身体にある心臓、胃、腸などの臓器は、それぞれに役割があります。女性の身体にあるクリトリスは、快感を得るための臓器。では、肛門は?
排泄の役割があることは周知の事実ですが、実は、快感を伝達する役割があるそうです。そこで、国家資格を保有し、鍼灸師の視点からフェムテックを発信している栗本夏帆先生に、肛門とオーガズムの関係性を教えていただきます。
肛門は2種類の筋肉に囲まれている
まずは、肛門の構造とその役割について知っていきましょう。
「肛門は、消化管の出口の部分にあたり、排便や排ガスをつかさどっている器官になります。固形便・下痢便・ガスをそれぞれ判別するセンサーも備わっているため、便意を感じることができ、便がもれてしまわないようにきゅっと締めることができます。
その時に働いているのが、肛門にある2種類の筋肉です。内側には、内肛門括約筋(ないこうもんかつやくきん)という筋肉があります。内肛門括約筋は腸の筋肉の一部で、自律神経がコントロールしているため、自分の意志ではなく、自律神経の働きによって肛門を締めています。
もう1種類は、外側にある外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)という筋肉です。脊髄神経で支配されているため、意識して締めたり緩めたりすることができます。例えば、おならが出そうな時に我慢ができるのは、外肛門括約筋のおかげ。
肛門は、内肛門括約筋と外肛門括約筋の2種類の筋肉が協力していることによって調整されています」(栗本先生・以下同)
肛門は快感が脳へと伝わる通り道
では、2種類の筋肉からなる肛門がどのようにオーガズムに影響しているのでしょうか。「肛門は快感を脳へと伝達する役割があります」と、栗本先生は話します。
「オーガズムとは、性行為中に感じる気持ちいい、心地いい状態のより強い快感を指します。具体的に説明しますと、身体的な刺激を受けて気持ちよく、心地よくなっていくと、臓器であるクリトリスがその快感をキャッチアップします。そして、その快感が脳に伝わることで筋収縮が8~12回ほど起こっている状態です。
大切なのは、身体的な刺激による気持ちよさ、心地よさが脳に伝わること。身体と脳の両方に刺激と快感が伝わることでオーガズムが起こりますが、脳へと伝わっていく過程で肛門を経由しています。
女性は、クリトリスで快感をキャッチすると、骨盤で収縮が起こり腟と肛門で、男性の場合は肛門だけで感知されて脳へと伝達されます」
【オーガズムは脳からの指令で起きていた?性の健康において大切な感覚】
肛門を鍛える、ケアすることも大事
「肛門は、デリケートゾーン(外陰部)からお尻のほうに向かって、腟→会陰(個人差はありますが長さは約3cm程度)の隣にあります。消化管の最後に位置する開口部なので、基本的な役割は便やガスを排出するための場所。そのため、肛門自体が快感を得ているわけではなく、通り道になっているイメージです。そして、オーガズムが起きている時は肛門の筋肉も収縮していると言われているため、快感を広げてくれる役割を担っているとも言えます。
ただし、肛門にある2種類の筋肉は、加齢や生活習慣の影響を受けて衰えていきます。肛門の外側にある外肛門括約筋は、自分の意志で動かせるので、鍛えることを意識するのも大切。衰えてしまうと排出作業に影響が出てきますので、日々の生活の中で無理なく行える方法で鍛えていきましょう。例えば、信号待ちなどで立ち止まっている時に、肛門をキュッと締めるだけでも有効です。
また、デリケートゾーン(外陰部)と同様に、肛門も清潔さを保ち、乾燥しないように保湿することも大切です。トレイレットペーパーで拭きすぎてしまうと皮膚を傷つけてしまい、細菌が繁殖しやすい状況につながります。トイレットペーパーでは適度に拭き取りつつ、気になる場合はデリケートゾーン(外陰部)用の拭き取りシートなどを活用するなどして、摩擦が起きないように気をつけましょう」
知識を得ることは身体への理解を深める
臓器についての知識を深めることも、自分の身体を知ることにつながります。オーガズムがどうように起きているか、肛門が快感とどう関係しているかを知ることもそのひとつです。
そして、自分が気持ちいい、心地いいと感じる状態を知っていってください。正しい知識や情報はそのサポートになります。パートナーとのコミュニケーションにも役立ちますので、活用しながらセクシャルウェルネスに向き合っていきましょう。
執筆/木川誠子
No.00133