2022年12月8日に開催された『フェムテックジャパン2022/フェムケアジャパン2022』内で発表された『フェムテックジャパンアワード2022』。多くの投票によって選ばれた受賞ブランドにインタビューを行いました。
今回は、フェミニンケアソープでGold(金賞)を受賞した、株式会社カペラビューティーの坂本絢子さんが登場!
ブログ内で聞いたらぶっちゃけた悩みがたくさん出てきた
―『フェムテックジャパンアワード2022』Goldの受賞、おめでとうございます!
ありがとうございます!まさかのGoldだったので嬉しかったです。実は、「特別賞はほしい!」と思っていたんですけど、期待以上でした。
『カペラビューティー』のアイテムでは、一番人気は『リフレッシュニング フェミニンミスト』なんですけど、今回受賞した『フェミニンケア ソープ』はレビュー数が爆発的に多いんです。発売してから約1年なのですが、どのアイテムよりもレビューがついています。それくらい使用実感が得られるアイテムなんだと思います。
―『カペラビューティー』を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。
もともと『Ayakoのぶっちゃけ美容会議』というブログを書いていて、美容ブロガーとして活動している中で、フェミニンケアの商品がすごく気になっていました。私自身もデリケートゾーンの悩みが多かったりして、「いいものを使いたい」という想いが強くあったこともあり、自分で作ってみようと。
開発が始まった頃はまだフェムテックという言葉が流行る前で、フェミニンケアのアイテムはほとんどが海外から輸入されたもの。使われている原材料をチェックしてみたら、「私には少し合いにくいかな?」と思うものもあって多くて……。やっぱり日本人には日本人の生活スタイルがあるから、日本人の私が日本人に適したものを考えて、安心して使えるものを作ろうと。せっかくブログというツールがあるから、読者のみなさんに「どういったものが使いたいですか?ぶっちゃけ言ってみて」と聞いてみたんです。
もともと読者さんと交流することをポリシーとして持っていたから、例えばリサーチ会社などに依頼してアンケートを実施するよりブログ内で聞いたほうが、「これは嫌だ」「こんな感じのがほしい」など、ぶっちゃけてくれると思ったんです。雑誌などでもデリケートゾーンにまつわる悩みが紹介されていることもあると思うんですけど、ブログの読者さんに聞いてみたらその内容とはまったく違う答えが出てきました。リアルな話、「自転車に乗る時にサドルにあたってめっちゃ痛いです」とか、そういうことは雑誌では出てこないですよね。
そういうガチな意見を反映して商品化できているのが、『カペラビューティー』の強みです。
作り手がわかるブランドは安心できる
―読者のみなさんがぶっちゃけてくれるのは、坂本さん自身がブログ内で赤裸々なレビューを載せているからなのかなという印象があります。
そうですね。ブログのタイトルが『Ayakoのぶっちゃけ美容会議』なので、「本当にガチレビューします!」というところはあります。
私が書く文章は、雑誌などでライターさんが書くような整った文章ではないです。でも、実はすごくこだわって書いています。私が話しかけている時と同じような感覚で読んでほしくて、「ちょっと聞いてよ」から発信するようにしています。それはブログという媒体だからこそできること。
だけど、『カペラビューティー』がスタートした時は、ブログの読者さんは知ってはいるけど、私自身は出ないようにしたんです。
―それはどうしてですか?
「インフルエンサーが遊びで作った」と思われたくないというのがあって。もともとコスメポーチやメイクブラシを企画する会社でデザイナーをしていました。物作り出身ということもあって、「絶対にいいものじゃないと出したくない!」というこだわりもあったからです。
でも、冷静に考えてみたら、野菜のパッケージにも生産者の顔が載っていて安心材料になっていたりするから、私も顔を出したほうがいいかもしれないって。最近になって、「美容ブログを書いているんです」と言うようになりました。
最初のうちは本当にブログの読者さんだけが買ってくれていたんですけど、メディアに掲載してもらったり、特集してもらったことによって、「Ayakoって誰?」という流れができて、ブログの読者さん以外のお客様も増えてきました。
―美容ブログを書いていらっしゃるので、スキンケアなどのアイテムを開発することもできたと思うのですが、なぜフェミニンケアブランドにしたのですか?
