近年は、医療技術の進歩や価値観の変化などから、35歳以上の女性の出産、いわゆる高齢出産は珍しくありません。また、2022年4月から保険適用が始まり、これまで金額面で選択肢に入れられなかった夫婦やカップルも不妊治療にアクセスしやすくなっています。その一方で、子どもを持ちたいと希望しても妊娠しない夫婦・カップルが5組に1組とも言われています。それは、妊娠には年齢因子が大きく関係しているからです。
今すぐの妊娠は希望していなくても、「この先いつかは……」と考えている場合は、妊娠に向けて今から始めておきたいことや不妊についてなど、知識を得ることが大切です。そこで、産婦人科医であり、『クレアージュ東京 レディースドッククリニック』婦人科顧問でもある大島乃里子先生に教えていただきました。
そもそも不妊とは?
不妊とは、生殖年齢の男女が妊娠を希望していて、1年間避妊をしないで性交渉をしていても妊娠をしない場合を指します。ただし、何かしらの事情で自然妊娠を望めないとわかっている場合は1年を待たずして不妊となります。
妊娠しないという事実自体が不妊とされ、医学的な治療が必要な場合は不妊症と言われています。
不妊の最大の要因は年齢
・子宮や卵巣の病気
・感染症
・持病を持っている
・痩せすぎている
・肥満である
・喫煙をしている
・年齢
このように不妊となる要因はいろいろあります。病気の有無や生活習慣なども要因にはなりますが、この中でもっとも大きなリスクとなるのが年齢です。35歳以上の妊娠率が下がるというデータもありますし、実は妊娠率で見てみると25歳を過ぎると徐々に下降していくと言われています。年齢が上がれば上がるほど自然妊娠、不妊治療での妊娠も難しくなります。
このことを知っていると知らないとではライフプランに影響が出てきますので、妊娠には年齢因子が大きくかかわっていることを知っておきましょう。
一般的な健康診断と婦人科検診を受ける
妊娠に向けての取り組みには健康状態が重要になるため、一般的な健康診断は受けておきましょう。身長や体重、血圧、血糖値、貧血の有無など、まずは基本的な検査を行い、そのうえで婦人科検診も受けましょう。
子宮頸がん検査の場合は、可能であればワクチンを打っておくとより安心できますし、C型、B型肝炎や梅毒などの感染症の検査も重要です。特に麻疹(はしか)・風疹は妊娠中にかかると妊娠の継続が難しく、胎児に影響が出てきますので、抗体が維持されているかを調べておきましょう。そして、妊娠中には麻疹・風疹のワクチン接種ができませんので、妊娠前にチェックしたうえで、もし抗体がない、少ない場合はきちんと対策を取っておくことをおすすめします。
加えて、オプション検査になる場合もありますが、子宮や卵巣などを観察するための経腟超音波検査や甲状腺機能を調べるための血液検査、卵巣の状態や卵子の数を推測できるホルモン検査をしておくとより安心できます。
歯科検診も妊娠に向けての準備のひとつ
意外と盲点なのは、歯科検診です。30代以降は歯周病になりやすいのですが、自覚症状がないこともあり、菌が溜まりやすくなります。その菌が身体に回ってしまうと切迫早産のリスクになることもありますので、歯科検診を定期的に受けることも妊娠に向けての準備になります。
将来の妊娠に向けて計画を立てる
冒頭にもあるように、現在、子どもを持ちたいと希望しても妊娠しない夫婦・カップルが5組に1組とも言われています。そして、妊娠には年齢が大きく影響してくることを考えると、今から準備をしていても早すぎるということはないと思います。
今、妊娠を考えている場合も、この先の将来で子どもを持つことを考えている場合も、ライフプランをしっかり考えたうえで計画性を持って行動することが重要です。健康診断や婦人科検診、ワクチン接種など、今からできることは行い、必要な知識も得ていきましょう。
執筆/木川誠子
No.00057