思春期・青年期

揉めばいいわけではない!バストが感じる仕組み

感覚がある部分はすべて性感帯になりえると言われていますが、「性感帯」と聞くとバストを思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。

なぜ、バストが性感帯のひとつだと言われるのか。その理由を乳腺放射線科医・医学博士のフォックス岡本聡子先生に伺いました。

 

乳頭(乳首)は神経が集まる敏感な場所

神経が集まる敏感な場所

「一般的に乳首と言われる乳頭には、たくさんの神経が集まっているため敏感です。性行為による刺激でその神経が反応し、付け根部分にある平滑筋がぎゅっと収縮することで、いわゆる立つという状態になります。そういった意味では、バストの性感帯は乳頭部分と言えます。

実は、乳頭の刺激を調べた論文(※)があります。その研究は、『女性は乳頭の刺激で興奮すると思いすぎなのではないか』という視点で始まっているのですが、女性82%、男性52%は性的興奮を認めるという結果でした。

ただ、約20%の女性は刺激を受けても興奮しないということですし、乳頭が立っているからイコール感じているというわけではありません。寒い場合や、乳房の超音波検査でバストの上を滑らせるプローブが当たった場合でも、神経に刺激は伝わりますので平滑筋は収縮します。

それくらい敏感な部位ですので、乳頭が立っているからと過剰に反応することなく、性行為の際は自分自身の心地よさを追求してください」(岡本聡子先生・以下同)

乳輪からのニオイに引き寄せられる

「新生児は生後2~3ヶ月から視力が出てくるとされていますが、誕生直後から母乳を飲むことができるのは、乳輪から分泌されている皮脂のおかげです。乳輪にはモンゴメリー線があり、そこから常に皮脂が分泌されています。新生児はその皮脂のニオイをキャッチして乳頭の位置を探し当てているのです。

パートナー間でも、この皮脂によるニオイで好き嫌いを判断していると考えられています。ニオイは人それぞれ異なりますので、いいニオイと感じた場合はその人自身に惹かれていると言えるかもしれません」

“バスト・胸・おっぱい”のサイズや形は感度に影響しない

サイズや形は感度に影響しない

「バストの性感帯は乳頭なので、感じるという視点では乳房全体を過剰に揉んでもあまり意味がないように思えます。また、バストサイズや形は感度に影響しません。

また、生理前にはバストが張ってきますので、その時期に揉まれるとむしろ痛いと感じることがあります。もしかしたらパートナーの中には、生理前にバストが張ることを知らない、バストを揉めば気持ちよくなると思い込んでいる可能性もあります。日々のコミュニケーションの中で知識を共有することも大切にしてください」

“バスト・胸・おっぱい”の見た目にこだわりすぎないで

見た目にこだわりすぎない

「バストは性感帯のひとつであり、見た目の美しさも気になる部位だと思いますが、機能面では授乳の役割を担っています。授乳を経験する人もいれば、しない人もいますが、バストが授乳の役割を担っていることを知っておくことはとても重要です。そのことを念頭に置いて、自分自身のバストと向き合ってください。

例えば、見た目をもっと美しくしたい、サイズを大きくしたい、乳頭のサイズを小さくしないなど、美容整形の選択肢が身近になっています。ですが、ライフプランの中で妊娠や出産を計画している場合は、美容整形を実施する前にそのことについてもきちんと考えて、医師に相談しましょう。美容整形を受けたバストでの授乳にはリスクがある場合があります。

バストのサイズや形に正解はありませんし、性感帯としての感じ方も人それぞれです。世間一般に言われているような、“こうあるべき“という型にははめず、自分自身とパートナーの喜びを意識してください」

(※)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16681470/

 

執筆/木川誠子

No.00102

乳腺放射線科医・医学博士 フォックス岡本聡子先生

日本で臨床・研究を経験した後、スタンフォード大学での研究留学を経験。その経験を活かし、乳がんで亡くなる方をひとりでも減らしたいと思い、『Breast awareness』などのコミュニティーを主宰するなど、多角的に活動。さらには、自身の経験をもとに流産や妊よう性の領域でも発信を続けている。