「自分が一番欲しいものが欲しい!」というのは、やっぱりありました。当時は、自分が安心して使える、フェミニンケアのアイテムがなかったんです。正直、スキンケアとかになると、一生懸命探せば自分の好みに合ったものに出会えると思うんですけど、フェムケアにおいては選べるアイテムが少ないから“ずばりな商品”がなかった。
―先程もおっしゃっていましたが、開発を始めた頃はまだフェムテックという言葉が広がる前だから、選べるアイテムも少なかったんですね。
そうですね。2018年の終わりとかに企画がスタートしているので、まだ前です。一番はじめに作ったのは『リフレッシュニング フェミニンミスト』なんですが、当時はミストがほとんどなくて、私が知っているだけでも海外から入ってきた2~3本くらいという状況。だから、「こういうのがほしい!」と思って、ミストを作ろうと思いました。
―自分自身がほしかったというのもそうですが、ブログの読者さんもリサーチする前からほしいと思っているだろう……というのは、なんとなくでも思っていましたか?
思っていました!私自身、仕事が忙しくなるとカンジタになるということがけっこうあって……。本当にきついと思っていたんです。だから、ブログでも「実際のところ、みんなは気になる?私はめっちゃ気になるんだけど」って、ぶっちゃけ美容ブログだからこそ聞けた。聞いてみたらすごく反響がありました。
それまでにもアンケートは取ったことがあったんですけど、正直、フェミニンケアは段違いだった!『カペラビューティー』を作る前にも、企業と組んで商品化をしたことがあったんですが、その時は400~500件くらいしか集まらなかったんです。フェミニンケアについて聞いた時は800件くらい集まりました。800件も集まることはなかなかないから、意外とほしいと思っているんだって。「私もほしいもん。分かる、分かる」という気持ちだったから、フェミニンケアのアイテムを作ろうと。
―カンジタになったり、デリケートゾーンで気になることがあった時はどんな対処、ケアをしていたんですか?
病院に行きましたし、市販のものを取り入れることもありました。ただ、スキンケアにしても、美容医療に頼るとその時は肌がすごくキレイになるけど、毎日ケアしたほうがその威力も続きやすいと思うんです。それはデリケートゾーンにも同じことが言えると思うので、普段からケアしていける商品を作りたいと思ったところもあります。
―坂本さんがケアを取り入れ始めたのはいつ頃からですか?
ちょうどブログで紹介し始めたのも2018年とかだったので、ケアとして取り入れ始めたのもそのタイミングです。その時も紹介すると反響があったから、「意外と悩んでいるんだな……」と。ただ、悩んでいる人の熱量は高いんだけど、スキンケアとは違って、必ずしも取り入れないといけないケアではないという印象はありました。
ビジネスの側面で考えると、ちょっと失敗していると思うこともあるんです。はじめにスキンケアを作っていたほうが、もしかしたらお金は稼げたかもしれないって。でも、自分のやりたいことはそうではない。自分のやりたいことをやるということで考えれば、フェミニンケアのアイテムを作ってよかったと思います。
―ブログの読者さんの声を反映しながら作っている『カペラビューティー』ですが、成分にこだわっていることは大前提として、その他でこだわっているのはどんなところですか?
見た目!パッケージにはこだわっています。もともとデザイナーとして、デザインとイラストを描いていたから、ブログの読者さんも私のイラストが好きで見てくれる方もいらっしゃいます。そういう意味でもパッケージにはこだわりたいなと。
正直に言うと、何万本というロットを積めないから、なかなか完全オリジナルの容器が作れないんです。じゃーどこで差別化するかってなったら、「絶対にイラスト!」という想いがありました。容器がかわいいと使っていてテンションが上がると思うんですけど、だからといって容器にお金をかけすぎると肝心の中身がしょぼくなる。でも私なら、かわいい見た目を自分自身で作り出すことができるんじゃないかなと。
デザインは思いのままに描いてみる
―『カペラビューティー』の世界観は、どんなふうに出来上がったんですか?
