生徒たちが生理ついて考えるきっかけになり、この経験は将来に活きてくる!【『誰もが快適な生理を』リアルヴォイスvol.2 活水中学校・高等学校】

『誰もが快適な生理を』プロジェクトは、『フェムテックジャパン』の取り組みのひとつ。学校や企業、公共施設などのトイレにノンポリマータイプの生理用ナプキンを設置し、ひとりでも多くの方がより快適な生理期間を過ごせるよう支援しています。

この企画では、プロジェクトの想いに賛同し、導入を開始した学校や企業などに訪問し、リアルな声をお届け。第2回目は『活水中学校・高等学校』です。このプロジェクトを見守ってきた野田定延副校長。そして、実行者である養護教諭の濱口未希先生、高等学校2年生であり、今回のプロジェクトにおける生徒代表の役割を担った「キラキラガールズライフ」のメンバー仲野帆南さん、森田紗弥花さんにプロジェクト導入から今にいたるまでのリアルな声を聞いてきました。

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『誰もが快適な生理を』とは

 

生理の貧困の話題がきっかけに

生理の貧困の話題がきっかけに

トイレにナプキンを設置しようと考えたきっかけを教えてください。

濱口先生:『生理の貧困対策プロジェクトながさき』という取り組みが長崎県で立ち上がり、そのモデル校にならないかというお話をいただいたことで、ナプキン設置を考え始めました。

これまでは、「エチケットとしてナプキンは各自で用意しておきましょう」と教育していたこともあり、ナプキンをトイレに置くことは今までの考えとかけ離れていましたし、当初は戸惑いの声もありました。でも、『誰もが快適な生理を』の活動趣旨を伺った時に、生理の貧困という経済的な側面や、生理は身体的にも精神的にも支障をもたらしていることがわかり、そのことを生徒たちにも知ってほしいという想いが大きなきっかけになりました。

―『誰もが快適な生理を』プロジェクトを取り入れる前は、学校としての生理に関することのフォローアップは行っていましたか?

濱口先生:保健室に生理痛で相談に来た生徒には湯たんぽを渡すことや、生理用ナプキンを準備してなかった子には保健室から貸し出すということはしていました。ただ、「保健室のものを使ったら自分のでいいから返してね」「購買部でも売っているから自分で買ってね」とも伝えていました。

―生徒の視点から、『誰もが快適な生理を』プロジェクトの導入前に感じていた不便さや困ったことはありましたか?

仲野さん:私は急に始まったり、生理周期が不定期だったりするので、生理用品を持っていないと不安に感じることはありました。そういう時は友達に借りていたのですが、プロジェクトの導入後は、その不安がなくなりましたし、友達に迷惑をかけなくていいという安心があります。

森田さん:私も同じ感じです。学校にナプキンがあると安心するし、念のためにカバンに入れておかなくてもよくなって荷物も減るからすごくいいなと思っています。

―導入にあたってどんな壁がありましたか?

濱口先生:これまでの考えを変えることになるので、どう伝えるかということはすごく考えたのですが、教員からの反対はまったくなく、「生徒のためにできることなら」とすぐに賛成してもらえました。

ただ、トイレにどのように設置するかという点は難しかったです。「いたずらをされるのではないか」「トイレに置いて衛生面は問題ないのか」「大量に持って行く人がいるのではないか」など、いろんな懸念点が上がりました。また、『生理の貧困対策プロジェクトながさき』のモデル校として、きちんと実施できるかどうかも考えました。

―『誰もが快適な生理を』プロジェクトはトライアル期間があるので、そういった懸念点の検証期間として活用できるかと思いますが、実際にはどうでしたか?

濱口先生:いたずらや大量の持ち出しということは起こりませんでした。その理由は、導入前に産婦人科の先生に講演していただき、生理の貧困や女性が生理に関してどのように困っているかなどの啓発講義もしていただいたことで、「なんでナプキンが置いてあるのか」ということも含めて生徒たちが理解をしたうえで実施ができたからだと思います。

衛生面に関しては、フタなしで置いてしまうとひっくり返ってしまい、何個かトイレの中に落ちてしまったり、埃をかぶってしまったりすることがありました。トライアル期間後に導入する際には、生徒とも話し合ったうえで「フタ付きのものにしよう」と箱を買い直しました。

プロジェクトがきっかけになって生理のことを真剣に考えた

「キラキラガールズライフ」のメンバー

―置き場所についてはどのようなことを検討しましたか?

