女性の体と悩み

オーガズムは脳からの指令で起きていた?性の健康において大切な感覚

フェムテックのムーブメントが拡大するとともに、セクシャルウェルネス=性の健康について知る機会が増えてきました。その中でも、オーガズムはキーワードのひとつ。

もしかしたら、オーガズムという言葉を知っていても、その構造を知っている人は少ないのかもしれません。そこで、女性の健康課題の啓発活動にも取り組んでいる、鍼灸師・温活士の栗本夏帆さんに、オーガズムの仕組みについて教えてもらいました。

オーガズムは脳からの指令で起きている

頭と心を抱える女性

オーガズムとは性的行為の中で起こる快感のことで、日本語に訳すと性的興奮の頂点となりますが、具体的にはどういうことなのでしょうか。

「医学的には、骨盤周りの筋肉に収縮が起きている状態です。女性はクリトリスで快感を得ると、骨盤で収縮が起きて膣や肛門で感知され、脳に伝わります。そして、脳で指令が出されることで、身体全体が心地いい状態に包まれるのがオーガズムとされています」(栗本さん・以下同)

この筋肉の収縮が神経への刺激となり、血液の流れを一気に解放、全身の細胞が活性化し、心地よさをもたらすのだとか。

「感覚としては、身体と心が共に機能し、突然内側から解き放たれるような感じ、と表現する人もいます」

痙攣したり呼吸が荒くなったり、心臓の動きが早まったり、さまざまな身体の反応があるそうですが、女性のオーガズムについては、まだ完全に解明されていないことも多いようです。

女性のオーガズムの仕組みとは?

「まず、オーガズムには男女差があり、男性に比べて、女性のオーガズムは到達に時間がかかるということがわかっています」と栗本さん。

「具体的には、男性は10〜12分、女性は16〜18分と言われています。また女性の場合、身体的な刺激だけではなく、気持ちの昂りや雰囲気など、複合的な要素による影響が大きいと 言われています」

つまり、女性がオーガズムを迎えるためには、心と身体へのアプローチが必要だということ。その仕組みを理解していれば、パートナーとのスキンシップもより深めることにつながります。

例えば、自分自身の”心地いい状態”をパートナーに伝えて、より充実したふたりの時間を作ってみてください。触れ方や時間のかけ方、プレジャートイを取り入れるなど、その時の自分自身とパートナーの状態や気分に合わせて向き合うことも大切です。

オーガズムは積極的に感じたほうが良い?

カップル関係の男女

女性のオーガズムの構造と仕組みについてわかってきましたが、オーガズムは積極的に感じたほうがいいのでしょうか?

「オーガズムを感じると全身がリラックスして、幸せホルモンが分泌されます。すると、自律神経が整い、血流が活性化され、肌ツヤがよくなったり、気持ちが前向きになったり、さまざまなメリットをもたらします。だから、セクシャルウェルネスの視点からはとても大切なことなのです。

オーガズムは身体の欲求を満たすということにフォーカスされがちですが、実は、ストレス解消や美肌効果、エイジングケアなど、さまざまなメリットがあります。そのことを知ると、オーガズムを前向きにとらえることができると思います」

自分の身体の心の欲求に向き合うには?

幸せな女性

性欲が高まるのは、パートナー不在の寂しさや、セックスレスに対するうしろめたさなど、孤独な時に感じるネガティブな気持ちを悩みとして捉えられがちですが、「性欲は三大欲求のひとつなので、感じるのは健康だからです」と栗本さん。

「性欲は、眠いという睡眠欲、お腹がすいたという食欲と同じで、気持ちからくるものではなく脳からの司令によって感じているものです。だから、性欲を感じるのは健康である証拠」

性欲は、健康を維持していくために本能が求める食欲や睡眠欲などと同じ、当たり前の生理現象。その反面、「オーガズムを感じにくい」という声も……。そのような場合はどう向き合っていけばいいでしょうか?

「オーガズムにこだわる必要はありません。ただ、オーガズムの構造や仕組みを知ることで、自分自身の気持ちや感覚にもっと関心を持つことができれば、パートナーとのコミュニケーションや、自分自身の身体との向き合い方も変わってくるはずです」と栗本さん。

オーガズムとは何であるか。その正体を知っていれば、その先に自分がどう受け止めるかの選択肢が広がっていきます。それは、より健全で充実した暮らしにつながること。

まずはオーガズムについての知識を得て、自分自身の心と身体、そしてパートナーと向き合ってみてください。

執筆/岩田香菜子

No.00063

グラン治療院統括院長 栗本夏帆先生

グラン治療院の統括院長。国家資格を保有する鍼灸師として活動しながら、『一般社団法人 日本温活協会』の温活士としても活躍。女性限定の膣サロンを立ち上げるなど、勉強会や啓もう活動にも励んでいる。