いますので皮膚トラブルのひとつとして知っていてください」

ワキが教えてくれること2:副乳の存在

副乳の存在

「乳房は、通常妊娠9週目になると前胸部に左右ひとつずつを残して消えていきます。ですが、消えずに残る場合があり、通常とは異なる場所に乳頭や乳輪、乳腺組織が存在していると、これを副乳と呼びます。できる場所としては、ワキの下から正常乳頭を通り、太ももの内側までの、ミルクラインと呼ばれる線上に見られることが多いです。残ってしまう原因は具体的にはわかっていませんが、日本人は欧米人に比べて多く見られます。

副乳がある場合は、生理前や妊娠期、授乳期などに気がつきやすいです。女性ホルモンの分泌バランスの影響を受けて痛くなることもありますが、その場合は、該当部分を冷却する方法であるクーリングで対処します。通常、困らない限りはそのままでも問題ありません。ただ、稀ではありますが、副乳の中に乳がんや繊維腺腫などの腫瘍ができることもあります。

また、副乳が気になって取りたいという場合は外科的処置を施すことも可能です」

ワキが教えてくれること3:リンパ節の腫れ

リンパ節の腫れ

「ワキに現れる症状として一番気をつけたいのは、リンパ節の腫れです。その理由は、ワキのリンパ節が腫れる原因で多いのは、乳がんのリンパ節転移だからです。中には、副乳だと思っていたら悪性リンパ腫だったという症例もあります。ワキを触った時に塊を感じたり、ポコッと膨らんだように見えたりする場合には注意が必要です。

そのため、普段から見て触ることを習慣にしつつ、40代以上は2年に1回のペースで乳がん検診を受けましょう。もし、おかしいなと思うことがあった場合は、次の検診時期を待たずにそのタイミングで早めに受診してください。

ワキのリンパ節が腫れていると感じた時は、首筋や鼠径部などのほかのリンパ節も腫れていないかを確認してください。そして、1~2週間程度様子を見ても小さくならない場合は一度受診をおすすめします」

 

ワキの汗やニオイも気になる

ワキの汗やニオイも気になる

代表的な3つの症状以外にも、ワキの汗やニオイについて気になるということもあるのではないでしょうか。脱毛した後は汗をかきやすいと感じることもあると思います。

「そもそもワキには汗腺が多いため、汗をかきやすい部位です。脱毛後は毛がなくなった分、汗を感じやすくなるということだと思いますが、気候や運動による温熱刺激、ストレスや緊張などの精神的な刺激によって発汗が促されます。

汗をかくことは生理現象なので、ある程度許容したうえで日常生活に支障が出る、精神的な負担につながっている場合は、皮膚科などの専門機関に相談することも対策になります。

そして、汗自体は無臭なのですが、皮膚に存在する常在菌や皮脂と混ざり合い分解されることで不快なニオイにつながります」

エチケットとしてデオドラントや制汗剤などを取り入れる場合は、ワキの皮膚が薄いこと、経皮吸収されることも考慮して、肌への負担が少ない成分で構成されたタイプをおすすめします。

執筆/木川誠子

No.00139

フォックス岡本聡子先生

フォックス岡本聡子先生乳腺放射線科医・医学博士

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日本で臨床・研究を経験した後、スタンフォード大学での研究留学を経験。その経験を活かし、乳がんで亡くなる方をひとりでも減らしたいと思い、『Breast awareness』などのコミュニティーを主宰するなど、多角的に活動。さらには、自身の経験をもとに流産や妊よう性の領域でも発信を続けている。
https://satokofox.com/