ウェルネス・疾患ケア

乳がんの早期発見につながる!乳房を意識した生活習慣のすすめ

フェムテック・フェムケア領域のイベントや活動がますます活発化しています。乳がんへの意識を高め、乳がんの早期発見・早期治療の大切さを伝えていくためピンクリボン運動(毎年10月が推進月間)もそのひとつ。

そして、近年では、ブレスト・アウェアネス=乳房を意識する生活習慣がうたわれるようになりました。現在、アメリカで暮らす、乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生も啓発活動を行っているひとりです。なぜ、乳房を意識する生活習慣が必要なのか、その理由を教えていただきます。

日本は乳がん検診の受診率が低い

日本は乳がん検診の受診率が低い

「日本では、2000年から乳がん検診が始まっています。その目的は、乳がんでの死亡率を下げるためです。ですが、死亡率の変化が見られないだけでなく、微妙に上がってきているという実情があります。

一方、欧米は日本よりも早くから乳がん検診を始めていますが、その数年後から着実に死亡率は下がっています。この違いは、検診率も一因と考えられています」(フォックス岡本聡子先生・以下同)

厚生労働省が公表している『がん検診の国際比較 乳がん検診(※1)』を見てみると、日本の受診率は44.6%。そして、受診率はリストアップされている国の中でもっとも低いことがわかります。その理由として、「意識の低さや医療保険制度の違いが関係していると思いますが、自己触診もあまり普及していません」と、フォックス岡本聡子先生は話します。

乳がん検診と自己触診へのハードル

乳がん検診と自己触診へのハードル

「日本の乳がん検診の受診率の低さには、その重要性に対する理解が広まっていないことによる意識の低さが大きな要因だと考えられます。検診がめんどう、痛いから行きたくない、症状がないから必要がないなどと考えている場合も、意識の低さと言えます。

そして、自己触診を難しいと感じている人も一定数いらっしゃいます。私自身も多くの患者さんと向き合う中で感じてきました。正しくできているのかがわかなくてやめてしまうケースもあれば、そもそも難しくてできないという場合も。

この心理的なハードルの裏には、しこりがあったらどうしよう、しこりがあっても見つけられるかわかならいなど、何か異常を見つるための行為だと思っているからではないでしょうか。乳がん検診と自己触診は、健康を確認するためのものです。万が一、がんが見つかったとして、早期発見は治療の選択肢を広げ、生存率を高めます。

そのためには、正しく行うことにとらわれるよりも、日常的にバストに触れる、見る機会を作ることのほうが大事。ブレスト・アウェアネス=乳房を意識した生活習慣とは、自分のバストの正常な状態を知っておくという考え方です」

 

今からできる乳房を意識した生活習慣

今からできる乳房を意識した生活習慣

ブレスト・アウェアネスには、①いつもの乳房の状態を知る ②乳房の変化に気がつける ③変化に気がついたらすぐに受診する ④40歳になったら、乳がん検診を2年ごとに受けることが必要だと言われています。乳がん検診には行くことを前提にしつつ、まずは、いつもの乳房の状態を知ることから始めていきましょう。

1.身体を手で洗う

「自己触診のためにバストを触ることに抵抗感を持つこともあると思いますが、毎日のバスタイムで身体を洗う時にボディタオルなどを用いている場合は、手で洗ってみてください。

洗う目的でバストやワキを触ることができるので、心理的ハードルは低くなると思います」

2.ボディやバストクリームで保湿する

「お風呂上りなど、身体の保湿を行う時間もバストチェックができるタイミングです。首やデコルテ、腕を保湿したら、その流れでバストも保湿しましょう。保湿ケアの一環で、自己触診をしているイメージです」

3.下着を身につける際は鏡の前で

「乳がんの症状として、見た目に変化が現れることがありますので、見ることも大切なセルフチェックです。下着を身につける時は鏡の前で行い、見た目に変化がないか確認することも習慣にしていきましょう」

乳がん検診で健康を確かめる

「乳房を意識した生活習慣を身につけると、違和感に気がつきやすくなります。触った感じがいつもと違う、硬いものがある気がするなど、なんとなくでも、そんな気がするでも、なにかしらの変化を感じた時は、次の乳がん検診を待たず、専門機関を受診しましょう。

もちろん、何の変化がなくても定期的な乳がん検診は必要です。先ほどもお話ししたいように、乳がん検診は健康を確かめるためであり、乳がんの早期発見と早期治療を叶えるためでもあります。

乳房を意識した生活習慣は今からできます。日頃から意識していきましょう」

※1 https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001132584.pdf

執筆/木川誠子

No.00156
2025年1月17日リリース

フォックス岡本聡子先生

フォックス岡本聡子先生乳腺放射線科医・医学博士

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日本で臨床・研究を経験した後、スタンフォード大学での研究留学を経験。現在は”病院では行き届かないサポートを新しいカタチで”をモットーに、画像診断のほか、専門の乳がんや自身が悩んだ流産や妊孕性の情報発信を行なっている。カリフォルニアで暮らす。
https://satokofox.com/