セクシャルウェルネス

親子で知りたい避妊と性感染症予防

“おうち性教育”の中で子どもに伝えたいこととして、避妊や性感染症予防があります。大事なことだからこそ、伝え方に悩むこともあるのではないでしょうか。

そこで、性・妊娠・出産で悩む人を減らしたいと情報を発信している『淀川キリスト教病院』産婦人科の柴田綾子先生に、親から子どもに伝えていく避妊と性感染症予防についてお伺いしました。

約22%が、15歳までに初めての性行為を経験

約22%が15歳

「子ども支援などを行う『日本財団』が、17~19歳の1000人を対象に実施したアンケート調査によると、初めての性行為の経験年齢は、15歳以下と回答した割合が22.2%。具体的に見ていくと、15歳(10.3%)がもっとも多く、14歳(5.9%)、12歳(3%)、13歳(3%)と続きます。

日本の学校教育では、中学の時点で具体的な避妊を伝えないことが多いため、避妊と性感染症予防については家庭内で親が伝えていくことがとても重要です。

伝えるタイミングとしては、初めての生理が来る=妊娠する身体になる10~14歳(平均12歳)の頃を目安にするのがいいと思います。男の子の場合もその年頃がいいでしょう」(柴田綾子先生・以下同)

 

世界における避妊方法と日本の現状

避妊と性感染症予防

「世界で実施されている避妊方法には、ピル、不妊手術、子宮内避妊用具、注射法、インプラント(皮下埋没法)、避妊シールなどがあります。国や地域によって認可されている方法は異なりますが、欧米では平均約20~30%が低用量ピルで、もっとも多い避妊方法です。

しかし日本では、コンドームが避妊法の70%以上を占めています。コンドームは男性主体であり、低用量ピルや子宮内避妊具など女性主体の避妊方法があまり普及していないのが日本の現状です。もしかすると、避妊方法としてコンドームがベストだと思って選んでいるのではなく、その他の選択肢を知らない可能性も考えられます」

コンドームは、あくまで性感染症予防

「アメリカのCDC(疾病予防管理センター)では、ダブルプロテクト(2重の予防)と言って、男性がコンドーム、女性が低用量ピルなど、双方が避妊具を使用することでより安全な性行為ができるとしています。それは、コンドームは性感染症を防ぐため、低用量ピルは確実な避妊のためと、それぞれ担う役割が異なるからです。

忘れしまいがちなのですが、避妊に効果の高い低用量ピルや子宮内避妊用具では、性感染症を防ぐことはできません。そして、コンドームだけでも、避妊には不十分です。コンドームは意外にも取り扱いが難しく、爪で破れてしまうこともありますし、正しく装着しないと腟内で抜けてしまうこともあります。

安全な性行為のためには、性感染症を防ぐ男性コンドームの使用と女性側も避妊を行うダブルプロテクトをおすすめします」

 

女性主体の避妊のハードル

女性主体の避妊

ダブルプロテクトが一番おすすめという一方で、「日本では女性主体の避妊方法に少しハードルがあります」と柴田先生は言います。

「海外では若年者は低用量ピルが無料で受け取れる国もありますが、日本で必ず処方が必要です。そのため産婦人科などを受診し、1ヶ月約1000~3000円の費用がかかります。この状況は学生などには少しハードルが高いと思います。

同じようにアフターピルと呼ばれる緊急避妊薬も、海外では薬局等で購入できる国が多い一方で、日本では産婦人科などへの受診と処方が必要です。オンライン診療や一部のドラッグストア(全国145の薬局で試験販売中)でも購入可能ですが、年齢制限などの条件が設けられています。

このような現状から、日本で避妊方法はコンドームが主流になっているといえます」

 

避妊・性感染症予防の方法をきちんと伝える

性感染症予防
コンドーム……日本では避妊具として認識されていますが、性感染症予防のためにも性行為をする際には使用しましょう。

女性主体の避妊法(どちらも医師の問診等が必要)
低用量ピル……生理管理の目的でも使用されますが、1日1錠服用することで90%以上の避妊効果があります。

子宮内避妊具……内診台で子宮内に挿入することで約5年間継続して避妊効果が持続します。ホルモンを放出する子宮内避妊具(ミレーナR)では、生理の出血量を減らす効果もあります。

もしものための緊急避妊法
緊急避妊薬(アフターピル)……避妊に失敗した時などの緊急時に、性行為から72時間以内に服用することで85%の確率で妊娠を避けることができます。もしもの時のために緊急避妊薬があることを知っておくと安心です。

「コンドームの使用と女性主体の避妊法のダブルプロテクトをお願いしたいのですが、女性主体の避妊は費用や受診など、さまざまな面からすぐに実行できないかもしれません。それでも、女性が自分でできる確実な避妊方法があることを知っておくことは大切です。

“おうち性教育”の中で、性感染症予防といろいろな避妊法について、ぜひ親子で確認してみてください」

執筆/松岡真生

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柴田綾子先生

柴田綾子先生産婦人科医/淀川キリスト教病院産婦人科医長

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世界遺産15か国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。院内に留まらず各地で後進教育に携わるほか、性・妊娠・出産に悩む人を減らしたいと、一般向けにも情報発信を行う。