「生理前になると便秘になる……」と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。たとえ便秘になりやすいのが生理前だけであっても、毎月症状が繰り返されるのはつらいですよね。
そこで今回は、漢方医学、自然医学に基づいた診療を行う『イシハラクリニック』副院長の石原新菜先生に、女性が生理前に便秘になりやすい理由や日常生活に取り入れやすい対策について教えていただきました。
生理前に便秘になるのは女性ホルモンの影響
「一般的に女性は男性と比べて筋力が少なく、便を押し出すための腹圧も弱いため、そもそも便秘になりやすいです。さらに、低体温で身体が冷えている人も多いため、腸の動きが弱くなっている可能性も考えられます。
また、生理前になるとプロゲステロンという女性ホルモンの影響を受けます。
排卵後から生理前にかけて分泌量が増えるプロゲステロンには、腸の平滑筋という筋肉の刺激を感知する力を弱くさせ、便の水分を吸収して硬くしてしまう働きがあります。そのため、便が出にくくなります。
生理が始まるとプロゲステロンの分泌量は減少していくので、自然に便秘は解消されますが、この反動で軟便になってしまう場合もあります」(石原新菜先生・以下同)。
3日間出なければ便秘!排便時の不快感も便秘の症状
「今日食べたものが翌日に便として出るのが基本なので、食事量にもよりますが、1日1~2回の排便があるのが理想です。そのため、3日間を過ぎて排便がない場合は便秘とされています。ただ、3日以上経っていなくても、お腹の張りや残便感、量が少ないといった排便時の不快感があれば、それも便秘の状態と言えます。
また、便秘気味になると便の色が濃くなったり、コロコロした便になったりもしますが、1~2日ほど便が出ていなくても、3日目で出るなど、きちんと排便される日があれば問題ではありません」
便秘の解消には温活が大切
「生活習慣によって便通の状態は変わってきます。食事においては、暴飲暴食をはじめ、ジャンクフードなど、添加物を多く含む食事はNG。納豆や海藻類、きのこといった食物繊維やミネラルを多く含んだ食材を積極的に取り入れるのがおすすめです。
便秘解消のために野菜を食べようとサラダを選ぶ人もいますが、生野菜は身体を冷やす原因になります。温野菜にして食べるようにしましょう」
食生活をはじめ、自分に合った方法でストレスを発散する、しっかり睡眠をとるといった規則正しい生活に加えて、身体を温めることも重要だそう。
「女性は、冷えが原因で腸の動きが弱くなっていることも多いので、身体を温めることを習慣化してほしいです。適度な運動をする、腹巻きをする、シャワーだけで済ませず湯船に浸かる、温かい飲み物を飲む……など、毎日の生活の中に取り入れやすいことから始めてみてください。
そして、飲み物にはショウガを加えるのがおすすめです。ショウガの血行促進作用で、身体を温める効果がより高くなります。ショウガはチューブや粉末のものでもOK!」
【予防の視点で取り入れたい!日常をより健康的に過ごすための4つの温活習慣】
水分で便秘が解消するとは限らない
「便秘の原因は水分不足だからと、便秘解消のためには水をたくさん飲むといいと思っている人もいますが、そうとは限りません。男性やスポーツ選手は体温が高いこともあり、体内の水分が抜けやすいです。だからこそ、水を飲むことで便が柔らかくなり、スムーズな排便が期待できます。
しかし、女性の身体は低体温で冷えやすく、生理前にはむくみやすい状態になります。その状態で水を飲んでも溜め込む一方で、身体をさらに冷やしてしまう可能性があります。
便秘解消の第一歩として水を飲むのはいいですが、飲み続けても便秘が解消されない場合は水分不足が原因ではありません。その場合は、無理のない範囲で食事の内容を変える、身体を温める行動を取り入れてほしいです。ひとりひとり体質も生活習慣も異なるので、自分に合った解消方法を見つけてみてください」
気になる症状がある場合は医療機関に相談する
「便秘の状態があまりに長く続くと、便が硬くなり、ますます排便されにくくなります。その場合は、腸内環境を整える整腸剤や腸の中の水分を集めて便を柔らかくする効果のある酸化マグネシウム便秘薬を頼るのも対策のひとつです。
そして、便秘による身体の不調や気になる症状がある場合は、内科、または消化器内科を受診しましょう。また、婦人科で相談するのもいいと思います。定期検診などで婦人科に行った際、気になることを相談してみてください」
執筆/平野絵梨香
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