濱口先生:最終的には8~10ある個室のうち、3個室に置いています。

手洗い場に置くことも考えたのですが、もし本当に困っている生徒がいた場合、他の生徒の目を気にするのではないかと思い、誰でも手に取りやすいように個室にしました。

―仲野さんと森田さんは、導入までの過程で印象に残っていることはありますか?

森田さん:生理はみんながなることだからあまり深く考えていなかったのですが、学校のためや生理の貧困のためにみんなで話し合うこと自体、いい経験になりました。

仲野さん:中学生の時は学校にナプキンが置いてあることはなかったので、今回の取り組みでみんなの意見が聞けたことで、「みんなもこう考えているんだ」と、同じことを考えていることがよくわかりました。

―『誰もが快適な生理を』プロジェクトはノンポリマーナプキンであることもポイントのひとつかなと思うのですが、これまでは自分の意思で生理用品を選んでいましたか?

仲野さん:はじめは親がいいと言ったものを使っていたのですが、卓球をしているのでずれにくいという部分を意識して、途中から自分で選ぶようになりました。

森田さん:私は母と姉が使っているものを使っています。ノンポリマーナプキンはこのプロジェクトを通して知ったのですが、普段薄いタイプを使っているので厚みがあるところが他とは違うなと感じました。

仲野さん:私もノンポリマーナプキンははじめて知りました。キラキラガールズライフのメンバー間では、「生理時によくある蒸れやかゆみが減ったよね」「肌触りがよく、温かく感じたよね」と話していました!

濱口先生:私もこの機会にはじめて取り入れてみたのですが、肌触りがすごく優しくて、今まで使っていたナプキンはかぶれることがあったのですが、ノンポリマーナプキンはまったくなかったのがよかったです。

―プロジェクトの導入は、生活の質ならぬ学校生活の質の向上につながっているのかなと思ったのですが、どのように感じていますか?

濱口先生:学院としては、“快適に過ごす”ことを目指しているので、そこは『誰もが快適な生理を』と共通するところだと思いました。また、導入してから生徒にアンケートを取ってみたところ、とてもいい結果が得られたのもよかったです。

長崎県の他の学校でもナプキン設置を検討しているところもあったようなので、モデル校として実施したことで他の学校の検証にも役立ったみたいです。

生徒の声を聞くことが大事!

アンケート結果

―アンケート結果を見ても、「継続してほしい」が多いですが、もしこのプロジェクトが終わったらどう思いますか?

仲野さん&森田さん:めっちゃ困ります(笑)。

森田さん:トイレにナプキンを置くことは簡単と言えば簡単な取り組みかもしれませんが、この取り組みを通して助かる子たちが多いと思うので、他の学校もぜひやってみてほしいです!

仲野さん:活水学院の生徒とほかの学校の生徒の考えは、一緒の部分もあれば、違う部分もあると思います。私たちは女子高だけど、共学ではまた違う部分もあると思うので、生徒たちにアンケートを取ることで自分たちにあった方法で取り入れられると思います。

濱口先生:導入を検討されている学校は多いと思います。私たちは生理の貧困という部分で導入を考え始めましたが、導入してみたら多くの生徒たちが安心して快適に学校生活を送るためにもナプキン設置の必要性を感じています。

私自身、養護教諭として取り組む中で、生徒自身が主体的に今後の社会のあり方を考えていくということをとても大事にしていました。今までは生理用品は自分で準備するのが当たり前とされていたことを、トイレットペーパーと同じようにいつでも使える環境を作ることは、安心して学校生活を送ることにつながります。生徒たちもそのことを経験できていることが大きな学びになっていると思うので、自分たちの未来や今後の社会生活にも活かしてほしいです。そして、これから導入を始める学校は生徒たちの声を聞きながら、できることから実践してほしいと思います。

生徒たちの声を聞きながら

野田副校長:このプロジェクトを見守ってきましたが、我が校で実施できたことはとても嬉しいですし、目指していたことでもあります。この経験は大学に進学しても、社会に出た時も活きてくると感じています。

また、違った試みにもチャレンジしてほしいので、今後も生徒たちから「こういったことがしたい!」と、新たなアイデアが出てくることを楽しみにしています。

 

執筆/木川誠子

No.00090

活水中学校・ 高等学校

長崎県長崎市宝栄町に所在。中高一貫教育を提供する私立の女子中学校・高等学校。明治初期に開校都市で設立されたミッションスクールのひとつで、創立144年(2023年現在)を迎えた西日本では最古の学校となる。

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