妊活・不妊・妊よう性

卵子も年をとる!?妊娠するための力って何?

女性の健康課題への意識が高まる中で、妊孕性(にんようせい)という言葉を目にする機会が増えてきました。妊孕性とは、“妊娠するための力”のことです。

その妊孕性について、オンラインピルサービスを展開する『mederi』が実施したユーザーアンケート(※)によると、83%以上の人が知りたいと回答していました。
ユーザーアンケート

そこで、ご自身も悩まれた経験があるという、乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生に、妊孕性の基本的な知識や日常生活の中で意識した事柄などを教えていただきます。

一生分の卵子は胎児期に作られる

妊娠するための力って何?

「妊孕性は妊娠するための力のことなので、女性にも男性にも関係のある事柄です。妊孕性と聞くと、女性視点で語られることが多い印象がありますが、男性は精子の個数や運動能力などが妊孕性の項目として挙げられます」(フォックス岡本聡子先生・以下同)

それではなぜ、女性を軸にして語られることが多いのでしょうか。そこには、精子とは異なる卵子の特性にありました。

「生殖機能は、性別にかかわらず加齢の影響を受けやすいです。ただ、女性の場合は、受精後8週以後から出産までの期間である胎児期に一生分の卵子の数が作られ、加齢の影響を受けますし、個数も減っていきます。一方、精子は加齢の影響は受けながらも、80日周期で新しく作られていきます。

このことから、加齢による影響をより受けやすいのは女性と言えるため、妊孕性については女性視点で展開されることが多くなります」

妊娠・出産に適している身体も必要

「妊孕性だけを考えると、若ければ若いほど妊娠に最適なのでは……と思うかもしれませんが、妊娠するための力とあわせて、妊娠・出産に適した身体についても考える必要があります。

妊娠・出産に伴う合併症が生じる確率から考えると、一般的には年齢とともに高くなりますが、若すぎることも逆にリスクです。出産には、女性ホルモンのバランスが安定し、子宮がしっかりと育っていることが大切になります。妊孕性、妊娠・出産に適した身体の両方を加味すると、20代から30代前半が適しているとされています」

年齢と共に変化する自然妊娠の確率

年齢と共に変化する自然妊娠の確率

妊孕性と関係のある自然妊娠の確率も気になるのではないでしょうか。自然妊娠とは、排卵周期にあわせて性行為を行い、卵子と精子が受精し、子宮内に着床することをいいます。また、妊娠に至るまで過程が正常だと自然妊娠となります。

『M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition』の研究データによると、健康や生殖機能に問題がないふたりが排卵日付近に性交渉を行った場合、1周期(生理周期)あたりの自然妊娠率は20~25%と算出されています。ただし、年齢によってその確率は変化します。

1周期あたりの年代別妊娠確率

●20代 約25~30%
●30代前半 約25~30%
●30代後半 約18%
●40代前半 約5%
●45歳 約1%

20代から30代前半までは一定の確率を保っていますが、35歳を超えると一気に下がり、40代での自然妊娠は確率的にも難しくなります。さらに、上記と同じ条件で性行為を行った場合、1年以内に妊娠する確率は、20代前半と後半でも10%近くの違いがあり、30代にも同じことが言えます。妊娠・出産に適しているとされている世代にも確率の差が出てくるのが実情です。

1年間避妊しないで性交渉をした場合の年代別妊娠確率

●20~24歳 86%
●25~29歳 78%
●30~34歳 63%
●35~39歳 52%
●40~44歳 36%
●45~49歳 5%

「年齢を重ねていくと妊娠確率は下がっていき、流産や染色体異常の確率は上がっていきます。妊娠・出産はどうしてもリミットがあることなので、自然妊娠にこだわりすぎず、早めに専門機関へ相談することをおすすめします。そして、必要な知識をきちんと身につけておくことも大事です」

性行為はパートナーシップのひとつ
性行為はパートナーシップのひとつ

現代は高齢出産のケースが増えています。そんな中で、不妊治療の保険適用や東京都では卵子凍結の助成が始まるなど、さまざまなサポートが拡張。ですが、フォックス岡本聡子先生は、「性行為はパートナーシップであり、日頃の関係性が大事であることを忘れないでください」と話します。

「妊娠を望んでいる場合は、性行為が妊活のためであり、ある種の任務になりがちですが、毎月排卵日付近のみの性行為は自分自身もパートナーもストレスを抱えやすくなります。

男性の場合、副交感神経が優位の状態、つまりリラックスした状態で勃起が起こります。そして、性行為を行う中で徐々に交感神経が優位になることで射精が起こるとされているので、メンタルの状態はとても重要です。

性行為はパートナーシップのひとつでもあるので、妊娠するための作業ではなく、自分たちが楽しめる、心地いいと感じることも大切。また、日頃からスキンシップや会話でのコミュニケーションも心掛けてみてください。そのうえで、妊孕性について知っておくこと、妊娠・出産、さらにはその先にある子育てのことを考えたうえでライフプランをイメージしていきましょう。そして、妊娠・出産にはリミットがあることなので、自然妊娠にこだわりすぎず、早めに専門機関に相談することをおすすめします」


調査テーマ:妊孕力・AMHに関する意識調査
対象人数:N=370人
調査対象:25~35歳のメデリピルユーザー
調査期間:2023年10月24日~10月26日
調査方法:アンケートフォームを用いたインターネット調査
mederi調べ

執筆/木川誠子

No.00121

乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生

日本で臨床・研究を経験した後、スタンフォード大学での研究留学を経験。その経験を活かし、乳がんで亡くなる方をひとりでも減らしたいと思い、『Breast awareness』などのコミュニティーを主宰するなど、多角的に活動。さらには、自身の経験をもとに流産や妊よう性の領域でも発信を続けている。