生殖に必要な臓器の総称である性腺機能が低下する時期とされる、閉経前後5年間のトータル10年間を指す更年期。その更年期の代表的な症状のひとつに、急に顔が熱くなったり、汗が止まらなくなったりするホットフラッシュがあります。
今回はそのホットフラッシュについて、『クレアージュ エイジングケアクリニック』総院長・医学博士の浜中聡子先生に教えていただきました。
運動後の汗とは違う汗が出てくる
ホットフラッシュは、身体を動かしたから、気温が高いからなどに関係なく、顔が急に熱くなるというほてりや、汗が止まらなくなるという発汗症状を指します。女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌が加齢によって低下し、体温調整がスムーズに行えないことによって症状が現れると考えられています。
運動をすると汗をかきますが、その時の汗には肌にまとわりつくような、ベタベタとした感じがあるとしたら、ホットフラッシュによる汗はさらさらしています。そのため、「普段の汗と違う」と感じやすいこともあり、ホットフラッシュの症状は自覚しやすいと言われています。
ホットフラッシュは治療しやすい
更年期の症状の中でもホットフラッシュは、運動後とは違うさらさらとした汗が出てくるため、「いつもと違う」「なんかおかしい」と自覚しやすいです。その症状を不快に思うかどうかは人それぞれ異なりますが、少しでも不快だと思った場合は婦人科に相談してみてください。症状を自覚しやすい分、治療しやすいという側面があります。
例えば、分泌が減少しているエストロゲンを中心に補充するホルモン治療を取り入れると、わりとすぐに症状を抑えることにつながります。「更年期の症状だから仕方ない」「そのうち治まるだろう」と思って我慢をするのではなく、治療効果を得やすい症状であることを知っていてください。
40代になったら変化を観察する
ホットフラッシュも含めて更年期の症状は、閉経前に症状が出てくる人もいれば、閉経してから数年後に症状が現れる場合もあります。そして、その症状が長引く人もいれば、すぐに終わるというケースも。それくらい症状の有無や程度には個人差があります。
また、日本人の平均閉経年齢は約50歳とされていますが、閉経の時期も個人差が大きいです。早い人は40歳前半で、遅い人は50歳後半に迎えるという場合もあります。そのことを踏まえたうえで、40歳を迎えたら生理前や生理中の自分自身の状態に変化が起きていないか、経血の量や状態に変化が見えられないかなど、しっかり観察しましょう。
婦人科系疾患や骨密度を検査する
自分自身や生理の状態を観察することとあわせて、子宮や卵巣、乳がんなどの婦人科系疾患を定期的に検査しておくことは重要です。さらに、加齢とともに低下する、ホルモン数値や骨密度の検査もおすすめします。
例えば、骨密度は落ちてしまうと軽い衝撃で骨折してしまう可能性があります。一度落ちた骨密度は戻すことが難しいため、今ある骨密度を維持していくことが大切。そのためにも現状を知る必要があります。検査を通して自分の身体を把握しておくことは、変化を見つけやすくなり、いざという時はしかるべき対処のための行動にも移しやすくなります。
規則正しい生活が症状を軽くする
そして、日常生活も更年期の症状の出方に影響してきます。例えば、睡眠不足が続いている、栄養が偏った食事をしている場合、心身に負担がかかっていますので、更年期の症状が強く出てくる可能性があります。
適度に運動をする、栄養バランスを意識した食事をする、睡眠をしっかり取るという、いわゆる規則正しい生活は、心身の健康を維持するためにも、年齢を重ねても健やかに過ごすためにも大切なことです。
ただし、規則正しい生活を心掛けていても、自分自身の状態の変化を観察していても、ホットフラッシュの症状が現れる場合はあります。症状が現れた時は我慢をするのではなく、セルフケアでなんとかしようとするのではなく、婦人科を受診してください。
年齢を重ねても健やかに過ごすためには、医療機関と上手に付き合うことも必要です。今回お話を伺った浜中先生が総院長を務める『クレアージュ東京 エイジングケアクリニック』をはじめ、更年期外来を設けている専門機関もあります。通いやすい場所にある専門機関のリサーチをはじめ、相談しやすい医師=かかりつけ医を見つけておきましょう。
執筆/木川誠子
No.00041