子育てをしていく中で、「家庭内での性教育はどうすればいいのだろう」と考える時期が訪れると思います。タイミング、伝える内容、どのように伝えるのがいいのかも難しいところ。
そこで今回は、『淀川キリスト教病院』産婦人科医の柴田綾子先生に、親が子どもに伝えておきたい、初めての性行為の知識とそのタイミングについてお話をお伺いしました。
親が子どもに避妊を伝えるタイミング
自分の子どもがいつ性行為を経験するかは、親がコントロールできることではありません。そのため、あらかじめ基本的な知識や大切なことを伝えておく、“おうち性教育”が大切です。
「『ユネスコ 国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、5~8歳の早い段階で妊娠の仕組みについて知り、9~12歳でコンドームなどの具体的な避妊法について学習することを目標としています。ただ日本の場合は、文部科学省の学習指導要領で妊娠の過程について詳しく説明されません。中学校の時点で、避妊の具体的方法が伝えられていないのが現状です。
そのことをかんがみて、自分の子どもやそのパートナーをしっかり守るためにも、 “おうち性教育”として家庭内で親が伝えていくことがとても重要になります。タイミングとしては、初めての生理が来る10~14歳(平均12歳)の頃を目安にするのがいいと思います。男の子の場合もその年頃が目安になるでしょう。
そう考える理由は大きくふたつあります。①生理がきた=大人の身体になった=妊娠する可能性がある ②初めてつきあう場合、同級生同士が多いと考えられるからです」(柴田綾子先生・以下同)
身体を大事にすることから伝える
「いきなり性行為や避妊の話をすることはハードルが高いと思いますので、まずは自分の身体を大事にすること。そして、相手の身体も同じように大事にするということを、普段から話していきましょう。また、そのためには男女の違いを知ることが大切です。お風呂に入った時などに身体の違いについて話してみてください。
生理前の女の子であれば、宿泊学習や遠征などの前に、生理の仕組みやナプキンを準備するのはいいタイミングです。男の子の場合は、お母さんが生理になった時に「生理だから少し体調が悪いんだよ~」「女の子のお友達も生理だと体調が悪いかもしれないから手伝ってあげてね」「生理が始まるということは、妊娠できる身体なんだよ」と話してみて、反応を見てみるのもいいと思います。
そして、話をする時は、恥ずかしがらないよう気をつけましょう。親が恥ずかしそうに話をしていると、子どもも恥ずかしいものなんだと思ってしまいます。直接話すことが難しいと感じた時は、性教育に関する絵本やマンガを活用してみてください。子どもの目の付くところに置いておくと、その子の発達段階や関心を持ったタイミングに応じて、自分で手に取ることがあります。そのタイミングで話してみるのもおすすめです」
性的同意についても親子で確認
性行為のことを話す際、性的同意についても欠かせないことです。柴田先生は、「プライベートパーツ(身体の大事な部分)から話してみてください」と、教えてくれました。
「子どもの中には、仲がよければ相手の身体を触ってもいいと誤解していることがあります。たとえ家族や友達だとしても、プライベートパーツには勝手に触ったり、触らせたりしてはいけないこと。自分の身体が大切なように、相手の身体も大切に扱う必要があること。そして、その先にハグやキス、性行為があり、事前に相手の気持ちを確認してから行うことを、おうち性教育の中で伝えていきましょう」
【性的同意はより豊かな人生につながること。自分の境界線を知って、パートナーに伝えよう 】
避妊や性行為についても伝える
「性行為をしたら妊娠するという、基本的なことを実感していない子が多いように感じます。性行為には責任が伴うものです。若い時ほど妊娠しやすいので、たった一度の避妊なしの性行為で妊娠してしまう可能性があります。コンドームや緊急避妊薬など、避妊に関する知識を伝えると同時に、万が一妊娠した場合、自分とパートナーには親になる責任がでてくる。そういうところまで想像できるような、おうち性教育を考えていただきたいと思っています」
日本では、コンドームが避妊の主流になっています。コンドームは性感染症予防の側面が大きいです。女性が主体となる避妊方法を知っておくことも重要。
緊急避妊ピル
避妊に失敗した時などの緊急時に、性行為から72時間以内に服用するもの。処方が必要です。
低用量ピル
生理痛の改善や生理管理の目的でも使いますが、1日1錠服用することで9割以上の避妊効果があります。
「費用がかかることなので今すぐ実行できなくても、女の子であれば、自分でできる確実な避妊方法があることを知っておくことが大切です。おうち性教育の中で伝えていきましょう」
【性教育サイト『命育(R)』の代表に聞く。家族で向き合う性教育の大切さ 】
執筆/松岡真生
No.00098