フェムテック・フェムケアに注目が集まって以降、VIO脱毛がトレンド化し、「介護を想定して脱毛しておいたほうがいいの?」「毛が生えているということは意味があるよね?」と、さまざまな声が広がりました。
VIOに限らず、なぜ体毛は全身に生えているのでしょうか?医療法人財団小畑会 浜田病院理事長であり、産婦人科専門医の山村菜実先生に、体毛がある理由、部位ごとに役割の違いがあるのかなどを教えていただきました。
体毛は守る・感じる・アピールするため
「体毛の生え方、量、場所はDNAに組み込まれているとされ、『この場所にはこのくらいの毛が生える』ということは遺伝的に決まっていると言えます。生える場所はだいたい同じでも、濃さや毛の量に個人差があるのはそのためです。
そして、体毛の主な役割は、①体温を保つため ②外敵・外傷から守ることです。さらに、毛の根元には神経が密集しているため、触覚センサーとして働いている側面もあり、例えば、ゴミがつく、虫がとまるなど、身体に何かが触れた時、毛を通して感知できています。
また、体毛の中でも、腕や脚、ワキ、VIOなどの部位は、思春期以降に濃くなっていくイメージがあると思いますが、それは性ホルモンの影響を受けているからです。大人になった証とも言えるため、体毛の変化で性的熟成期を迎えたことを恋愛対象にアピールしています。体毛がフェロモンの伝達役というイメージです」(山村菜実先生・以下同)
部位ごとに見る体毛の役割
●頭髪
「頭部は脳がある重要な部位のため、頭髪が守ってくれています。外傷から守る保護、太陽の光から頭皮を守り、体温調整をサポート、太陽の光による頭皮と脳の過熱を防ぐ役割があります」
●眉毛
「雨やおでこからの汗が目に入らないように、ブロックをしてくれているのが眉毛です。
また、眉毛があることで感情表現が伝わりやすくなるとも言われているので、視覚的なコミュニケーションにも役立っています」
●まつ毛
「ほこりや花粉、汗、虫などの異物が、目に入るのを防ぐためのフィルターのような役割を担っているのがまつ毛です。風が直接的に当たりすぎないように防いでもくれているので、乾燥防止や目のうるおいキープにも役立っています。そして、視線を引くパーツとも考えられていることから、目元や表情の印象にも影響しています。
まつ毛は目を守り、表情や魅力にも影響している重要なパーツ。カラーリングやパーマなどは多少でもダメージがありますので、注意しながら行いましょう」
●鼻毛・耳毛
「どちらにも、まつ毛のようにフィルターの役割があります。鼻毛の場合、ほこりや花粉、病原菌などを体内に入れないようにするほか、吸い込む空気を湿らせたり、温めたりしながら、肺への負担も軽減しています。
耳毛はほこりやゴミ、虫などが、耳の奥に入らないように、異物の侵入を防ぐ役割があります。毛があることである程度の掃除はされていますので、自分自身で掃除する場合は、毎日は行わず2週間~1ヶ月のペースで行いましょう」
●手脚の毛(腕やすねなど)
「役割としては、空気の流れをキャッチする、ゴミや虫などが触れた時にセンサー機能があります。洋服を着る文化になったことで、体毛の退化が顕著にみられるのが、この部位です」
●脇毛
「腕を動かす時の皮膚の擦れを減らす役割として毛が生えています。また、アポクリン腺と呼ばれる汗腺があるため、体毛がフェロモンの拡散をサポートしているとも言われています」
●アンダーヘア
「菌が腟内に入ってしまわないようにバリアの役割をはじめ、歩く時や性行為の際の摩擦を軽減してくれています。
そして、脇毛と同様に、フェロモンの保持と拡散にもかかわっているとされます」
●あご・口まわりの毛
「男性のヒゲにあたり、成熟度や男性ホルモンをアピールしているような役割がありますが、女性の場合はほとんどが産毛です。そのため、主にはあごや口まわりの保湿に役立っていると考えられます。
更年期を迎えると、エストロゲンの分泌量が減少するため、人によっては濃くなってくる可能性があります」
【更年期になると毛が濃くなるって本当?女性ホルモンと体毛の関係】
体毛は生活変化に合わせて退化
「体毛はその時代や環境にあわせて変化しています。特に現代人は洋服を着て暮らすことが当たり前なので、体毛が担ってきた体温調整や外敵からのバリア機能は必要なくなっています。例えば、手脚の指にも多少の毛が生えていると思いますが、ほとんど役割はないとされているのはそのためだと考えられます。
部位によっては、濃さが変化しているように感じることがあるかもしれません。それは、年齢を重ねることで毛根のホルモン感受性が高まり、濃くなっている可能性があります。なかには、今まではなかった、気にならなかった場所の体毛の存在が気になってくることも。
現代においては、美しさのために脱毛をすること、特に頭髪はファッションをより楽しむためにアレンジすることも可能です。その部位の体毛が持つ役割を理解したうえで、美容的にも、ファッション的にも楽しんでください」
執筆/木川誠子
No.00170
2025年5月30日リリース