思春期・青年期

図入りで分かりやすく説明。バスト周辺の名称と役割

身体にある臓器や部位を学ぶことは、自分の身体と向き合う時間となり、自分を深く知ることにつながっていきます。今回は、バスト、胸、おっぱい……と、さまざまな呼称がある胸部の名称と役割についてまとめています。

そして、バストを触る習慣の大切を、日本とアメリカでの研究経験を活かして独自の発信を続ける、乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生に教えていただきました。

“バスト・胸・おっぱい”まわりを知る

バスト・胸・おっぱい

Muscle/大胸筋

大胸筋がバストを支えていると思いがちですが、実はそうではありません。バストを支えているのは、大胸筋や乳腺葉から皮膚につながっているクーパーじん帯です。

下着をつけずに過ごす時間が長い、運動などでバストが揺れる時間が長いと、クーパーじん帯は切れてしまい垂れることにつながります。

Fat/脂肪

乳房の構造は、乳腺組織と脂肪組織からなります。その割合には個人差があり、基本的に若年世代は乳腺組織が多く、年齢を重ねることでその乳腺組織が委縮するため脂肪の割合が増えていきます。

Lodes/乳腺小葉

乳腺組織は15~20の線葉に分かれ、たくさんの小葉に枝分かれしています。そして、小葉には、乳汁(にゅうじゅう/ミルク)を作る役割があります。授乳をする際は、小葉で作られた乳汁が乳管を通って、届けられていきます。

乳汁が作られるのは産後の授乳期だけのイメージがありますが、実は授乳する、しないに関わらず少量は作られています。

Nipple/乳頭

一般的には乳首と呼ばれています。たくさんの神経が集まっているため、敏感な部位です。

Areola/乳輪

乳頭を囲うようにある円形の部分を乳輪と呼びます。乳輪には毛穴とは違う、モンゴメリー線があり、常に皮脂分泌が行われています。

この皮脂は乳輪と乳頭を保護するためにとても重要な存在。思春期は皮脂が過剰に分泌されやすく、乳輪や乳頭が炎症を起こす可能性があります。また、更年期になると分泌量が足りず、乾燥することがありますので保湿を心掛けましょう。

Ducts/乳管

乳腺小葉とつながっていて、作られた乳汁を運ぶ役割があります。

Rib/肋骨

大胸筋の下に肋骨と肋間筋があります。

“バスト・胸・おっぱい”に触る習慣を作ろう

バスト周辺の名称と役割

「乳がんの早期発見にもつながりますので、定期的にバストを触ってください」と話すのは、乳腺放射線科医・医学博士のフォックス岡本聡子先生。

セルフチェックのやり方
●触る
「人差し指、中指の腹の部分で“の”を書くようにくるくると全体を触っていきます。ポイントは、立った状態と仰向けになった状態の両方で行うこと。姿勢が違うと触りやすさが変わってきますので、両方の姿勢で行いましょう」(フォックス岡本聡子先生・以下同)

●つまむ
「乳頭をつまんで、血性分泌物(血液)が出ていないかを確認することも大切なセルフチェックです」

●見る
「見た目に変化が現れることがあります。立った状態で触る時には、鏡の前で見ながら行うことをおすすめします」

“乳腺”とついている科を受診する

“乳腺”とついている科

「自分のバストに触る習慣があると、違和感に気がつきやすくなります。なんかいつもと触った感じが違う、硬いものが触れる気がするなど、気になることが出てきた場合は専門機関を受診してください。

その場合、産婦人科ではなく、乳腺外科や乳腺科など、“乳腺”とついている科を受診しましょう。そして、検査方法にはマンモグラフィーと超音波がありますが、それぞれ得意とする領域が異なりますので、両方の検査をするのが好ましいです」

●マンモグラフィー
「専用のマシーンに乳房を挟んで写真を撮る方法で、石灰化を見るのに優れています。乳房内の乳腺の割合が高いデンスブレストの状態であっても受ける意味はあります」

●超音波
「デンスブレストの状態だと逆に、クリアに検査できるのが超音波です。ただし、脂肪性乳腺の場合は、超音波では評価しにくくなります。

また、精度管理がとても重要で、病院によって管理状況が異なります。クリアに検査ができる分、安心にもつながりますが、“要精密検査”の確率が上がってしまいます」

定期検診とセルフチェックで早期発見を

「私が現在暮らしているアメリカでは、乳がん検診の受診率は約80%です。一方、日本の受診率は40%台です。

まさか私が乳がんになるわけない!
マンモグラフィーが痛すぎて嫌だ……。

このような声を聞きますが、乳がんと診断されるともっと大変な状況になり、より多くの検査を受けることになります。乳がんで最悪のケースにならないためにも、早期発見につなげるためにも、定期検診に行き、普段からバストをセルフチェックする習慣を作りましょう」

 

執筆/木川誠子

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乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生

日本で臨床・研究を経験した後、スタンフォード大学での研究留学を経験。その経験を活かし、乳がんで亡くなる方をひとりでも減らしたいと思い、『Breast awareness』などのコミュニティーを主宰するなど、多角的に活動。さらには、自身の経験をもとに流産や妊よう性の領域でも発信を続けている。