本当にいいアイテムは常にアップデートしている!株式会社たかくら新産業 代表取締役社長 高倉健さん~前編~【FJCトークルーム vol.5】

『フェムテックジャパンカレッジ』が聞き手となり、フェムテック領域で活躍する方々との対話をお届けする、対談企画『トークルーム』。

第5回目は、日本初のフェムケアブランドと言われている『ピュビケアオーガニック』を展開する、たかくら新産業 代表取締役社長であり、全製品の開発を担当する高倉健さんです。

 

経皮吸収の違いがブランド誕生のきっかけ

フェムテックジャパンカレッジ(以下、FJC):『ピュビケア(現:ピュビケアオーガニック)』が誕生したことは、日本におけるフェムケアの歩みが始まったと言えると思います。

高倉健さん(以下、高倉さん):ありがとうございます。私たちは、日本におけるフェムケアの第一人者だという思いを持って取り組んでいます。

弊社がフェムテック事業の構想を始めたのは2006年頃です。私は全製品の開発を行っているのですが、なぜ男性である私がデリケートゾーンケア商品を作ったのかと言いますと、部位によって経皮吸収が違うということを知ったことが大きかったです。

ピュビケアオーガニック

『ピュビケアオーガニック』が誕生する前に、初めてのオリジナルブランドである『メイド オブ オーガニクス』を作りました。その際にオーストラリアの工場に行き、その時に「奥さんが乳がんになって、本当に身体にいいオーガニック商品を作ろうとしている」という話をしたのですが、「乳がんだったら、デオドラントは気を付けてる?」という返しがありました。

「ワキは経皮吸収が高いから、アルミニウムなどを使っているデオドラントアイテムは乳がんのリスクがすごく高くなるんだよ」という話を聞き、経皮吸収というキーワードはまったく知らないことだったので、日本に帰ってきてから調べました。

FJC:今でこそ経皮吸収という言葉を目にする機会は増えましたが、当時はあまり知られていなかったように思います。

高倉さん:はい、当時は経皮毒という言葉が使われていました。私はその言葉があまり好きではありません。なぜならば、オーガニックは善、ケミカルは悪、という考え方のようなに感じるからです。だから、経皮吸収についてのエビデンスがないのか調べてみたところ、イギリスの医師がさまざまなデータを取っていることがわかり、経皮吸収という言葉を用いるようになりました。

デリケートゾーン専門美容サロンとの出会いが後押しに

FJC:腕の内側を1とした場合、デリケートゾーンは42倍という、その違いの大きさに驚いた人は多いと思います。

高倉さん:そのデータは男性の睾丸ベースで研究されたものではありますが、経皮吸収が高い部位に使うアイテムこそ、オーガニックに変えるべきだと思って開発を始めました。

ピュビケアオーガニック

ただ、デリケートゾーンに使うアイテムに関しては何を作ったらいいのか分からなかったです。そんな中で、デリケートゾーン専門の美容サロン『ピュビケアサロン白金台』を展開している得田さん姉妹に出会い、話を聞く中で「オーガニックでデリケートゾーンケア製品が作れたらいいね」という想いがマッチして、2012年に『ピュビケア(現:ピュビケアオーガニック)』が誕生しました。

FJC:2012年はオーガニック製品もまだまだ浸透していなかったと思うのですが、その中でデリケートゾーンをケアするという概念から伝えていくのは大変だったと想像します。どのように伝えていきましたか?

高倉さん:当初はまったく売れず、本当に大変でした!使う概念がない方々に商品の宣伝をしても、どんなにいい商品だと伝えても、「それはなんですか?」となってしまう。だから、商品を伝えるのではなく、デリケートゾーンをケアすることでどんなメリットがあるかということをお伝えしていこうと、産婦人科の先生や助産師さんに監修していただいて冊子を作り、デリケートゾーンアンバサダーという勉強会を始めました。

FJC:もう何年も前にはなりますが、その勉強会に参加したことがあります。

高倉さん:ありがとうございます。セミナーや勉強会を開催してもなかなか興味を持っていただけなかったのですが、徐々に他のデリケートゾーンのケアブランドが出てくるようになったことで、少しずつイメージが変わっていきました。

実は、『ピュビケアオーガニック』は、すでに3回もリニューアルしています。その理由は、「本当にいいものは常にアップデートしている」と考えているからです。消費者はどんどん変わっていくので、そのニーズに応えるためにも新しい成分が出てきたらきちんと研究をしたうえでアップデートしていくことは重要だと思います。

売れるからではなく、意味・意義があるアイテムを作りたい

FJC:その他に大切にしている考え方はありますか?

高倉さん:ミーニング(意味と意義)を大事にしています。

私は商品開発をしていますが、経営者でもあるので、なんでもいいというわけにはいきません。「この商品を作って誰が喜ぶのだろう」「誰のためになるのだろう」「どんな意味があるのだろう」「どんな意義があるのだろう」ということはすごく大事。だから、売れるからという理由で商品を開発することはないです。

デリケートゾーンのケアアイテムも誕生した当初は売れませんでしたが、意味があると思いました。

FJC:後編ではデリケートゾーンのケアアイテムが持つ、意味や意義について掘り下げていきます。

執筆/木川誠子

No.00103

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