生理周期に合わせて変化している女性ホルモンは、女性の健康を考えるうえで切り離せない存在です。では、その女性ホルモンについてどのくらい知っていますか?
今回は、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)について、婦人科と美容を融合させた考え方でフェムキュア施術を提案している、産婦人科医の山村菜実先生に教えていただきます。
女性ホルモンは妊娠のためにある
「女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類があります。どちらも基本的には妊娠のための役割を担っています」(山村菜実先生・以下同)
●エストロゲン……妊娠の準備のためのホルモン
「卵胞から分泌されるホルモンなので、卵胞ホルモンとも呼ばれています。脳の下垂体から卵巣に指令が出ることで卵胞が徐々に育っていきエストロゲンが分泌されます。エストロゲンが増えてくると妊娠に向かって内膜が厚くなります」
●プロゲステロン……妊娠を維持するためのホルモン
「エストロゲンの分泌量が増えて内膜が厚くなり、排卵が起こるとプロゲステロンが分泌され、内膜を柔らかくするなど、受精卵が着床しやすい状態を作っていきます。黄体から分泌されるホルモンなので、黄体ホルモンとも呼ばれています」
生理周期によって分泌バランスが変化
「2種類の女性ホルモンは生理周期に合わせてバランスが変化しています。生理期間が終わるとエストロゲンの分泌量が増えて、心身ともに安定をしてきます。うるおいも与えてくれるため肌の状態も上向きに。新陳代謝が高まる時でもあるので、ボディコントロールをするのに適しています。
そして、排卵後から生理前はプロゲステロンの分泌量が増える時期です。身体に水分を溜めやすくなるためむくみやすくなる、食欲が旺盛になる、ニキビができやすくなるなど、気持ちの面でも不安定になりやすいです」
女性ホルモンは年齢でも変化する
「女性ホルモンのバランスは年齢によっても変化しています。初経を迎えて思春期の頃は生理周期が不安定です。思春期を過ぎると卵巣や子宮の機能が整ってきますので、その頃から自分のリズムができてくる成熟期になります。
肌や心身に嬉しい作用をもたらしてくれるエストロゲンは30歳頃がピークです。以降徐々に下降していき、閉経を迎える50歳前後になるとほとんど分泌されなくなります」
女性ホルモンは自律神経にも影響している
「生理前になると気持ちが落ち込みやすくなる、更年期になるとイライラしやすいなど、女性ホルモンのバランスの変化によって気持ちの浮き沈みを経験したことがある人は多いのではないでしょうか。実は、女性ホルモンは副交感神経、交感神経からなる自律神経とも関係しています」
女性ホルモンの分泌を司る器官
●視床下部……自立神経の中枢も担っている
「脳の中心部に位置する視床下部は脳の中の小さな組織なのですが、たくさんの神経核から構成されています。そのため、体温調整やストレスの応答、摂食行動、睡眠などの生理機能を管理」
●脳下垂体……ホルモンの分泌を行う
「鼻の奥にある小指ほどの小さな器官ながら、ホルモンの司令塔と呼ばれることもあるくらい、さまざまなホルモンの分泌を行う役割があります」
「このふたつの働きによって女性ホルモンは分泌されています。具体的には、視床下部からエストロゲンの分泌命令が出されると、脳下垂体に指令を出すためのホルモンが分泌。そのホルモンが卵巣に伝わることでエストロゲンが分泌されます。さらには、エストロゲンが指令通りに分泌されたかどうか、フィードバックされる循環型の指令系統になっています。
この一連の流れが正常に行われることが重要です。ただ、分泌命令をしている視床下部はストレスの影響を受けやすい特性があります。過度なダイエットによって生理が止まってしまうのは、視床下部が担っている生理機能の調子の乱れからくる、身体を守るための反応。また、加齢によって卵巣機能が衰えてしまうと、エストロゲンの分泌量を増やそうとして指令が出ていても卵巣は応えることができない状態。更年期に見られる自律神経の乱れは、この影響を受けています」
女性ホルモンのバランスが変化することを知っておく
エストロゲンとプロゲステロンの特性、生理周期や加齢によって分泌バランスが変化することを知っていることで、対処しやすくなると思います。そして、ストレスケアをすることは、女性ホルモンのバランスを整えることにつながります。
正しい知識を得て、日々の生活の中で行えるセルフケアを実践してみてくださいね。
執筆/木川誠子
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