東洋医学の考えに基づいて身体を整える施術の鍼やお灸が、女性の健康課題に役立つことはご存じですか? 国家資格を保有する鍼灸師の栗本夏帆さんに、鍼灸と女性の健康課題の関係性について伺いつつ、生理前・生理中の症状の緩和につながるツボについても伝授していただきました。
女性の健康課題に用いられるツボがある
現在、WHO(世界保健機関)によって定められているツボが361カ所あります。その中には、生理痛、月経異常、乳腺症、更年障害など、婦人科系の疾患に用いられるツボも存在しています。肩の凝りが気になった時に揉んだり、押したり、生理痛をある時に下腹をさすったりしたことはありませんか? 実は、それがツボへの働きかけになっています。
未病治の考えが女性の健康課題に活かせる
東洋医学に基づいている鍼灸には、未病治(みびょうち)という考え方があります。未病治とは、病気や不調が起きる前に対策をして健康状態を維持するということです。
例えば、肩や首が凝っているから、腰が痛いから鍼灸院に行くことが多いと思うのですが、未病治の考えでは、肩や首が凝らないように、腰が痛くならないように、日頃から身体を整えるために行くということになります。症状がない時に行動することはなかなかないかもしれませんが、何かあってから行動を起こすのではなく、常に対策をしておくことが理想的だと考えます。
そして、鍼灸の施術で活用するツボは、東洋医学の気の概念であり、生命のエネルギーのことです。気が不足したり、滞ったりするとバランスが崩れて不調が現れます。つまり、なにかしら気になることがある、不調がある場合は気が滞っていると考えます。この気は栄養の通り道である経絡(けいらく)によって全身を巡り、ツボはその経絡に沿って点在しています。なので、ツボを刺激することで気が調整されて流れがスムーズになり、体調が整っていきます。
この未病治の考え方は、さまざまな女性の健康課題にも活かせます。そのひとつが、日々のヘルスケアにツボを活用することです。
生理前から生理中に活用したいツボ3選
◎おへそから指4本分下にある、関元(かんげん)
関元は子宮に近いところにあるツボで、生理前のイライラなどの症状に働きかけてくれます。中指を中心に、人差し指と薬指も添えながら、心地いいと思うくらいの圧で押したり、さすったりしてください。
◎脚の内くるぶしの頂点から指4本分上にある、三陰交(さんいんこう)
三陰交は、生理開始予定日の1週間前から温めておくことで生理痛の緩和につながるツボです。薬局などで手軽に買えるお灸を用いたり、足湯やレッグウォーマーで温めたりするのもおすすめです。
◎手の甲側の親指と人差し指の骨が交わる部分にあるくぼみ部分、合谷(ごうこく)
生理中の症状緩和につながるのが合谷です。親指の腹を使って押したり、グリグリと押し回してみたりしてください。さまざまな不調にアプローチしてくれる万能さがあるツボなので、生理中に限らず、普段から刺激を与えるのもよいです。
ツボは意識して刺激する
「ツボを刺激しましょう」と聞くと、ピンポイントで押すイメージがありますが、必ずしもそういうわけではありません。そもそもツボは、痛いところを押したり、さすったりしたら楽になったという経験の蓄積で、刺激するとさまざまな効果が期待できる場所として確立しています。その歴史は2000年以上!
そのような背景があるため、明確にツボの位置を知らなかったとしても、気になる症状があるところを含めた、その周辺を押してみたり、さすってみたりすることが大切です。そして、ツボを活用する時は、無意識に行うより、意識して行うほうがその効果を得やすくなります。「今、生理痛の緩和につながるツボを刺激している」と、意識しながらケアをしてください。
また、湯船に浸かって全身を温めたり、ペットボトルに入ったホットドリンクや湯たんぽを気になる部分に当ててみたりと、温めることもおすすめです。生理前、生理中の症状緩和をはじめ、身体の巡りが整うことにもつながります。
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