幸せホルモンのセロトニンは、不安やストレスを緩和し、精神を安定させてくれる働きがあると言われています。“安定ホルモン”と呼ばれているほど、心の安定を保つためには欠かせない存在なのですが、女性は男性と比べるとセロトニンの分泌量が少なく、さらに、生理前にはその分泌量が少なくなってしまうそうです。
セロトニンと生理周期の関係をはじめ、セロトニンの分泌を促す生活習慣などを、鍼灸師・温活士の栗本夏帆さんに教えてもらいました。
生理前はエストロゲンも、セロトニンも減少
「生理前になるとイライラしやすかったり、落ち込みやすかったりと、気持ちの沈みを感じる人も多いのではないでしょうか。生理前は、心身の安定をもたらしてくれたり、肌にうるおいを与えてくれたりする女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減り、プロゲステロンの分泌が増えることで心身ともに嬉しくない症状が現れやすくなります。
また、安定ホルモンという呼び名を持つ幸せホルモンのセロトニンはエストロゲンの分泌を比例しているところがあります。そのため、生理前になるとセロトニンの分泌量も減少してしまうので、どうしても精神面が不安定になりやすいです」(栗本夏帆さん・以下同)
【産婦人科医が伝授!女性ホルモンのバランスの変化と上手に付き合う6つのポイント】
セロトニンの90%は腸で作られている
「女性ホルモンとも関係している幸せホルモンのセロトニンは、アミノ酸の一種であるトリプトファンという物質から腸内で合成されています。実は、約90%のセロトニンが腸内で作られていることがわかっています。
そして、トリプトファンからセロトニンを合成する際にはビタミンB6が必須。つまり、セロトニンを分泌させるためには、トリプトファンとビタミンB6といった栄養素も欠かせない存在です」
セロトニンを分泌させるための5つの習慣
1.トリプトファンとビタミンB6を意識する
「トリプトファンとビタミンB6は、セロトニンの合成に必要不可欠な栄養素です。中でも、トリプトファンは体内で生成されないため、食事から摂取する必要があります」
トリプトファンを豊富に含む代表的な食材
●大豆などの豆製品
●乳製品
ビタミンB6を豊富に含む代表的な食材
●玄米
●レバー
●マグロやカツオなどの赤魚
2.日光浴をする
「太陽の光を浴びることで、セロトニンを分泌している“セロトニン神経”が刺激されます。1日15~30分を目安に太陽の光を浴びて、セロトニンの分泌を促しましょう」
3.リズミカルな運動を心掛ける
「一定のリズムで行う運動は、セロトニンの分泌を高めてくれます。ダンベルを使って筋肉に負荷をかけるようなハードな運動よりは、ウォーキングやランニングのほうが適しています。そして、運動をする際は太陽の光を浴びながら行うとよりグッドです」
4.しっかり噛んで食べる
「咀嚼することもリズミカルな行動のひとつになるので、セロトニン神経の刺激につながります。特に、朝の時間帯でセロトニンの分泌を増やすことは1日を豊かに過ごすことにつながりますので、朝ごはんを食べることは有効的です」
5.ツボを意識しながらお腹周りを温める
「セロトニンは腸で作られていること。そして、生理前や生理中の腹痛、腰痛予防するという視点からも、お腹周りを温めておくことは大切。
お腹には骨盤内の血液循環向上につながる、関元(かんげん)や中極(ちゅうきょく)というツボがあります。ツボはピンポイントではなく、お腹や腰全体を温める形でも問題ありません。腹巻やカイロなどアイテムを取り入れながら、温めてください」
【鍼灸師が教える、生理前・生理中の症状に働きかけるツボ3選】
ホルモンの影響であることを知って、対策する
「生理前になると精神面が不安定になりやすいのは、自分自身の性質や性格によるものなのかな……と思ってしまうことがあるかもしれませんが、プロゲステロンやセロトニンといったホルモンバランスの変動による影響が大きいです。そもそも女性は、男性に比べるとセロトニンの分泌量が少ないと言われていますので、そのことを知っておくだけでも心の安定につながるのではないでしょうか。
そして、日々の生活の中でセロトニンを分泌させることを意識して、取り入れやすい行動習慣から実践してみてください」
【PMSや生理痛対策にも有効だった!?セロトニン・オキシトシン・ドーパミンの幸せホルモンは心のセルフケア】
執筆/木川誠子
No.00094