女性の体と悩み

ピルは避妊、生理コントロール、病気の予防につながる薬。ピルの役割をきちんと知る

女性の健康課題を考えるうえで、ピルの効用が大きなサポートになることはご存じですか?実はピルには、生理をコントロールする役割や婦人科系の病気の予防にもつながる側面があるのです。

ピルの正しい知識を得ると、健康管理に役立てることができます。そこで、ピルのオンライン診察サービス『スマルナ』と連携する医師である、『さくま診療所』院長の佐久間航先生に、ピルの基礎知識を教えてもらいました。

※ここでいうピルは【低用量ピル】を指しています。

ピルは生理をコントロールしやすくする

ピルという薬をひと言で表現するとホルモン剤です。エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類の女性ホルモンが配合されており、主に①排卵を抑制 ②子宮内膜の増殖を抑制 ③女性ホルモンのバランスを一定に整える役割があります。

具体的には、ピルの服用によって身体の中に女性ホルモンが入ります。そうすると血中濃度が上がり、「体内には十分な女性ホルモンがある」と認識され、卵巣がお休みモードになります。卵巣は排卵を繰り返しており、そのたびに2種類の女性ホルモンを分泌しています。その働きを休ませるというのが、ピルの根本的な役割です。

それに加えて、生理にまつわる症状の有無や程度は個人差がありますが、痛みが伴ったり、身体がしんどくなったりすることがあると思います。そのような生理にまつわる症状を極力減らす目的でも、ピルの服用がメリットになります。

例えば、生理前症候群であるPMSの症状は、排卵に伴う女性ホルモンの変化で起こるとされています。ピルの服用によってホルモン量が安定し、大きな変動が起きなくなることで症状の緩和につながります。また、生理周期を把握しやすくなる、旅行などの予定に合わせて生理日を調整することも可能なため、このような視点からも生理をコントロールできるといえます。

排卵を抑えて身体の負担を軽減する

体に悩みのある女性

ピルの服用によって生理をコントロールすることは、身体の負担の軽減にもつながります。

約1ヶ月に1度のペースで生理が起こるということは、単純に計算して1年に約12回。その都度、排卵が起きていると考えると、卵巣は常に働いている状態です。そして、子宮が収縮することによって分厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちるため、生理が起こるたびに子宮も働いていることになります。それは臓器、さらには身体全体にも負担がかかっており、婦人科系の病気のリスクも高まります。

繰り返しになりますが、ピルの服用は卵巣や子宮にお休みを与えるというイメージです。

生理をコントロールするためにピルを服用するという視点を持つと、生理にまつわるお悩みや不調の緩和、婦人科系の病気の予防。さらには、QOL(生活の質)を高めてくれることにもつながります。

ピルには避妊の役割もある

ピルに避妊の役割があることを知っている人は多いと思います。

避妊法としてはコンドームが広く知られていますが、こちらは男性主体の方法だとしたら、ピルは女性主体の方法です。自分を守るという意味でも、避妊法の選択肢のひとつとしてピルがあることを知っておくと、いざという時にアクセスしやすくなります。

たとえ、避妊目的でピルを服用し始めたとしても、生理をコントロールすることは可能でし、その逆も同じです。つまり、どちらを主体にした場合でも、ピルの効用を得ることはできますので、目的に合わせて取り入れることが大切です。

ピルの服用の前に血栓症のリスクも知っておく

ケガをしている女性

ピルを服用する前には、血栓症のリスクを理解しておくことも重要です。血栓症の“栓”とは血管が固まったもので、その栓で血管が詰まる病気のこと。

ピルには女性ホルモン、つまりエストロゲンが含まれており、血管を若く保つことや骨の健康維持などいい働きがある一方で血栓症のリスクが高まります。医師が診断、処方をすることでそのリスクは下がっていますが、大きくふたつの症状がある場合は処方が難しいと判断されることがあります。

1. 目がチカチカしたり、まぶしく感じたりした後に頭痛が起こる、前兆がある偏頭痛がある
2. 35歳以上で1日15本以上タバコを吸っている

また、BMI値(身長と体重から肥満度を示す値)が30を越えている場合や年齢が40歳以上の場合は、血栓症以外の病気のリスクが高まるため、ピル以外の選択肢の検討をおすすめします。

一概にピルといっても、配合されている女性ホルモンの量をはじめ、エストロゲンを含む、含まないタイプなど、さまざまな種類があります。まずは医師に相談。医療機関への受診が難しい場合は、オンライン診療を活用するなどして、自分に合ったタイプを探してみてください。

予防医学の視点からもピルは有用

現代の女性は、生涯の生理回数が増えています。子宮内膜症や子宮筋腫は生理回数によってリスクが高まる病気なので、ピルでコントロールするという考えを持つのは、予防医学の観点からもいいことだと思います。そのためにも、きちんとピルの知識を得たうえで、正しく服用しましょう。

>>>ピルの服用方法や種類と特徴もチェックする

執筆/木川誠子

No.00036

さくま診療所院長 佐久間航先生

さくま診療所 院長。大阪医科大学付属病院、高槻赤十字病院、佐野伊川谷病院、岸和田徳州会病院などで、不育症、更年期、漢方、骨粗しょう症外来を受け持つ。その経験を活かし、『さくま診療所』を開院し、一般的な婦人科の相談をはじめ、内科疾患、各種健康診断を行う。