メンタルヘルス

更年期症状に性差はない?更年期とその症状の性別による違いと共通点

閉経を迎える頃に現れる更年期症状。ホットフラッシュやイライラ、身体のだるさなど、不快な症状はQOL(生活の質)を下げることにつながります。これまで女性に起こるという印象が強かったですが、実は男性にも更年期症状が起こることをご存知でしょうか。生殖を司る身体機能の衰えは、性別による違いはほとんどないようです。

今回は、男性医学のエキスパートであり、順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科 教授でもある辻村晃先生のお話を交えながら、更年期やその症状にまつわる男女の共通点や違いを見ていきましょう。

女性と男性の更年期には定義の違いがある

女性と男性の更年期

女性は50歳前後で迎える閉経に向けて、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌バランスが不安定になるため、その前後10年を更年期と呼び、その期間に症状が現れるとされています。男性の場合も男性ホルモン(テストステロン)の分泌が減少することで更年期症状が起こりますが、女性とは異なり年齢に関係なく起こるのが特徴です。

「男性ホルモンは20歳をピークに減っていくため、早い人では30代で、遅い人は60〜70歳で更年期の症状を訴えることがあります。

また、女性のようにある程度決まった期間に起こるのではなく、短期間でおさまる場合もあれば、何年も続くこともあります。そのため、症状が起こる時期や期間を定めることは難しくなります」(辻村晃先生・以下同)

 

更年期症状に性別での違いはない

性別での違いはない

更年期に見られる症状は性別によって大きな違いはなく、身体やメンタルヘルスの不調などの症状が起こります。近年は更年期の専門機関や専門医が増えていることもあり、相談しやすくなっていますので、気になる症状が現れた時、すぐに行動に移せるように基本的な情報を知っておきましょう。

●女性の更年期の情報

代表的な症状:月経周期の異常、ホットフラッシュ(ほてり)、イライラ、肩こりや関節痛、倦怠感、動悸、不眠、骨密度の低下など

受診先:婦人科やレディースクリニック

治療法:状況に応じて、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬による治療、場合によっては抗うつ剤・抗不安薬などの対処療法が可能。更年期にさしかかったら、一度ホルモン値の確認しておくのもおすすめです。

●男性の更年期の情報

代表的な症状:勃起力の低下、性欲減退、ほてり、関節の痛み、筋肉の衰え、身体のだるさ、太りやすくなる(メタボ)、不眠、メンタルの不調、骨密度の低下など

受診先:泌尿器科

治療法:現在、国内で行われているのは男性ホルモン(テストステロン)を増加させる注射になります。

「男性更年期の場合、一般の泌尿器科で男性ホルモンの数値や、骨密度、動脈硬化の有無を調べることは稀なケースになります。きちんと調べたい時は、より専門的に調べられるクリニックや医師を紹介してくれますので、その意思を伝えましょう」

楽しい時間が症状緩和につながる

症状緩和

更年期を健やかに過ごすためには、睡眠時間をしっかりとることと適度な運動といった、規則正しい生活が大切になります。

そして、おいしい食事をいただく、気のおけない友人と会話する、没頭できる趣味を持つなど、自分が楽しいと思えることに熱中するのも有効です。「コメディー映画を観るだけでもテストステロン値が上がるというデータがあることを考えると、自分が楽しいと思える時間を作ることが症状緩和につながっていると言えます」と、辻村先生は話します。

更年期症状は性別に関係なく起こる

これまで更年期症状は女性だけに起こるという印象が強かったですが、男性にも更年期はあり、なにかしらの症状が現れてくることが認知されるようになりました。

女性の更年期は閉経前後の10年間と定義され、その期間に症状が現れやすいとされているのに対して、男性の更年期は期間が定められておらず、いつどのタイミングで症状が現れるのかが判断しにくいところがあります。

この部分での違いがあるものの、女性にも男性にも更年期はあり、症状が現れて、その程度には個人差があるのは共通すること。いずれにしても更年期症状は、自分では気がつきにくいところがありますので、性別に関わらず起こり得ることだと認識し、家族やパートナーで話しておくことも必要だと言えそうです。

 

執筆/今泉まいこ

No.00097

辻村晃先生

辻村晃先生泌尿器科医/順天堂大学医学部附属 浦安病院 泌尿器科 教授

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日本においての男性不妊、男性更年期症状の第一人者として知られ、数少ない男性医学と不妊治療両方のエキスパートであり、不妊に悩む多くの夫婦を助けている。生殖学、性機能障害の治療に注力する『日本生殖医学会』の認定専門医でもある。