2022年4月から不妊治療の保険適用がスタートし、東京都では卵子凍結にまつわる助成制度が実施されるなど、フェムテック領域である妊孕性(にんようせい)にまつわる取り組みは活発化しています。その妊孕性には生殖機能が関係していますが、女性と男性では違いがあります。
そこで、その違いについて、ご自身も妊孕性について悩まれた経験がある、乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生にお話を伺いました。
【卵子も年をとる!?妊娠するための力って何?】
次世代に子孫を残すための機能
「生殖機能とは、女性は卵巣で卵子を、男性は精巣で精子といった生殖細胞を生成し、妊娠や胎児の発育も含めて、次世代に子孫の残すための身体の機能を指します。
また、生殖機能はホルモンによって、性成熟、月経周期、排卵、性ホルモンの生成などが調整されています。その場合は、女性はエストロゲンやプロゲステロン、男性はテストステロンに影響を受けます」(フォックス岡本聡子先生・以下同)
卵子の数は決まっている
「女性の主な生殖器は、卵巣、卵管、子宮、腟です。卵巣で生成された卵子が排卵され、卵管采(らんかんさい)で取り込まれます。そこから、卵管の一部分である卵管膨大部(らんかんぼうだいぶ)で精子と出会い受精卵となると、卵管を通って子宮に着床します。そして、出産の際には腟が産道となり分娩が行われます。
そして、卵子の総数は生まれた時に決まっており、成長過程で新たに作られることはありません。はじめての生理を迎えると、女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンとプロゲステロンの影響を受けながら、生理周期にあわせて左右にある卵巣のどちらかから卵子が1個排卵されます。妊娠や授乳期間を除き、基本的には閉経を迎えるまでは毎月排卵が起こります。
また、妊娠・出産を行うための機能があるのも、女性の生殖機能だけです」
【図入りで分かりやすく説明。女性器の名称と役割】
精子は継続的に生成される
「男性の主な生殖器は、精巣、精管、前立腺、陰茎です。精子は精巣で生成され、精管を通って、射精時に前立腺液と混ざり精液として排出されます。
男性の生殖機能は男性ホルモンのテストステロンに影響を受けていますが、分泌は比較的安定していると言われており、周期的な変動はほとんどありません。そして、生まれた時に数が決まっている卵子とは異なり、精子は継続的に作られています。これは、性別による大きな違いです。具体的には、成熟するまでには約74日かかるとされていますが、精巣内では常に新しい精子が約1~2億個生成されているとされています」
【男性の生殖機能の名称とその役割。図解で分かりやすく説明】
生殖可能な期間は男女で異なる
「生物学的に見た生殖機能とは、次世代に子孫の残すための身体の機能です。その意味においては、女性は閉経を迎えるとその役割から卒業となります。男性の場合は、継続的に精子は生成されますので、理論上ではシニア世代を迎えても生殖能力はあると言えます。
ただし、男女ともに生殖機能は加齢の影響を受けます。『Human ReproductionVol.17』で発表された『女性側の年齢別妊娠率の変化』のデータによると、19~26歳までは50%ある妊娠率が、27~34歳では40%に。35~39歳では30%を下回る結果になっています。
男性の生殖機能も加齢の影響を受けますので、35歳以上になると精子の質や運動性が低下すること報告されており、不妊や流産の確率が上がっていきます」
定期検診は今からできる準備
「生殖機能は、男女ともに加齢の影響を受けることを考えると、今が大丈夫でも将来も問題ないとは限りません。タイミングが遅ければ遅いほど、妊娠・出産は難しくなるのが実情です。いつか子どもを持ちたいと考えているならなおさら、女性と男性それぞれの生殖機能について理解をし、今からできることは実践していきましょう。今から動く、早めに動くという意識を持つことが大切です。
例えば、将来の妊娠に向けた準備として、健康診断や婦人科健診を定期的に受診することは必要です。すでに、具体的に子どもを望んでいる場合は、男女ともに生殖機能を検査することも選択肢のひとつとしておすすめします。
生殖検査は、生殖機能に問題があるかどうかを確認するために行われます。もし不妊の原因があった場合でも、特定されることで適切な治療を素早く行うことができるため、妊娠の成功率を向上させることにつながります」
執筆/木川誠子
No.00142