ウェルネス・疾患ケア

乳がんのセルフチェックが難しい!しこりって何?乳腺専門ドクターがポイントを伝授

近年、乳房を意識する生活習慣という意味を持つ、ブレスト・アウェアネスの考えが広がりを見せています。その理由は、がんの中でも女性は乳がんの罹患率が高く、9人に1人の確率です。そして、自分で乳房を触ることで「乳がんかも?」と気がつく場合があり、日頃からのセルフチェックの大切さがうたわれています。

大切だとはわかっていても、「セルフチェックのやり方がわからない」「やってみたけど難しい」「そもそもしこりは触ってわかるの?」など、乳がんのセルフチェックに疑問がある人もいるのではないでしょうか。そこで、乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生に乳がんの症状とセルフチェックのポイントを教えていただきました。

乳がんは乳腺組織にできるがん

乳がんは乳腺組織にできるがん

「乳がんは乳腺の組織にでき、その多くは乳管から発生しますが、なかには小葉、乳腺以外の乳房の組織からということもあります。進行してしまうと、周りの組織を壊しながらがん細胞が増殖し、血液やリンパ液の流れなどに乗って転移が始まります。

いずれのがんも早期発見が重要です。乳がんの場合は、定期検診に加えて日々のセルフチェックが早期発見につながります」(フォックス岡本聡子先生・以下同)

乳がんの可能性があるしこりの特徴

「乳がんの主な症状として気がつきやすいのは、乳房のしこりです。検診の際のマンモグラフィやエコーで発見されることもありますが、セルフチェックをした時、身体を洗う時など、自分で触った時に気づくケースも。

一概にしこりといっても、他の病気の可能性や異常がないケースもあります。ただし、乳がんのしこりの場合は、いくつか特徴があります」

乳がんのしこりの特徴
1.こりっ、ごりっとした硬さがある
2.表面がデコボコしている
3.周囲の組織に癒着しているためあまり動かない

「しこり以外にも、乳房にくぼみができる、乳頭(乳首)・乳輪がただれる、左右の乳房の形が非対称になる、乳頭から分泌物が出るなどの変化が起こる場合もありますので注意してください。

また、痛みがあると思っている人もいると思いますが、基本的にはありません。だからこそ、乳房全体を触って確かめることが必要になります」

セルフチェックのタイミングと頻度

「生理前など、乳房が張っている時期はしこりがわかりにくくなるため、生理が終わってから1週間後を目安に、月に1回のペースで行いましょう。

閉経を迎えた場合は、時期はいつでも問題ありません。月1回はチェックしていただきたいので、忘れないようにセルフチェック日を決めておくことをおすすめします」

5つのチェック方法とチェック項目

5つのチェック方法とチェック項目

1.上半身裸の状態で鏡の前で行う

「お風呂に入る前、入った後や着替えを行う時などに、上半身裸の状態で鏡の前に立ちます。両手を上げ、正面、側面、斜めの角度それぞれで乳房と乳頭の状態をチェックします」

チェック項目

□乳房の表面のへこみの有無
□皮膚が引っ張られている感じがないか
□左右の乳房の形や大きさの変化の有無
□乳頭のへこみの有無
□乳頭、乳輪のただれ有無

2.お風呂で身体を洗う時に触る

「触って確かめることも必要です。身体を洗うタイミングで、ながらチェックを行うと心理的ハードルが下がって実施しやすくなると思います。

その時は、ボディソープを手に取り、人差し指・中指の腹の部分を中心に、“の”を書くように乳房全体を触ります。そして、鎖骨周辺、アンダーバスト部分、ワキの下も同じように行いましょう」

チェック項目
□しりこの有無
□リンパ節の腫れの有無
□皮膚が熱っぽくないか

3.寝ころんだ状態でのチェック

「立った状態と寝ころんだ状態では乳房の状態と触れやすい部分が異なりますので、両方行うことをおすすめしています。

確認方法は立った状態と同じです。仰向けに寝て、すべりをよくするためにボディクリームを手に取ります。人差し指・中指の腹の部分を中心に、“の”を書くように乳房全体を触っていきます。鎖骨周辺、アンダーバスト部分、ワキの下も忘れずに。

衣類を着ている場合は、衣類の下から手を入れて直接肌に触れながら行いましょう」

チェック項目
□しりこの有無
□リンパ節の腫れの有無
□皮膚が熱っぽくないか

4.乳頭・乳輪を確認する

「乳がんの症状として、乳頭・乳輪のただれ、乳頭から分泌物が出ることがあります。そのため、乳頭・乳輪の定期的に確認しましょう。

まず、皮膚がただれていないか、ひきつっていないか、左右で高さの違いはないかなど、見た目を確認します。次に、乳頭を軽くつまんで分泌物が出ないかを確かめてください」

チェック項目
□皮膚のただれの有無
□極端なへこみがないか
□皮膚がひきつっていないか
□左右で乳頭の高さに違いがないか
□乳頭の向きの変化の有無
□乳頭からの分泌物の有無
□乳輪の凹凸の有無
□乳輪の色の変化の有無

5. ブラジャーが汚れていないかを確認

「ブラジャーの内側、乳頭が当たる部分に汚れがある場合は、分泌物が出ている可能性があります。もし汚れていた場合は、乳頭に変化がないかを確認しましょう。色素沈着による汚れの可能性もありますが、念のため……の気持ちで行ってください」

チェック項目
□ブラジャーの汚れの有無
□乳頭からの分泌物の有無

セルフチェックと定期検診はどちらも大事

セルフチェックと定期検診はどちらも大事

「自治体からの検診クーポンは40代を迎えると届くようになるため、乳がんは40代以降が当事者というイメージがあるかもしれません。ですが、若い世代も罹患の可能性はあります。そのため、セルフチェックは年齢に関わらず習慣化が大切ですし、40代以降は2年に1回のペースで定期検診を受けていただきたいです。

そして、セルフチェックをするなかで、変化や異変を感じた時は、すぐに乳腺科外来やブレストクリニックを受診してください」

 

執筆/木川誠子

No.00165
2025年4月18日リリース

フォックス岡本聡子先生

フォックス岡本聡子先生乳腺放射線科医・医学博士

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日本で臨床・研究を経験した後、スタンフォード大学での研究留学を経験。現在は”病院では行き届かないサポートを新しいカタチで”をモットーに、画像診断のほか、専門の乳がんや自身が悩んだ流産や妊孕性の情報発信を行なっている。カリフォルニアで暮らす。
https://satokofox.com/