女性の更年期に関して、ネガティブなイメージが払拭されつつある昨今。実は、男性にも更年期症状が現れることをご存知でしょうか?
今回は女性も知っておきたい男性の更年期とその症状について、その領域の第一人者であり、順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科 教授でもある辻村晃先生にお話を伺いました。
男性の更年期症状は時期が不明瞭
「男性の更年期症状という概念が日本に広がったのは、医学的に言うと今から20年以上前だと思います。基本的には女性の更年期と同じだと考えてください。
女性の場合は、女性ホルモン(エストロゲン)が閉経の時に極端に低下することから生じる症状とまとめられています。男性の場合も20歳をピークに男性ホルモン(テストステロン)が低下してくることが明らかになっています。それにより、男性ホルモンを必要としていた臓器の機能がうまく機能しなくなることで更年期の症状が現れてきます。
ただ、女性のように閉経という目安になるタイミングがないため、いつそのような症状が出てくるのかを言い切ることができないのが現状です。さらに、更年期症状がいつまで続くか、終わりはいつかということも判断が難しいところ。そのため、女性の場合は一般的に45~55歳の10年間を更年期と呼びますが、男性は早い人で30代、遅い人は60歳や70歳で更年期症状を訴えることもあります」(辻村晃先生・以下同)
男性の更年期における代表的な3つの症状
その1 身体の不調
「女性と同じく、ほてり、関節の痛み、筋肉の衰え、身体がだるい、太りやすくなる(メタボ)、などがあります。また、睡眠の状態に変化が現れ、寝付きが悪い、早く目が覚めてしまうなどの症状が起こる場合も。
自分自身では判断しにくい症状でいうと、骨密度の低下や動脈硬化が起こります」
その2 精神的の不安定
「不安感、パニック症状、うつ症状などが起こりやすくなるのも更年期に見られる症状です。
朝起きて会社に行くのが嫌など、精神的な落ち込みを感じる、今まではあまり怒りっぽくなかったのに攻撃性が出てきてしまうなど、精神的な部分に症状が現れる場合もあります」
その3 男性力の低下
「以前より勃起力や維持力が低下してしまったり、そもそも性欲が湧かなくなったり、そのような変化も起こります。
男性力は、まさに男性ホルモンが司っている部分。そのため、症状として現れやすくなります」
男性ホルモンを活発にさせる生活習慣
「健康習慣の基本になりますが、きちんと睡眠をとることと適度な運動といった規則正しい生活です。運動に関しては、月に300kmも、400kmも走るなど、ストイック行っているとかえってマイナスになってしまうので、週に2~3回のジム通いがちょうどいいです。
そして、自分にとって楽しいことをするという習慣はとても重要。ストレスが溜まると男性ホルモンが下がることが明らかになっています。コメディ映画を観る前と観た後で男性ホルモンの分泌量を比較してみると、観た後はその値が上がるという研究データもあるくらいです。楽しめる趣味を持つことは更年期の症状緩和に期待が持てます」
男性の更年期症状の診断と治療
「男性の更年期症状が出た時は、泌尿器科を受診してください。ただし、男性更年期や男性ホルモンについて専門的に話ができるか、知識があるかというと、決してそうではありません。一般の泌尿器科で男性ホルモンの数値や、骨密度、動脈硬化の有無を調べることは稀なケースになります。きちんと調べたいという場合はより専門的に調べられるクリニックや医師を紹介してくれますので、その意思を伝えてください。
また、日本メンズヘルス医学会という学会を参考にするのもおすすめです。男性の更年期を専門に扱っている病院やクリニックがリストアップされています。
そして、治療法に関しては、男性ホルモン(テストステロン)の補充がメインになります。一般的には、テストステロンを1ヶ月に1度のペースで注射し、数値を計りながら続けていく治療です。現状では、下がってしまったテストステロンの量を上げて、長時間維持し続けることは難しいですが、一定の割合で症状の緩和につながっているというデータがあります」
年齢を問わず症状が出てしまう男性の更年期症状は、もしかしたら一番気が付きにくいのが本人かもしれません。家族やパートナーなどにこれまでと違った変化が見られた場合は、男性の更年期症状の可能性があります。
男性の更年期症状についても専門医がいること、治療法があることを知って、家族、パートナーとのつながりに役立ててください。
【性別に関係なく訪れる更年期の知っておきたい基本知識 】
執筆/今泉まいこ
No.00099