“ケアからキュアへ”の考えで、フェムケアを発展させていく。株式会社たかくら新産業 代表取締役社長 高倉健さん~後編~【FJCトークルーム vol.5】

『フェムテックジャパンカレッジ』が聞き手となり、フェムテック領域で活躍する方々との対話をお届けする、対談企画『トークルーム』。

今回は第5回のゲストである、たかくら新産業 代表取締役社長であり、全製品の開発を担当する高倉健さんの後編をお届けします。

 

歯ブラシよりデリケートゾーンソープが当たり前

FJC:デリケートゾーンのケアアイテムは、売れるからという理由ではなく、意味があると思ったから作ったということでしたが、経皮吸収の違い以外にはどんな意味や意義があると感じましたか?

高倉さん:私たちが展開する製品は、オーストラリアをメインに製造しています。ただ、当時はオーストラリアにもデリケートゾーンをケアするという習慣がほとんどなく、製造工場にもノウハウがなかったため、すでに習慣化していたイタリアのオーガニック工場を数件訪ねました。

その時に宿泊したホテルのバスルームにサシェみたいなアイテムがあって、「これは何?」と聞いてみたら、「デリケートゾーン用のソープだよ」と。アメニティの中に歯ブラシはないのに、宿泊したすべてのホテルにデリケートゾーン用のソープが置いてありました。

デリケートゾーン用のソープ

イタリアでは、歯ブラシよりもデリケートゾーン用ソープのほうがアメニティとしての優先順位が高いということです。そのことをイタリアの工場で話したら、「それは当たり前だよ」と。逆に「日本の女性は何で洗っているの?」と聞かれて、「普通のソープで……」と返したら、「普通の石鹸で洗っているの?信じられない」と言われて、それくらい常識が違っていました。

FJC:イタリアでは一般家庭でも専用のソープを使うのが当たり前だったのですか?

高倉さん:はい。娘が生まれたらお母さんが洗い方などのケア方法を教えているそうです。まったく違うこの文化を日本で伝えることはすごく意味があると思いました

FJC:日本では湯船につかる文化があることで、「専用のソープで洗わなくても大丈夫」という声を聞くことがあります。

高倉さん:イタリアと日本では文化の違いはあるものの、やっぱり洗うことは大事です。デリケートゾーンのトラブルは、そのほとんどが雑菌によるものです。アンダーヘアがある場合は、毛に尿や経血などがついてそこから雑菌が繁殖し、痒みやかぶれが起こることがあります。こういう雑菌はお湯で流すだけでは難しいので、専用のソープで洗ってくださいと伝えています。

ただ、日本人はニオイなど、デリケートゾーンの状態を気にして洗いすぎる傾向がありますし、ライナーを常時つけている方も多いです。また、ビデは適度に使えばとてもいいのですが、「外では使わない」という女性が多いです。

雑菌が繁殖しやすい状況を作りやすいライナーをつけたまま、ビデも使わず過ごし、お風呂に入る時にしっかりと洗いすぎてしまうという習慣が、デリケートゾーンのトラブルにつながっている可能性はあると考えています。

FJC:私はライナーも、ピデも使わないですが、外出時はデリケートゾーン用のふき取りシートで対応しています。

高倉さん:その方法もいいと思います。普段からデリケートゾーンの経皮吸収を考えたうえで作られたアイテムを使っていただけたら、悩みの半分くらいは解消されると考えているのですが、まだまだ伝えていかないといけないと思っているところです。

ケアの領域だけではなく、キュアの視点で取り組む

FJC:『ピュビケアオーガニック』は、医療視点と言いますか、ケアの一歩先のアイテムがある印象です。

高倉さん:ここ数年でデリケートゾーンケアのブランドが多く誕生し、差別化を考えた時に、私たちは“ケアからキュアへ”と考えるようになりました。ただケアをする、きれいにするだけではなくて、しっかり効果がある、お薬に近いアイテムを作りたいと思って開発を進めています。

そんな中で誕生したのが、カンジダを予防するソープ『フェミニンメディソープ レモンマート&ティーツリー(220mL/¥2,750)』です。

フェミニンメディソープ

カンジダは性交渉でうつると思っている方が多いのですが、実は常在菌です。常在菌には、乳酸菌などの細菌(善玉菌)とカビの菌である真菌(悪玉菌)などがあります。そもそもカンジダは細菌の役割が強いのですが、体調が悪い、疲れる、抗生物質を摂る、添加物を食べる、このようなことをするとカンジダが一気に増えてしまいます。増えてしまうと、「1週間腟内に入れてください」と、抗生物質が処方されることもあり、そうなるとより腟内環境が悪くなってしまいます。

FJC:予防することはできないということですか?

高倉さん:はい、予防する手段はありませんでした。産婦人科の先生も「カンジダになったらとにかく治さないといけない」とおっしゃるのですが、カンジダになるリスクを事前に伝えることはないそうです。それは、「予防する手段がなくて、ただ怖がらせるだけになるから」と。そんな話を伺ったことも、“ケアからキュアへ”という考えの後押しになっています。

経皮吸収が高い部位にこそ、安心安全なアイテムを

FJC:ということは『フェミニンメディソープ』は画期的なアイテムですね。これからもキュア視点のアイテムが増えていきますか?

高倉さん:はい。すでにいくつかのアイテムは進んでいます。少しだけお話ししますと、今ある『ピュビケアオーガニック』は外側からのケアになりますので、内側からのケアにつながるアイテムを考えています。2024年中にお届けできると思いますので、ぜひ期待していただきたいです。

FJC:はい、とても楽しみです!最後に、オーガニックのアイテムを手頃に購入できるという点も御社の強みだと感じています。

高倉さん:価格設定にはこだわっています。いいアイテムでも、価格が高いと使い続けられないと思います。ましてや、デリケートゾーンは経皮吸収率が高い部位なので、だからこそオーガニック、ナチュラルなアイテムを使ってほしいという想いも込めています。

少しずつ「たかくらさんの製品は大丈夫だ」と言ってもらえるように、正直者のビジネスが続いていくように、やり続けないといけないとも思っています。特にデリケートゾーンのケアアイテムは、顔のスキンケアみたいに目に見てわかりやすいものではないので。でも、長いめで見ると、今の若い世代が30代になる頃には今とは違う状況になっているかもしれないですよね。先の想像は誰もできないので、だからこそやり続けていきたいと思います。

執筆/木川誠子

No.00104

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