フェムテックの広がりとともに、セックスレスの話題に触れる機会も増えてきました。25年前からセクシュアルカウンセリングを行う心理カウンセラーの潮英子さんは、「セックスレスには、それ以外の原因が隠れていることが多いです」と話します。
日常生活に潜むセックスレスになってしまう原因とはどんなことなのでしょうか?セックスレスとの向き合い方や解決策についても教えていただきました。
多数派になると悩みにはならない⁉
「セックスレという言葉が出てきたのは、1990年代です。その頃は、『東京ラブストーリー』(1991年/フジテレビ)が放映されていた影響もあって、女性が「セックスしたい」と言ってもいいという風潮も出てきました。実は、セックスレスの話題は、ドラマや芸能人の発言などの影響を受けやすい傾向にあります。
1990年代当時のアンケート調査などから判断すると、セックスレスで悩んでいた方は日本全国で約35%です。その後徐々に増えていき、2015年頃に50%を超えると「悩んでいる人が多数派なら、セックスレスはおかしなことではない」と、肯定する心理が働きます。それは、セックスレスについて悩んでいる、悩んでいないではなく、“悩まないこと”にしたという人が増えたという印象です。
実際に、約25年前からセクシュアルカウンセリングを行っていますが、2001年以降増加傾向にあった相談件数が2015年頃には減少しました」(潮英子さん・以下同)
潜在的な不満がセックスレスにつながっている
「セックスレスのカップルは、普段からスキンシップがない。さらには、会話によるコミュニケーションが少ない場合があります。まずは、会話を意識するところからがセックスレスとの向き合い方であり、解決策にもなります。
そして、セックスレスになる要因は性に関する考え方の相違ではなく、日常生活で感じている、例えば「パートナーは家事や子育てを手伝ってくれない」などの不満がセックスに転嫁されているケースが多いです。この場合は何に不満を思っているのかを掘り起こしていくことが重要になりますので、たとえセックスと直接関係がなかったとしても、そこに解決の糸口があることもあります。そのうえで、パートナーとの会話を重ねてください」
また、男女の性差によってセックスレスにつながる可能性もあるそうです。女性の場合はホルモンバランスの影響が多いとか。
「女性の場合は更年期になると女性ホルモンの分泌が下がっていきます。そのホルモンバランスの変化によって、男性ホルモンの影響を受けやすくなるため、性欲を掻き立てられると感じる人もいます。それはおかしいことではありません。そのことを自分自身が理解をし、パートナーに共有することも大切です。
男性の場合は、セックスレスであっても、なくても、自分で処理を行います。「私とはしないのに自分で処理するなんて……」と思ってしまうかもしれませんが、セルフプレジャーは性行為とは別物です。愛情があるとセックスはするものだと考えるのも女性特有の傾向なので、愛情とセックスは切り離して考えることも重要です」
セックスレスの解消には会話とスキンシップが鍵!
では、セックスレスを解消したいと思った時、何を意識するのがいいのでしょうか。セックスレスの期間が長いと解決できないのかも……という考えが出てきてしまうことも。
「確かに、セックスレスは早い段階で手を打たないと改善することが難しくなります。相談者の中には、セックスレス歴が10年、20年と長期に及んでいるケースもあるのですが、その場合、「セックスはないもの」だとパートナーが思い込んでしまっている可能性が高いです。たとえ勇気を出して話しても、「いまさらなんだよ」と言われてしまうことも考えられます。
セックスレスになり、解消したいと思っているのなら、対処が早ければ早いほど改善できる可能性が高まります。セックスレスになって1~2年のうちに、長くても5年以内が目安です」
早期解決がいいとわかっていても、セックスレスのパートナーを誘うことは、心理的な面も、状況的にもハードルが高くなってしまいます。その場合は、「日常的なスキンシップから意識して見てください」と、潮さんは教えてくれました。
「セックスレスに至るまでの間には、手をつなぐ、ハグやキスをするといったスキンシップがなくなっている可能性が高いです。そもそもスキンシップレスのふたりがセックスをするということは、さらにハードルが高くなってしまうので、まずはスキンシップから始めてみてください。
中には、会話が少ないというカップルもいるかもしれません。その場合は、「会社でこんなことがあったんだ」と、たわいない会話を意識してみましょう。
言葉によるコミュニケーションとスキンシップによるコミュニケーションの両輪で考えることが、セックスレスの解決につながります」
執筆/木川誠子
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