実はインスピレーション源があったわけではなくて、アイデアが秒で降りてきて、秒で描くみたいなところがあります。例えば、ブログの読者さんに聞いてみても、「かわいい花柄がいい♪」と言われたりするんですが、「どんな系統の花柄がいいのかな」と悩んじゃって。もちろん参考にはするんですが、最後は私の感覚です。
柄を描く時は、女性らしさを連想させるかなと思って線画のタッチで水彩っぽい感じにしています。柔らかいほうがフェミニンケアとしては雰囲気があるかなと。そういう繊細なイメージは持っています。
―すべての工程に携わっているからこそ、アイデアが降ってくるという感覚なのかなと想像したのですが。
そうですね。『ビューティーケアオイル』は、ホホバと茶葉の成分が入っているので、ちょっと黄色っぽいんです。その色を見た時に、「ゴールド?ゴールドの柄にする?」みたいな。すっきりしている使い心地だから、「すっきりした印象にする?」という感じです。
―ある種の連想ゲームのような?
そうです、そうです。連想していって、「あ、これにしよう!」みたいな。何にも考えずに紙にばーと書いていって、「かわいいからこれとこれにしよう」ということもあったりします。
―パッケージを考える時はブログの読者さんに相談していますか?
相談することはあるんですけど、デザインに関しては意見が割れちゃうんです。
―割れるということはどれもいいということですね。
え、そうですか⁉そういうことですか?それいいですね。嬉しいです(笑)。
―ブログの読者さんとは相互関係が築けているように感じるので、そういうことなのかなと。
そういうことでいうと、レビューはすべてチェックして、すべてに返信しています。「何が気になりますか?」「ここはどうですか?」「好きなところ、嫌なところはなんですか?」と、自分のこだわりだけが強くなりすぎると独りよがりになってしまうので、実際に使っている人の意見はしっかり聞くようにしています。
その内容を基に、「ここをリニューアルしよう」と検討したりしているので、フィードバックを取ることにはこだわっています。
フィードバックが商品の成長につながる
―使っている人に話を聞くことは、当初から予定していたんですか?
はい、したいと思っていました。まだまだ小さい会社なので、他の会社と差別化できることはどこかなと考えた時に、すごく密に付き合っていけることかなと。その分、労力はすごくかかるんですけど、聞いたことが成分選定にも役立ってくるから、商品を作るという意味ではフィードバックはすごく大事。
―いろんな意見が届きそうですが、中でも印象に残っている内容はありますか?
印象に残っているものはけっこうあるんです。それこそ、私のことがすごく好きですという、商品のフィードバックにはなっていないんですが、すごく嬉しいです(笑)。中には、「高いですけど、買いました」とかも。
―「高いです」と言われた時はどう返しているんですか?
「お手頃価格になれるよう頑張りたいと思います」です(笑)。
―なるほど(笑)。成分にこだわればこだわるほど、どうしても……というのはありますよね。
はい、成分はゆずれないので。開発にもお金はかかありますし。
レビューは書くだけではなくて、キャッチボールができることがいいのかなと思っているので、丸1日かかったりする仕事だからすごく大変なんですけど、今後もお客様とのやりとりは続けていきたいです。
―最後に、『カペラビューティー』はどこを目指していますか?
『カペラビューティー』の商品をたくさんの人に知ってもらいたい、たくさんの人に使ってもらいたいという想いはもちろんあります。ただ、私は「フェムテックをトレンドで終わらせるのではなく、社会に根付かせて産業化させたい」という想いがあるんです。
フェムテック関連の商品は、ここ数年でたくさん出てきたけど、『フェムテックジャパン2022/フェムケアジャパン2022』の展示会を見ていても、弊社も含めて「小さなブランドさんが多いのかな?」という印象を受けました。いくつかブースを周って話を聞いてみたんが、みなさん「こういうふうにしたい!」というこだわりを強くお持ちになっていたから、どうにかして協力し合えないかなぁと。
産業化して土台が整わなければモノは売れていかないし、たくさんの人の手元に届けることも難しい。手元に届かなければ、デリケートゾーンの悩みやケアに寄り添い、サポートすることもできないですよね。ひとつひとつの小さな力ではできることに限界があるけど、みんなで集まれば大きな力になり、それが社会に根付くことにつながり、産業化の一歩になると思うんです。
『カペラビューティー』も、『フェムテックジャパン』も、みんなで一緒にやっていけるといいな~と思っています。
カペラビューティー
https://capellabeauty.com/
以上、『Femtech Japan Award 2022』でゴールドを受賞した、カペラビューティー代表取締役 坂本絢子さんへのインタビューをお届けしました。
No.00016