女性の体と悩み

腟内は自浄作用があるためセルフケアは不要?デリケートゾーンと腟ケアの違い

デリケートゾーン(外陰部)をケアする習慣が広がっていく中で、腟ケアの認知も高まっています。それゆえにデリケートゾーンと腟のケアが同じだと思っていませんか?デリケートゾーンと腟は異なる部位であり、ケア方法に大きな違いがあります。

その違いをはじめ、正しくケアするために必要なことを、婦人科と美容を融合させた考え方でフェムキュア施術を提案している、産婦人科医の山村菜実先生に教えていただきます。

デリケートゾーンと腟は場所が違う

デリケートゾーンと腟は場所が違う

「一般的にデリケートゾーンと呼ばれる場所は外陰部を指します。恥丘(ちきゅう)、陰核、大陰唇、小陰唇などが含まれる外性器がある場所が外陰部です。

VIO脱毛を想像するとわかりやすいと思います。Vゾーンは恥丘(ちきゅう)周辺、Iゾーンは大陰唇や小陰唇周辺、Oゾーンは肛門まわりを指し、その場所が外陰部であり、近年ではデリケートゾーンと呼ばれています。臓器ではなく、エリアとしての名称です。

一方、腟はヒダ状の小陰唇に挟まれている腟口から子宮口までを指す生殖器のひとつです。体内にありますので、一般的に言われているデリケートゾーンには含まれていません。ただし、腟はデリケートゾーンよりもさらにデリケートです。その違いを理解したうえで、セルフケアを行うことが大切です」(山村菜実先生・以下同)

 

腟には自浄作用がある

「デリケートゾーンと腟のもっとも大きな違いは、腟には自浄作用(じじょうさよう)があることです。何もしなくても、自らが清浄する能力のことを自浄作用といいます。

腟内にはデーデルライン桿菌(かんきん)などの菌が存在し、分泌液によって酸性に保たれることで細菌などの侵入を防いでいます。それが自浄作用による働きです。つまり、セルフケアをしなくても、適した状態に整える力が腟には備わっています。

また腟は、経血などを体外に排出するための道、出産時には胎児を子宮から母体外へと運び出すための産道になります。性行為の際は、精子を卵子に届けるための役割も担っています」

腟にセルフケアは必要なのか?

腟にセルフケアは必要なのか?

「先ほどもお伝えしたように、腟には自浄作用があるため、基本的にはセルフケアは必要ありません。ただし、食生活の乱れや過度なストレスなどの影響で自浄作用が乱れることがあります。

その場合はおりものに変化が見られます。いつもよりもニオイが強い、臭いと感じる、普段は無色、もしくは乳白色なのに、茶色っぽくなるなどの変化があった場合は、自浄作用が乱れているといえます。また、外陰部にかゆみが起きることもあります。そういう時は、2~3日様子を見て、おりものの変化が戻らない、かゆみが強くなっているなら、婦人科を受診してください。

ニオイやかゆみがあるといつも以上にセルフケアをすることがあると思いますが、やりすぎや正しい知識がないままのケアも自浄作用の乱れにつながります。気になることがある場合は、セルフケアの前に婦人科の受診をおすすめします」

 

デリケートゾーンは適度にケアをする

「一方、デリケートゾーンには、適度なセルフケアが有効です。洗浄して清潔さを保ちつつ、乾燥しないように保湿するのが基本的なケアになります。

特に大陰唇と小陰唇のキワには恥垢(ちこう)といって、尿やおりもの、皮脂、汗などが混ざり合った垢が溜まりやすいです。ニオイやかゆみの原因になりますので、毎日洗浄しましょう。

洗浄する際は、デリケートゾーン用のウォッシュを用いてください。洗う時には泡が腟内に入らないように注意しましょう。もし、出張や旅行先などで専用のウォッシュがない場合は、シャワーを直接あてながら、指の腹でキワをなでるように洗ってください。

そして、洗浄後はデリケートゾーン用のクリームやオイルなどで、しっかり保湿をしましょう。乾燥もトラブルの原因になります」

セルフケアをするための3つの心得

デリケートゾーンと腟ケア

1.正しい知識を得る

「セルフケアには正しい知識が必要です。デリケートゾーンにある外性器について知ること、時には自分の目で確かめることも大切です。

最近は、腟内の美容液もありますが、腟は自分で見ることができない部位です。そして、まだまだ解明されていないこともあり、研究が進められている状況なので、興味本位でのケアはおすすめできません」

2.専用のアイテムを取り入れる

「デリケートゾーンは顔とも、身体とも、肌のpH値が異なりますので、専用のアイテムを用いるのが基本です。最近は、ボディとデリケートゾーンの両方に使用できるアイテムも増えてきていますが、だからといってすべてのボディ用がそうとはかぎりません。パッケージに、『デリケートゾーン用』『デリケートゾーンにも使用できる』などの記載があるかを確認したうえで、取り入れた際に違和感がある場合は使用をやめましょう。

そして、ケアは1日1回が基本です。バスタイムの際に洗浄をし、アウトバスで保湿を行います。もし日中に気になることがある時は、ビデを使用する、デリケートゾーン専用の拭き取りシートなどでケアしましょう」

3.気になることがある場合は婦人科を受診する

「きちんと睡眠をとること、適度に運動すること、栄養バランスを意識した食事といった基本的なことも、デリケートゾーンや腟の健康に必要です。

また、おりものの変化、ニオイやかゆみなど、気になる症状が出てきた際は、婦人科を受診してください」

執筆/木川誠子

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山村菜実先生

山村菜実先生産婦人科専門医・産業医/東京美容クリニック理事長

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東京女子医科大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医・日本抗加齢医学会専門医・日本医師会認定産業医・日本美容皮膚科学会正会員・医療法人財団小畑会理事長。2019年に東京美容クリニックを開設し、2022年から東京美容クリニック表参道本院理事長を務める。婦人科と美容を融合させた”フェムキュア施術“を行い、女性の悩み全てに寄り添う丁寧なカウンセリングにファンが多い。2024年11月上旬に書籍『子宮を愛してあげよう』(現代書林)を上梓予定。
https://tbc.clinic/